第15回 トヨタプリウス対ホンダインサイト
第15回 トヨタプリウス対ホンダインサイト
・試乗グレード(プリウス)  L (FF・CVT)
・全長  4,460mm
・全幅  1,745mm
・全高  1,490mm
・エンジン型式  2ZR-FXE
・種類  水冷直列4気筒DOHC
・排気量  1,797cc
・最高出力  99ps(73kW)/5,200rpm
・最大トルク  14.5kg・m(142N・m)/4,000rpm
・電動機型式  3JM(交流同期電動機)
・最高出力  60kW(82PS)
・最大トルク  207N・m(21.1kgf・m)
・車両本体(税込)   2,050,000 円
※インサイトのスペックは、第11回のインサイト試乗記をご覧ください。


衝撃的な新型プリウスの価格

シビックハイブリッドの後をついだ2代目ホンダインサイトは既に第11回の車評オンラインで論評したが、今回のプリウスとの同時比較が待ち遠しかった。インサイトの開発にあたって、ホンダはハイブリッド車の普及に際し価格が最大のネックになると判断、エンジンが主役のハイブリッドシステムにより目標価格を大幅に抑えるとともに、専用ボディを開発した。「189万円からという価格により、"グリーンカーは高い"は過去のものになり、プリウスとの住み分けも明確になるだろう」というのが導入当初の予測だったが、それを大きく揺さぶったのが、新型プリウスだった。新車価格は発売時に公表されるのが常だが、トヨタは発売に先立つ2ヵ月近く前から新型プリウスの205万円という価格をリーク(?)、インサイトに待ったをかけた。世界最大の自動車会社がとるべき手法か否かの議論は残るにしても、衝撃的な価格とデビューだった。

優遇税制の恩恵も大きい

新型プリウスの販売は優遇税制にも支えられ、5月半ばの正式デビュー後一気に加速、5月には登録車中の、6月、7月には軽も含めてのベストセラーとなり、導入約2ヵ月で25万台近い受注を獲得した。一方のインサイトも7月には3ヵ月ぶりに1万台を超えた。取得税、重量税の優遇税制はしばらく続くが、それに加えての最高25万円の環境対応車普及促進対策補助金(補助金)や、自動車税の減額の恩恵を受けられる来年3月までのプリウスの登録は、トヨタにおける増産にも関わらず、すでに不可能というところにまできているようで、インサイトには追い風となろう。トヨタが優遇税制の延長にむけて動いているという話もあるが、優遇税制の財源には限界があるはずで、補助金終了後の反動、来年3月までのインサイトとの販売合戦、他社との競合、陣営内での食い合いなどが今後どのように推移してゆくかは予断を許さない。

簡単な両車の寸法比較

両車をまずサイズから比べてみよう。プリウスの全長は4,460mmでインサイトより70mm長く、全幅は1,745mmで50mm広く、全高は1,490mmで65mm高い。プリウスの室内長はインサイトより30mm短いが、室内幅は40mm広く、室内高は75mm高い。一言で言えば、プリウスの方が一回り大きく、最も差を感じるのは室内空間、特に後席の居住性だ。なお車両重量はグレードによるが、110kgから160kgプリウスの方が重い。

インサイトが5ナンバーにこだわったのは理解できなくもないが、ミラーtoミラー(ミラーの先端から先端までの寸法)は、我々の実測で、プリウスの2,030mmに対してインサイトは2,020mmと片側わずか5mmしか差がなく、使い勝っての優位差はほとんどなさそうだ。また空力の為だというが、インサイトがここまで後席を犠牲にする必要があったのかは疑問である。

