・全長 3,955mm
・全幅 1,730mm
・全高 1,530mm
・エンジン形式 5F01
・種類 直列4気筒DOHC
・排気量 1,598cc
・最高出力 120ps(88kW)/6,000rpm
・最大トルク 16.3kgm(160N・m)/4,250rpm
・車両本体価格 2,390,000円(税込)
新型C3のサイズ(3,955×1,730×1,530、2,465mm)は新型ポロ(3,995×1,685×1,475、2,470mm)に非常に近いもので、プラットフォームは初代の改良型だが、全長が105mm、全幅が60mmと、それぞれ若干拡大された。外観スタイルは、フロント周り、リア周りともに、なかなか個性的、かつ魅力的だが、最大の特徴は日本向けには全車標準装備となる「ゼニスウィンドー」とよぶ、ドライバーの頭上まで伸びた大型のフロントウィンドーによるこれまでにない前方上方視界と室内の開放感だ。また内装デザインも新鮮で、質感も悪くない。エンジンはPSA(プジョー&シトロエン)とBMWが共同開発した、1.6LのDOHC 16Vエンジンで、これに4速ATが組み合わされている。
2010年5月から発売。
2,390,000円
クルマに乗ることの喜びは、デザイン、走り、ステアリング・ハンドリング、乗り心地、サウンド、各部の触覚や操作感など実に多岐にわたる。これは、移動の道具とてして作られたクルマの重要な付加価値として、世界中の自動車エンジニアが長年必死に追求し続けてきたが、そこに「未開の地」が残されていることを、シトロエンがピカソとC3で証明してくれた。
「ゼニスウィンドー」と呼ぶドライバーの頭上まで伸びたフロントウィンドーによる前方上方視界を、シトロエンが試乗会を開催した横浜みなとみらいの高層ビル街、緑豊かな山下公園地区で評価することが出来た。更には車評コースでの評価のために借り出した際の都内、近郊など、広範囲な条件でも評価することが出来た。前方上方の視界が不要な時や、上部からの日光を遮断したいときには、スライディングサンバイザーを手動で動かすと通常のクルマとルーフはほぼ同じ状態になり、さらに折りたたみ式のサンバイザーも装備されているので、必要な遮光は問題なく出来る。
「ゼニスウィンドー」のメリットを何点か写真でご紹介したい。まず交差点で停止した折の前席からの前方上方視界を比較してみたのが上記の最初の2枚の写真だが、非常に大きな差があることが分かる。次に走行時の助手席からの前方上方視界は、写真のベイブリッジや、山下公園の滴る緑のように、通常のクルマとは比較にならないほど広い。更に前席の乗員だけではなく、後席からの斜め前方視界の広がりによる開放感もスライディングサンルーフなどの比ではないことが最後の写真からおわかりいただけるだろう。通常のティンテッドグラスに比べて、熱の伝導率が5分の1以下、紫外線の透過率が12分の1以下のスーパーティンテッドグラス加工が上部に施されているため、気温の高い夏場の試乗評価だったが、さほど暑くなく、これならほぼ通年使うことができそうだし、日焼けも心配しなくてもよいだろう。
このように書いてくると、「フロントウィンドーばかりを何故そのように取り上げるのか?」と言われそうだが、「ゼニスウィンドー」が、ルーフ領域の付加価値に対する根本的な問いかけをしてくれていると言っても言い過ぎではないとからだ。たとえば数多くのスライディングサンルーフ装着車で、コスト、重量に見合う付加価値として私が納得したものはこれまで皆無に近く、またAピラーの傾斜が大きい最近のコンバーチブルでは、オープン感覚が非常に乏しいものも少なくないが、それらと比較してみても「ゼニスウィンドー」の価値は決して小さくない。「大型ガラスは重量、コスト面から不利では?」という意見もあろうが、ルーフ全面をガラスにしたグラスルーフや、使用頻度の極端に限られるスライディングサンルーフなどと、重量、コストを比べてみてほしい。見方をかえると、フロントウィンドーからルーフにかけての部位はクルマの付加価値の宝庫ともいえそうだ。
