2012年11月22日
◆編集部より、新刊『スーパーカブの歴史 ロングセラーモデルの変遷1952-2012』の刊行の目的と本書の特徴をまとめました!
弊社がスーパーカブをテーマとした最初の本として『ホンダスーパーカブ』を刊行したのは、いまから15年前の1997年のことです。この書籍は、スーパーカブの開発に関わった方々を中心にして、生い立ちからその後の展開などについて共著の形で編集したものです。
その後は、他の出版社からもスーパーカブに関するムック本やメンテナンスブックなども発売され、様々な角度からスーパーカブを知ることができるようになってきました。スーパーカブは、本の刊行と同じ年の1997年にリトルカブを発売することで、特に女性のユーザーを獲得することに成功し、さらに多くのユーザーを増やすことになります。そうしたファンの増大も関係して、弊社の『ホンダスーパーカブ』の本も2001年と2004年、2008年には内容を増補して版を重ねることができました。現在は、細かい部分に手を加えて2012年に最終版を刊行するに至っています。他にも2008年には、スーパーカブの誕生50周年を記念して、開発関係者や愛好家の方々50名がスーパーカブを語る…という『スーパーカブ50』というファンブックも弊社で刊行しています。
前置きが長くなってしましたが、今回は、カブ号を起源として誕生したスーパーカブの歴代のカタログを年代別に整理して、その進化や仕様の変化を一冊の本としてまとめることを企画しました。タイトルは『スーパーカブの歴史』として、320点以上のカラー図版を収録してページを構成しています。
今年は偶然にもカブ号の誕生から60年となる節目の年であり、スーパーカブ生産から54年になるわけですが、50年以上にわたり基本的なスタイルを変えずに生産され続けてきたスーパーカブが、その時代に応じて細かい仕様を変えてきたモデルの変遷をたどる書籍は、私の知る限り今までありませんでした。それを実現したのが本書の最大の特徴と考えています。
まとめてみると意外にも発売当初のスーパーカブは、女性をモデルとした宣伝をしています。これは「女性のユーザーを新たに開拓したい」という当時の藤沢武夫専務の強い意向が影響しているようです。ところが1960年代になって、商業用としての実用性を訴求するようになり、その宣伝手法が大きく変わります。当時の日本では、個人による使用はまだまだ少なかったからでしょう。1960年代後半になるとスーパーカブの販売台数も倍増すると共に、バリエーションが増え、排気量も広がり、非常に多くのモデルがカタログ展開されるようになります。高度成長期の1970年代には豪華仕様のモデルがつくられ、実用車でありながら、当時流行したメタリックカラーも登場します。1980年代になると、省エネルギーに向けた新しいモデルが開発され、直線基調の新しいボディデザインのモデルが追加されます。1990年代になると、ついにスーパーカブは成熟期を迎え、リトルカブなどの派生モデルが投入され、商用というよりファッション性の高い仕様が発売されます。以後、いち早く排気ガスなどの環境対応を図り、2012年からは主力モデルの生産工場を海外に移管して、現在に至っているのです。
本書によって、スーパーカブというロングセラーな実用車が、日本の経済状況や時代の要請、ユーザーとともに変化してきたことが分かっていただけると思うのです。
最後になりますが、珍しい図版と共に、時代を感じさせるイラストなども収録していることも本書の特色です。これらの資料の収集や取材などの準備期間を含めると刊行までには、10年以上もかかっていますから、スーパーカブに興味のある方はもとより、ユーザーやファンの方々にはぜひとも読んでいただきたい作品です。
小林謙一