両車のハイブリッドシステムの簡単な比較

次に両車のハイブリッドシステムを簡単に比べてみよう。プリウスに搭載されているハイブリッドシステムは「THSU」とよばれるもので、1.8L(99ps)のエンジン、82psのモーター(システム全体では136psの最高出力)、交流発電機をプラネタリーギヤで連結し、走行状態に応じてモーターとエンジンを最適な効率で組み合わせて走るものだ。発進、低速走行はモーターのみ、それ以外の通常走時はモーターとエンジン、高速走行時も必要によりモーターがアシスト、更にはモーターのみでも最高2km程度の走行は可能と、モーターの守備範囲がインサイトよりはるかに広い。新型からは高回転化、高出力化されたモーターに対応、新しくリダクションギヤ機構が加えられた。

一方のインサイトに搭載されているシステムはIMA(インテグレイテッドモーターアシスト)と呼ばれるもので、1.3L(88ps)エンジンのフライホイール部分に薄型モーター(14ps)兼発電機、その後ろにCVTを装着したものだ。発進と通常走行はエンジンが主体でモーターが補助、高速クルーズはエンジンという、あくまでエンジンが主動力、モーターが補助動力となるシステムで、そのかわりシンプルさ、コストメリットの点では本来プリウスにかなり水をあけているはずだ。

評価車両の価格、装備レベル

今回の試乗車の価格は、トヨタプリウスはグレードLでオプションを含み、\2,281,000 (車両本体価格: \2,050,000、販売店オプションHDDナビと販売店オプションETCを装着)、対するホンダインサイトはグレードLで同じくオプションを含み、¥2,593,000だった。(車両本体価格は¥2,050,000で、それにHDDナビ、スマートキー、15インチアルミホイール、コンフォートパッケージ、VSA、前席用サイドエアーバッグ&サイドカーテンバッグがオプションで装着)

ここで留意が必要なのは、インサイトではオプションになっているアイテム何点かは(スマートキー、15インチアルミホイール、VSA、サイドカーテンエアバッグなど)プリウスではベースモデルにも標準装備されていることだ。同一装備レベルで比べると、両車の価格差はほとんどないといえそうだ。ただしプリウスはベースのLグレードで装備出来るオプションに制約があるために(例えば運転席のシートリフターがない、ディーラーオプションのNAVI、ETCしか付かないなど)、結果としてSグレード、Gグレードを選択している人が多いようだ。

いつから発売?

ホンダインサイト;2009年2月から、トヨタプリウス;2009年5月から。

お値段(車両本体価格)は?

ホンダインサイト;\1,890,000円から、トヨタプリウス;\2,050,000円から。



車評コースでの実測燃費測定の意義

カタログ燃費はプリウスが38km/L(GとSグレードは35.5)、インサイトが30km/L(LSグレードは28)だが、我々の最大の関心は車評コースにおける実測燃費だった。車評コースは三樹書房で刊行した「車評」シリーズの出版にあたり設定した商品性、並びに燃費を評価するコースで、高速セクションと市街地セクションから成り立っている。まず都心で燃料を完全満タンにした後首都高速を使って高速セクションに移動、そこで高速セクションを6ラップ、100km強走行し、その後再び首都高を使って市街地に移動、市街地セクションを同じく6ラップ、約40km走行して、最後に完全満タン法で給油料を計測するというものだ。これまで約100台近い商品性評価並びに実測燃費計測を行なったが、結果は「e-燃費」に驚くほど近似していることが分かった。「e-燃費」は携帯電話で各人、各車の走行距離と給油量を報告することにより車種ごとの燃費を公表しているもので、データーベースは40万人を超えると聞いており、車種ごとの実用燃費としては最も信頼できる、日本独自のシステムである。


プリウスとインサイトの実測燃費

実測燃費計測にあたっては、エアコンは25度にセット、車両の乗り換え時や試乗の印象を記録する時間などはあえてエアコンカットはせず、また高速、市街地のいずれの走行シーンでも専門誌などがよくやる、燃費を稼ぐための特殊な走行は一切排除した。ただしプリウスはECOモード、インサイトはECONモードONでの評価とした。このような評価条件で計測した実測燃費はプリウスが25.2km/L、インサイトが20.1km/Lとなったが、この数値は日本のユーザー平均燃費と余り違わないはずだ。