これまで何度も書いてきたように、日本の自動車メーカーが、従来のような、効率、コスト、信頼性、品質などに偏った、いわゆる左脳的なクルマづくりを続けるだけでは、欧州車はもちろんのこと、急速に進化してきた韓国車、更には近未来の中国車との世界市場での競合を勝ち抜いてゆくことは至難であり、右脳を徹底的に駆使した創造的、かつ魅力あふれクルマづくり、乗ることに喜びを感じられるような右脳を刺激するクルマづくりに全力を注ぐことが非常に重要な課題だ。そうした意味からも、「ゼニスウィンドー」は、日本のこれからのクルマづくりへの一つの貴重な示唆を与えてくれていると思う。日本でクルマづくりに携わるエンジニア諸氏にも、是非新しいフロントヘッダー、サンバイザー、スライディングサンルーフ、ひいてはボディー構造などのありかたにチャレンジし、新しい付加価値を創造して欲しい。
「ゼニスウィンドー」の評価だけでC3の評価を終えるわけにはいかないので、以下一般的な評価項目に関してのコメントもしよう。まず外観スタイルだが、総じて旧型C3よりずっと個性的、かつ魅力的になった。サイドの造形は個人的にはまだあまり好きになれないが、フロント、リアまわりの造形は個性的で、好ましいものになっている。また近年多くの日本車が、コストの圧力のためか、デザイナーのひとりよがりか、クローム調の加飾を排することの多いのに比べて、内外装のアクセントとしてうまく活用しているのが印象に残る。
内装デザインもなかなか新鮮、かつ魅力あふれるものであり、小さい=安い、の方程式からの脱皮をねらった努力は評価に値する。インパネ、メーター周り、ステアリングホイールなどの造形も凝っており、インパネセンター、ドアトリム、ステアリング下部のプラスティックの形状や素材感など日本のコンパクトカーではなかなかお目にかかれないものだ。上記の外観スタイルと合わせて「フレンチテイスト」あふれる内外装デザインといってもいいだろう。
室内の居住性は不満のないレベルで、フロントシートの座り心地、ホールド感は悪くない。ただし、リアシートはサイズ、サポート性ともにいま一歩だ。またリアシートのアレンジ性がシートバックを前方に倒すだけに限られており、ポロのようにシートクッションも前方に持ち上げることにより、フラットなカーゴスペースが得られる方式に対して、自由度が乏しいのは、これからのダウンサイジング志向への対応としては十分とはいえないのが残念だ。
内外装デザインや「ゼニスウィンドー」などに比べて突出しているとはいえないのが、走りと燃費だ。車評コースにおける実測燃費は、12.6km/Lと1.6Lエンジンのコンパクトカーとしては平均的な数値となった。ただし実測値がカタログ値(10・15モードで12.3km/L)を超えているのは、実測燃費とカタログ値の乖離が大きい日本車では考えられないことで、その面では大いに評価されてしかるべきだ。対するポロは既報のように、TSIエンジン+7速DSGの効用が大きく、車評コースおける実測燃費は15.3km/Lと、軽自動車と肩を並べる燃費値だった(カタログ値は20 km/L)。C3の走り感に不足はないが、120psのC3よりも105psのポロの方が一般走行条件での走り感がいいのは低速トルクの違いによるものだろう。加えて4速ATもひとつの要因である。また仔細なことだが、給油キャップの開閉のためにキーが必要というのは、オープナーになれた我々には違和感があるところだ。
ステアリング・ハンドリング、乗り心地に関しては、一言でいえばドイツ車の味とは多分に異なり、フランス車的な「やさしさ」あふれるものだ。ステアリング・ハンドリングに関して言えば、ややゆるさは感じるものの、不満のないレベルだし、シートの座り心地、振動の吸収性にも助けられ、凸凹路でのしなやかな乗り味も評価したい。
さてこのようなC3だが、一体だれにおすすめだろうか? それは多分に「ゼニスウィンドー」の約束してくれる付加価値に加えて、ハード志向で真面目一辺倒のドイツ車とは異なる価値観としての「フレンチテイスト」に対する個人的な関心と好みに左右されるといってもいいだろう。またそれは性別や年齢によって左右されるものではないように思うので、少しでもご関心のある方は、是非一度実車に触れて乗ってみることをお勧めしたい。
シトロエンC3の+と−
+ 「ゼニスウィンドー」による開放感
+ 個性的、かつ魅力的な内外装デザイン
+ やさしく、しなやかな乗り味
− リアシートのアレンジ性不足
− ATがまだ4速なこと
− 後席のサイズ、サポート性不足
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■クラス一の居住性
