第8回 2008年/新たなGT-R伝説の幕開け

2025年1月27日

2004年にZ33型のフェアレディZを投入し、ドライバー部門(本山哲/リチャード・ライアン)およびチーム部門(NISMO)で2連覇を達成したほか、スーパーGTの初年度となる2005年もチーム部門でNISMOが3連覇を達成。まさにニッサン勢はフェアレディZを武器に猛威を振るっていたが、その後は悔しいリザルトが続いていた。
2006年および2007年ともに各2勝をマークし、常に上位争いを繰り広げてきたニッサン勢だが、わずかに届かずにタイトル争いで惜敗していた。そこで、ニッサン勢はチャンピオンを奪還すべく、2008年にニューマシンを投入。4年間にわたってベースモデルを務めてきたZ33型フェアレディZに代わって、R35型GT-Rにモデルをスイッチした。 2007年12月に発売されたR35型GT-Rは、3800ccのV型6気筒ツインターボエンジン、VR38DETTを搭載した4WDモデルだったが、同モデルをベースにNISMOが開発したスーパーGT用モデルは、FRのレイアウトを採用したほか、エンジンに関しても2007年型のフェアレディZに搭載されていた4494ccのV型8気筒NAエンジン、VK45DEを搭載。ギアボックスも2007年型のフェアレディZに搭載されていた6速シーケンシャルを採用するなど、実績のあるパッケージだったことも信頼性の向上につながっていたのだろう。R35型GT-Rはファンの期待に応えるかのようにデビューイヤーから素晴らしい走りを披露していた。
2008年のスーパーGTにはNISMOの23号車「XANAVI NISMO GT-R」および22号車「MOTUL AUTECH GT-R」に加えて、HASEMI MOTOR SPORTの3号車「YellowHat YMS TOMICA GT-R」、TEAM IMPULの12号車「カルソニックIMPUL GT-R」、さらに2006年よりGT500クラスへの参戦を開始したKONDO RACINGの24号車「WOODONE ADVAN Clarion GT-R」と計5台のGT-Rがエントリーした。

2008年のスーパーGTは鈴鹿サーキットで開幕した。ここで抜群のスピードを見せたのが、22号車「MOTUL AUTECH GT-R」のミハエル・クルム/柳田真孝で、予選でトップタイムをマークし、ポールポジションを獲得。23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエが2番手、12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生/セバスチャン・フィリップが3番手に続いた。
決勝でもGT-Rの勢いは健在で、23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエが同モデルのデビューウインを獲得したほか、22号車「MOTUL AUTECH GT-R」のミハエル・クルム/柳田真孝が2位入賞を果たし、ニッサン勢/NISMOが1-2フィニッシュを達成。
さらに第2戦の岡山国際サーキットでもニッサン勢がトップ争いの主導権を握っており、23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエがポール・トゥ・ウインで2連勝を達成したほか、12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生/セバスチャン・フィリップが2位入賞を果たし、ニッサン勢が2戦連続で1-2フィニッシュを達成した。
第3戦の富士スピードウェイにおいてニッサン勢の最高位は12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の9位に終わったが、第4戦のセパンサーキットでは、22号車「MOTUL AUTECH GT-R」のミハエル・クルム/柳田真孝が予選でトップタイムをマーク。決勝では24号車「WOODONE ADVAN Clarion GT-R」のジョアオ・バオロ・デ・オリベイラ/荒聖治が予選4番手から逆転で優勝、22号車「MOTUL AUTECH GT-R」が2位入賞を果たしたことでシーズン3度目の1-2フィニッシュを達成している。

その後もニッサン勢はGT-Rを武器に躍進を続けた。第5戦のスポーツランドSUGOでは24号車「WOODONE ADVAN Clarion GT-R」の8位がニッサン勢の最上位となったが、第6戦の鈴鹿では12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生/セバスチャン・フィリップが1000kmの長距離レースを制し、シーズン初優勝を獲得。さらに第7戦のツインリンクもてぎでは、3号車「YellowHat YMS TOMICA GT-R」のロニー・クインタレッリ/横溝直輝がポール・トゥ・ウインを達成したほか、第8戦のオートポリスでは23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエがポール・トゥ・ウインで3勝目を獲得するなど、ニッサン勢が破竹の勢いで勝利を重ねていた。