両車ともカタログ(10・15モード)との乖離(かいり)は大きいが、(プリウスは66%、インサイトは67%)、絶対値としては、これまで車評コースで評価したベーシック並びにコンパクトクラスの消費燃料のほぼ半分であり、改めてハイブリッド車の実用燃費の良さを証明する結果となった。ちなみに「車評50」で評価した2代目プリウスは21.2km/L、シビックハイブリッドは15.3km/Lだったので、トヨタ、ホンダともに、新型車の開発にあたり、実用燃費の向上に注力したという説明は納得できる。


高速、市街ともに燃費が優れるプリウス

今回はこれに加えて、高速、市街地の区間平均燃費をオンボードコンピューターで行なった。それによると高速セクションはプリウスが25.7km/L、インサイトは22.2 km/Lだったが、市街地セクションはプリウスの19.1km/Lに対してインサイトは12.5 km/Lとかなりな差がついた。プリウスとインサイトの比較後、アウディA3スポーツバック(1.4LのTFSIエンジン装着車)の車評コースでの実測燃費も計測してみたところ、総合で13.2km/L、高速14.4 km/L、市街地は7.1 km/Lとなった。「車評50」、「車評軽自動車」をご覧いただければ、このアウディの燃費は従来のベーシック、コンパクトクラスの中ではベストな数値であることがお分かりいただけると思うが、ハイブリッドとの差は歴然だ。


動力性能もプリウスの圧勝

第11回の車評オンラインでは、インサイトの市街地における走りに関して1.8リッター級の走りを楽しむことが出来たと述べたが、今回、高速を含めてとりたてて大きな不満を感じるシーンはなかった。しかし一段とエンジン出力、モーター出力が向上した新型プリウスと比べると、その劣勢は明らかだ。箱根などの山坂道での優位差は更に大きいだろう。またプリウスでPWRモードにした際の加速感は2.4L級といっても良く、動力性能面でも明らかにプリウスに軍配上がる。


曲がる、止まる、の領域は?

曲がる、止まる、の領域はどうだろう。インサイトは、導入直後の市街地のみの試乗では、かなり好ましい印象を持ったが、今回は個体差もあるのか、舵角を与えた場合のロールの出方を含めてリニアリティさが欠け、前回の印象を下回った。対するプリウスは15インチタイヤ装着のベースモデルだが、(17インチタイヤ装着車の評価が行なえていない)、旧型プリウスが、高速時にステアリングセンターが甘く、操舵力がリニアでないなど、決して高い評価とはいえなかったのに対し、プラットフォームがオーリスベースとなったことにも起因してか、直進時のステアリング、操舵力とクルマの挙動のリニアリティなどがかなり向上していると感じた。ただし決してスポーティとはいえない。

曲がる領域以上に差を感じたのは止まる領域だ。プリウスは初代から2代目に向けてかなりな改善が行なわれと聞くし、今回の3代目でも一段と改善されたのか、回生ブレーキと電動油圧ブレーキの連携に違和感がなく、それに比べてインサイトはブレーキの踏みはじめの違和感はぬぐえなかった。


ハンドルを握る楽しさが別格のA3

ここで一言付け加えておきたいのがアウディA3だ。第13回の車評オンラインで私は、「人々がクルマに求めるものは千差万別だが、ハンドルをにぎることの楽しさは不要だという人はまずいないだろう。新型A3スポーツバックは、最近試乗したあらゆるクルマのなかで、その点で最も高い評価が出来る一台だ」とのべたが、車評コースにおけるアウディA3のハンドルを握ることの楽しさ、気持ちよさはプリウス、インサイトとは比較にならず、A3は全ての日本メーカーに是非注目して欲しい一台だ。