数少なくなった欧州の自動車メーカーの中でプジョー・シトロエンは次々と楽しい車を送り出して気を吐いている。このシトロエンC3も真面目一方なドイツメーカーに対抗して車好きを迷わせるフランスからの新提案だ。200万円台に抑えられた価格設定も適切で、エコだけではないクルマの楽しさを味わえる一台である。まず乗って気がつくのがゼニスフロントウインドウによる視界の広さで、サンルーフでも得られない空までの広い世界が前面に拡がる。明るすぎる場合には前後にスライドするサンバイザーも装備されており、視界を自由にコントロールできるのはユニーク。座席もシトロエンの伝統であるソフトさを保ちつつ、横方向のサポートはしっかりしている。後席の広さもファミリーカーとして充分な広さがあり、乗り心地も良いのはシトロエンのよき伝統である。室内のデザインも落ち着いたもので、これまでのシトロエンの奇抜さはないが、高級感を演出している。
■走りも一流
道路に出て気がつくのは軟らかいステアリングフィールに支えられたしっとりとした乗り心地である。ややロードノイズを感じるものの全体として静かな走行感で、新型の電動パワーステアリングは神経質ではなく、安心して高速走行が楽しめる。1.6Lノンターボエンジンに4速ATの組み合わせは競合他車と比べやや古いのが残念だが、パワーに不足は無く比較的軽い車体を軽々とトップスピードまで運んでくれる。ファミリーカーにふさわしくボディーは衝突安全性を重視した設計で、Euro NCAP で4つ星の総合評価を得ている。
実際に日本の高速道路や市街地を走行してみると滑らかな操舵性とスムーズな乗り心地から一クラス上の車に乗っているように感じた。新型C3はシトロエンの永い伝統に支えられた操縦性と乗り心地を実現しながらも、これまでに無い広い視界を備えた新しいファミリーカーである。新型トランスミッションの導入が待ち遠しい。
セカンドオピニオン
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■独特の面白さがある新型シトロエンC3です
新型シトロエンC3のウリはなんといってものびやかなフロントガラスで、上から下まで景色を逃がさないデザインになっています。いかにもフランス車らしい発想によるアイデアで、今までにない視界の広さを十分に楽しめることができます。例えば高層ビルが立ち並ぶ街中を夜にドライブしたら、素敵な夜景をすっぽり視界に収めることができるのです。私はこの視界の広さは、今までのクルマで体験したことがありません。以前にも、天井部分をガラス面にする発想や、オプション設定でサンルーフなどもありました。しかし傾けすぎたAピラーの影響で位置が悪く、2列目以降の人には楽しめたかも知れませんが、ドライバーは少し寂しい思いをしていたと思います。でもこのC3ならそんな心配はありません。細かい配慮が行き届いたこのフロントガラスは、ドライバーや助手席はもちろんのこと、後席にもガラス面の大きさは開放感として伝わります。後席のさほど広くはないスペースでもゆったりとした空間に感じられ、全員で一つの景色を共有できるのです。まるで特急列車で旅に出るような、わきあいあいとしたムードが広がるでしょう。
今までは何気なく流していた町の景色は、特別なものになってくるに違いありません。
■フランス車のセンスを感じさせるインテリア
そしてもう一つはおしゃれな内装です。一番に目に飛び込んでくるのはメタル調のインパネ部分。いぶし銀のような光沢がお洒落な車内を演出しています。「きっとこのオーナーはセンスのいい部屋に住んでいるんだなぁ」。このデザインには、クルマを所有している人の日常まで浮かび上がらせてしまう力があるのです。日本車ではあまり見られない遊び心のある内装はさすがハイセンスなフランス車ならでは。この内装の質感や色調はC3の大きな魅力です。後席から見ても大きなフロントガラスの下にすっきりとまとまっているインパネはスマートな印象を与えてくれます。日本車もこのC3のようなおしゃれなインパネの演出をもっと学んでほしいな…。
■女性にも気になるフランス車です!
シトロエンのエクステリアデザインは、"宇宙船っぽい"印象です。フロントを中心に全体が丸い印象を受けました。そして私の知るシトロエンの中では、万人受けするはずです。どこか正体不明の面白さがあるので"宇宙船っぽい"と表現しましたが、押し付けがましくない個性的なクルマ、それがC3です。まるでオープンカーに乗っているような特別な開放感も味わえる。でも、きちんと日常にも溶け込んでくれて、柔軟性のあり、何か楽しいことでも運んでくれそうな…C3は、そんなクルマだと思うのです。