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2022年2月15日

2022年2月1~3日にかけて、大磯プリンスホテル駐車場を会場にして第41回JAIA輸入車試乗会が開催されました。その様子をお伝えします。(レポート:相原俊樹)

去る2月1~3日にかけて、大磯プリンスホテル駐車場を会場にして第41回JAIA輸入車試乗会が開催された。その様子をお知らせしよう。

会場の大磯プリンスホテル駐車場に集った自動車ジャーナリスト諸氏は、揃って満面の笑みを浮かべていた。JAIA輸入車試乗会が1年振りに開催された、その喜びを隠しきれない様子だ。かく言う私も、久し振りに最新の輸入車に乗れると思うとワクワクしてくる。

会場となった大磯プリンスホテル駐車場

会場となった大磯プリンスホテル駐車場

主催者の日本自動車輸入組合が、現下の厳しい状況の中で開催に踏み切るまでには様々な葛藤があったことは想像に難くない。それに実際の運営を担った事務局のご苦労にも一方ならぬものがあったはずだ。幸いにも全期間を無事に終了できたとのこと。まずは参加者の一人として、開催側の各位に「お疲れさまでした」と感謝を込めて申し上げたい。

JAIA輸入車試乗会の歴史は古く、第1回は1982年11月5日に箱根観光ホテルにて開催された。以来、一昨年の2020年まで40回の道のりを歩み今にいたる。41回目となる今年も盛況で、14社のインポーターから60台余りの試乗車が勢揃いした。

私は自分の試乗枠いっぱいの5台に乗ったが、その中からフランス製乗用車とSUVの印象をお伝えしよう。

ルノー ルーテシア インテンスはPHEV(プラグインハイブリッド車)でもなければ、ましてやEVでもない。純内燃機関を動力とするオーソドックスな4ドアサルーンだ。EVとSUVが全盛を極める今、こういう“昔ながらの”乗用車はいずれなくなってしまうのだろうか、そんな思いもあって私は随分前からルーテシアに乗ってみたかった。

フランス本国でのモデル名はクリオだが、日本ではルーテシアと呼ばれる。

フランス本国でのモデル名はクリオだが、日本ではルーテシアと呼ばれる。初代は1990年に登場した。この日試乗した現行モデルは5代目になるルノーのロングセラーだ。本文では便宜上「フランス製」と書いたが、トルコとスロベニアの工場にて製造される。

結論から先に言うと、このルノーの小型車は私の期待を大きく上回る、完成度の高い乗用車だった。4気筒の1333ccエンジンはターボで過給されて131psの最高出力と240Nmの最大トルクを生み出す。穏やかな湘南の海を左手に見ながら、交通の流れに乗って自動車専用道路をのんびりと走るには充分だし、いざとなれば7速ATが適切なギヤを選んで、それなりの加速も効く。

黒を基調にうまく白を組み合わせることで室内を広く見せている。

黒を基調にうまく白を組み合わせることで室内を広く見せている。アクティブクルーズコントロール、後側方車両検知警報、車線逸脱警報など、先進運転支援システムも充実。テックパック仕様には360度カメラが備わり、車庫入れも容易だ。

この日は大磯界隈の道を知り抜いたO氏が助手席に座っているので心強い。彼の案内で道幅が狭くて細かなカーブが連続する農道にも乗り入れた。普段の私なら敬遠したいルートだが、ここで偉力を発揮したのが程よい外寸。特に1725mmの全幅は最近では珍しいほどコンパクトで、これなら多少道幅の狭い路地でも安心して走れそうだ。

ルノー・日産アライアンスが開発した「CMF-B」プラットフォームを採用する。

ルノー・日産アライアンスが開発した「CMF-B」プラットフォームを採用する。唯一気になったのがサイドウインドウと一体型のリヤドアハンドルが使いにくいこと。高齢者や子供が乗る機会の多い後席だけに、通常のドアハンドルの方が好ましいと感じた。

ステアリングホイールと座席の位置関係も自然だし、視界もいい。突出した特徴があるわけではないが、どこにも違和感なく運転できるというのは乗用車の大切な資質だと思う。もしかしたらこれは、これまで幾多のクルマに乗り換えて酸いも甘いもかみ分けた粋人が最後に行き着く1台かもしれない。どこまでもまっとうで、長くつきあえる、言わばルノーが作る「無印良品」。ルノー ルーテシアとはそんなクルマだった。

プジョーe-2008 GTはルーテシアの対極にあるフランス車、なにしろ純EVのSUVなのだ。ここでも結論を先に言うなら、乗り始める前から乗り終わるまで、このプジョーには驚きの連続だった。まず彫刻的な外観をご覧頂きたい。屈強な職人が大理石からノミで削りだしたような塊(かたまり)感がある。外寸もさっき乗ったルーテシアより一回り大きい。

プジョーSUV2008にはガソリン版とEV版が用意され、顧客の好みでパワートレインを選択できる。

プジョーSUV2008にはガソリン版とEV版が用意され、顧客の好みでパワートレインを選択できる。試乗したのはEV版のe-2008 GT。助手席側の床が高くて乗降に慣れを要した。

プジョーが3D i-Cockpitと呼ぶ運転席回りにも目を奪われる。デジタルメーターパネルを取り囲む多角形のメーターナセルは左右がくり抜いてあって、角度によってはダッシュボードから浮き上がっているように見える。デザインしたのは名だたるパリのオートクチュール・メゾンか。そう思わずにはいられないほど大胆な内装をプジョーのインテリアデザイナーは実現してみせた。私は走る前からガツンとパンチを食らった思いだった。

独創性の高い内装デザインはそれだけでe-2008 GTを選ぶ理由になるほど魅力的。

独創性の高い内装デザインはそれだけでe-2008 GTを選ぶ理由になるほど魅力的。私は一時期、プジョー205を愛用していた。大変よく出来た3ドアハッチバックだったが、室内の粗雑な仕上げが玉に瑕だった。このe-2008 GTのインテリアはすこぶる上質、まさに隔世の感ありだ。

走り出すと、意外にも乗りやすくてホッとする。小径のステアリングホイールは軽いし、出足が軽やかだ。自動車専用道路に乗るとこのプジョーのEVは真骨頂を発揮した。とにかく静か。EVだから静かなのは当然なのだろうが、ガソリンエンジンの超高級リムジンが大量の遮音材を使って到達した静粛性を、e-2008 GTはいとも簡単に再現している。

ガソリン版のSUV 2008のタイヤは215/60R17サイズなのに対し、EVのe-2008 GTは1インチ大きな215/55R18を履く。

ガソリン版のSUV 2008のタイヤは215/60R17サイズなのに対し、EVのe-2008 GTは1インチ大きな215/55R18を履く。車重は1630kgでガソリン版より330kgも重いが、それが却って良好な乗り心地に貢献しているようだ。

足回りのしなやかなことにも感心した。かつて“ネコ足”と異名を取った柔らかさこそないが、舗装路の目地段差を乗り越える際のショックがまるで伝わってこない。同乗するO氏が「EVでも重要なのはやはりシャシーだな」と呟く。私も同感だ。クルマの基本を踏まえたプジョーの技術陣が作ったからこそ、e-2008 GT ではEV本来の旨味を巧く引き出せている。あとはインフラの充実を待つばかりだ。

ここではフランス車2台を取り上げたが、この日試乗の機会に恵まれた5台はどれも強い個性の持ち主ばかりだった。輸入車の魅力を満喫した私は、願わくは来年はマスクなしでJAIA試乗会に参加したいと願いつつ大磯を後にした。

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