乗り心地

今回プリウスで気になったのは、乗り心地、なかでも後席の乗り心地だ。高速道路の継ぎ目、首都高速の荒れた路面、市街地の凹凸などでは、運転席も気になったが、後席にはそれ以上に気になった。後席の乗り心地に関しては明らかにインサイトの方が上だ。今回評価したLグレードに装着されているタイヤは185/65R15だが、215/45R17をはいたツーリングセレクションというグレードがどのような乗り心地なのかは興味深い。

一方インサイトで気になったのは、タイヤからの細かい振動が、車体、ステアリングホイール、更にはシートを通して人体に伝達され、それにより走りの質感が大きく損なわれていることだ。徹底した軽量化により車体剛性に犠牲をしいているのではと疑いたくなる。前後のシートの快適性に関してもプリウスに軍配が上がった。


エアコンの利きは大きな差

その他で大きな差が見られたのが空調だ。前述のように25度にセットしての評価で、高速では気にならなかったが、市街地では大きな差となって現れた。電動コンプレッサーを採用しているプリウスは交差点での度重なる停止にも関わらず、前席、後席とも充分にエアコンが利いて快適に市街地走行を続けることができたが、インサイトは、信号で停車しエンジンが止まるとコンプレッサーも停止するので、エアコンルーバーからのエアーが間をおかずに生ぬるくなり、それに続いてエアコンのファンスピードが落ちて、快適性が大きく損なわれてしまう。このあたりの改善は是非とも必要と感じた。

外観スタイル

外観スタイルに移ろう。トライアングルシルエットとトヨタが呼ぶ独特のサイドビューはルーフの頂点位置を従来よりもかなり後方に移動し、後席のヘッドクリアランスを拡大している。同時にフロントピラーを25mm前方に移動、更にフロントホイール周りのホイールアーチ前方に平面を確保するなど整流効果を高め、Cd値は先代の0.26から0.25へと更に向上している。サイドのキャラクターライン、ヘッドランプ形状も悪くなく、総じて3代目のプリウスの外観スタイルはなかなか魅力的だ。

欧州の調査会社が行なった「クルマの顔とヒトの顔」の調査の中で2代目のプリウスの顔つきが「友好的」、「満足そうな」、「親しみやすい」という軸の評価が非常に高く、「環境への優しさを最大の売りにするクルマに非常によくマッチした顔つき」という評価が出ており(ご興味ある方はカースタイリング誌190号の小生の記事をご参照下さい)、今回の3代目も同様な評価に結びつきそうだ。ただし、オールニューなのに何故もう一歩飛んだデザインに出来なかったかという疑問は残る。一方のインサイトは既に第11回の車評オンラインで論評ずみで、顔つきはプリウスとは大分異なるし、全体的に悪いデザインではないが、いくらCd値を追求した結果だと説明されても、私の目にはプリウスとの近似性がどうしても気になる。

内装デザイン

3代目プリウスは内装デザインもかなり前進した。まずインパネ全体のフォルムがすっきりとしている。表示部分と操作系部分の分離もいいし、メーター類の視認性もいい。高価な素材を使ってはいないが、インパネの葉脈模様も悪くない。唯一疑問があるのはエレクトロシフトマチックとトヨタが呼ぶコントロールレバーがセンターコンソールの中央部に配置されたために、運転席と助手席間のウォークスルーが出来なくなったことだ。都心部の狭い空間、駐車スペースによってはウォークスルーが便利なシーンも必ずあるはずであり、この点が市場でどのように評価されるかは興味深い。

インサイトの内装デザインは第11回車評オンラインで「最近のホンダ車にみられる要素の多いデザインで、秀逸な造形とは言いがたい。ステアリングホイール上方に位置するデジタル速度計は座高の高い人も、低い人も、ステアリングホイールが干渉しやすく、NAVI周辺の素材感などを含めてインパネまわりの質感はいまいちだ。」と述べたが、もともとの狙いのクラスが異なるので仕方ないとはいえ、両車の内装デザインならびに質感にはかなりなギャップが有る。

室内居住性と実用性全般

最後に室内居住性にふれておこう。プリウスは全高こそ旧型と同じだが、ルーフの頂点を後方に移動することにより、後席のヘッドクリアランスが拡大され、私が着座した頭上には握りこぶしひとつが入る。またフロントシートバックの薄型化もあり、後席のひざ前スペースに余裕が生まれ、総じて後席の居住性は不満のないレベルになっている。これに対してインサイトは頭上に全く余裕がなく、また着座した位置でほぼ目線くらいの高さにリアウィンドーの上端がくるのが大変気になり、後席に乗っての長距離ドライブはちょっとつらい。

誰におすすめ?

このように見てくるとほとんどの領域でプリウスの優位は明確だが、当初予想されていたようにインサイトとの価格差が数十万円あったならば、両車は別のクラスとして比較されるべきものとなったはずだ。トヨタが投じた一石に最も驚いたのはホンダではないだろうか。ただしインサイトも既存のコンパクトカーと比べれば、明らかに地球にやさしいクルマであり、優遇税制を最大限活用しての購入は又とないチャンスだ。7月の販売が3ヵ月ぶりに1万台を超えたのはそれを如実に表しているといえるだろう。

ホンダの挑戦には拍手

最後に、ホンダがインサイトでトヨタに真正面から戦いを挑んだことに拍手をおくりたい。何故なら、もしインサイトによるトヨタへの挑戦がなかったら、トヨタがあのような思い切った価格付けに踏み切ったかどうかは疑わしいし、プリウスがもしもあのような価格ではなく、優遇税制もなかったなら、ハイブリッド車に対する爆発的とも言える話題性の喚起は起きなかったかもしれないからだ。

今後もう一段小さいクルマへのハイブリッド技術の展開を考えるときには、ホンダ方式のメリットはより拡大すると思われ、遠からずホンダからはフィットクラスの、トヨタからはヴィッツクラスのハイブリッドカーが導入されるだろう。一方ではレクサスHS250を先駆けに、プリウスより一回り大きいクルマへのハイブリッド技術の適用も拡大してゆくことは間違いなく、(私は大型乗用車やSUVのハイブリッド化は意味がないと思っている)、優遇税制がなくなったあかつきにも、ハイブリッド車は「記号性」が最大の価値であった過去とは決別し、「地球にも、ふところにも優しい車」として、幅広い顧客層にアピールしてゆくことになるものと思う。

更に新型プリウスが、これまではハイブリッドに懐疑的だった欧州市場をゆさぶる原動力になることも予測されるし、これまで最も販売台数を稼いできたアメリカ市場でのシェアーが、一段と拡大してゆくこと、更には今後中国がハイブリッド車の主要市場のひとつになってゆくことなども充分考えられる。トヨタ、ホンダのハイブリッド軍団への対抗として、ニッサンはEVに全力を投入する構えだが、遠からず導入されると思われるプラグインハイブリッドとの実用面での優劣を考えると、はたしてEVの普及がどのように進むのかは不透明であり、ニッサンの賭けが凶とならないことを願っている。

世界の自動車シーンが今後どのように変化して行くか、アメリカ、欧州、更には韓国、中国などのクリーンカー戦略がどのように動いてゆくか、現在ハイブリッド技術を持たないメーカーが今後どのように生き残ってゆくかなど、多くの事を考えさせられる今回の比較評価だった。

プリウスの+と−
+ 大変良好な実用燃費
+ 2.4Lクラスの走り
+ 驚きの価格
− 荒れた路面での後席乗り心地
− 前席ウォークスルー性の欠如

インサイトの+と−
+ 軽よりも良好な燃費
+ 1.8Lクラスの走り
+ 購入しやすい価格
− プリウスに似た外観スタイル
− 後席居住性
− 内装の質感


外観スタイル
3代目プリウスの外観スタイルは「環境への優しさを最大の売りにするクルマによくマッチした顔つき」を含めてなかなか魅力的だ。ただしオールニューなのに何故もう一歩飛べなかったかという疑問は残る。一方のインサイトも決して悪くはないが、どうしてもプリウスとの近似性が気になってしまう。


内装デザイン
3代目のプリウスの内装デザインはなかなかいい。まずインパネ全体のフォルム、表示部分と操作系部分の分離、インパネの葉脈模様も悪くない。一方のインサイトは造形がビジーで、秀逸なデザインとは言いがたく、NAVI周辺の素材感などを含めてインパネまわりの質感もいまいちだ。


メーター周り
プリウスのメーターは見やすく、またステアリング上のボタンを押すとその表示がメーター内に現れるのもいい。ただしエネルギーモニターはもう少し見やすくして欲しい。インサイトはメーター周りのデザインがビジーな上、デジタル速度計がステアリングホイールと干渉しやすい。


パワートレイン
プリウスのパワートレインは、1.8L(99ps)のエンジン、82psのモーター(システム全体では136psの最高出力)、交流発電機をプラネタリーギヤで連結したもの。インサイトは1.3L(88ps)エンジンのフライホイール部分に薄型モーター(14ps)兼発電機、その後ろにCVTを装着している。

 
後席居住性
プリウスは後席のヘッドクリアランスが拡大され、頭上に握りこぶしが入る。またフロントシートバックの薄型化もあり、ひざ前スペースにも余裕が生まれた。インサイトは頭上に全く余裕がなく、着座した位置でほぼ目線の高さにリアウィンドーの上端がくる。膝前スペースもかなり差が有る。

 
トランクスペース
トランクスペースはプリウスがこの状態で446L、インサイトはこの写真とは違い、フロアボードを下段にセットした状態で400Lとプリウスに分があるが、両車ともゴルフバック3セット積載可能としており、実用上はそれほど大きな差はなさそうだ。バッテリーは両車ともトランクスペース前方下に搭載。

小堀和則のセカンドオピニオン
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本格的なハイブリッドカー時代の幕開け
 日本自動車販売協会連合会が発表する新車乗用車販売台数ランキングで、2009年度6・7月と2ヵ月連続で首位をキープしたプリウス。特に7月は2万7712台を記録しており、2009年8月の段階で20万台近くのバックオーダーを抱えることを考慮すると、年間販売台数でもトップの座に輝くことは、まず間違いない。また、2代目インサイトも4月にトップを獲得して以来、毎月1万台近くの販売台数を維持。今まで特別な存在だったハイブリッドカーが、ここに来て一気に市民権を得たといえよう。
 これまでトヨタは、プリウスを筆頭にレクサスブランドを含め、様々な車種でハイブリッドカーを展開してきた。一方、ホンダもスポーツタイプのCR-Zやフィットハイブリッドなどの発売を予定している。コストやインフラなどの問題を抱える電気自動車は、本格的な普及には時間が掛かるだろうし、ハイブリッドカーをめぐる争いは、ますます熾烈になっていくだろう。

驚異的なプライスを実現したプリウス
 インサイトは189万円からとハイブリッドカーとしてはインパクトのある価格設定だったが、 205万円からというプリウスは驚異的。インサイトはあくまでコンパクトカークラスなのに対して、プリウスは完全にCセグメントの部類に入る。トヨタでプリウスに最も近いモデルと思われるオーリスの180Gと比較しても、安全装備面などを考慮すると、プリウスLグレードのほうが安いくらいだ。逆にいえば、長年培ってきたノウハウによってハイブリッドシステムの大幅なコストダウンに成功した証拠なのだろう。
 先日、別の機会にプリウスのGツーリングセレクション・レザーパッケージを乗ったが、足回りが適度に固められてハンドリングがよりダイレクトに感じられた。さらにレザーをあしらったインテリアも、近未来的かつプレミアムに仕上げられており、プリウスの魅力を再確認した次第だ。オプション装備を含めて350万円近くしたが、それだけの価値はあり、本来の適正価格なのかもしれない。



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