そして迎えた最終ラウンドとなる第9戦の富士スピードウェイにおいてもニッサン勢がトップ争いおよびタイトル争いの主導権を握った。予選で12番手に出遅れた12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生/セバスチャン・フィリップが猛追を披露し、見事な逆転でシーズン2勝目を獲得。一方、3勝を挙げてタイトル争いに王手をかけていた23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエも9位入賞でポイントを獲得し、ドライバー部門でチャンピオンを獲得する。 このようにニューマシンのR35型GT-Rは9戦中7勝をマークするなど圧倒的な強さを披露。新たなGT-R伝説の幕開けに相応しいシーズンとなった。

R34型スカイラインGT-Rが2003年のラストイヤーに二冠を達成してから5年。スーパーGTに“GT-R”が復活した。開幕戦の鈴鹿サーキットに5台のR35型GT-Rが登場。
レース序盤で2番手につけていた23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエが第2スティントで首位に浮上。「GT-Rは世界中から注目されていたので、デビューウインを果たせなければならないというプレッシャーがありました」と語る本山哲は、そのプレッシャーを跳ね除け、23号車「XANAVI NISMO GT-R」がデビューウインを達成した。  
逆転勝利を飾った23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲(左から3人目)/ブノワ・トレルイエ(左から4人目)に続いて、ポールポジションを獲得した22号車「MOTUL AUTECH GT-R」のミハエル・クルム(左端)/柳田真孝(左から2人目)が2位に入賞。NISMOが1-2フィニッシュを達成した。  
第2戦の岡山国際サーキットでもGT-Rは猛威を振るっている。23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエがファステストラップを記録しながら、ポール・トゥ・ウインを達成。12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生(左から2人目)/セバスチャン・フィリップ(左端)が2位入賞を果たした。  
第4戦のセパンサーキットでは24号車「WOODONE ADVAN Clarion GT-R」のジョアオ・バオロ・デ・オリベイラ/荒聖治が予選4番手から逆転優勝。「とても良い状態だったので勝つ自信がありました」とオリベイラ、「向こうがミスしたときに焦らずに前に出ることができました」と荒はそれぞれコメントしている。  
24号車「WOODONE ADVAN Clarion GT-R」のジョアオ・バオロ・デ・オリベイラ(左から5人目)/荒聖治(左から3人目)がシーズン初優勝。トップを快走しながらも、レース中に誤ってピットレーンスイッチを押して失速した22号車「MOTUL AUTECH GT-R」のミハエル・クルム/柳田真孝が2位に入賞した。  
第5戦のスポーツランドSUGOでニッサン勢は苦戦の展開。24号車「WOODONE ADVAN Clarion GT-R」のジョアオ・バオロ・デ・オリベイラがニッサン勢の最上位となる8位で完走した。  
第6戦の鈴鹿サーキットでは予選で5番手につけていた12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生/セバスチャン・フィリップが素晴らしい走りを披露。序盤で他車と接触したものの、1000kmの長距離レースでコンスタントな走りを見せ、シーズン初優勝を獲得した。  
第6戦の鈴鹿サーキットを制した12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生/セバスチャン・フィリップ。「ドライバーとチームで勝ち取った勝利です」と松田、「最後のスティントの段階では勝てると思っていませんでした。鈴鹿1000kmレースは3勝目ですが、今回が一番嬉しいです」とフィリップはコメントしている。  
第7戦のツインリンクもてぎでは、3号車「YellowHat YMS TOMICA GT-R」のロニー・クインタレッリ/横溝直輝がポール・トゥ・ウインを達成。両ドライバーにとってGT500クラスでの初優勝となった。  
ロニー・クインタレッリ(右)/横溝直輝(左)が初優勝を獲得。「ナオキとのコンビで初優勝できて嬉しい」とクインタレッリが語れば、横溝も「ロニーが素晴らしい走りをしてくれたし、チームも最高のピットワークだった。夢のような気分です」とコメント。チームにとっても1995年の第4戦以来、13年ぶりの勝利となった。  
第8戦のオートポリスでは23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエがポール・トゥ・ウインで3勝目を獲得。「チャンピオンを獲得するために勝たなきゃいけなかったのでホッとした気持ちでいっぱいです」と本山。トレルイエも「プレッシャーのかかる週末だったからホッとしています。僕にとってもチームにとっても良い週末になりました」と語るように安堵の表情を見せていた。
第9戦の富士スピードウェイは小雨がぱらつくなかでスタート。多くのチームがレインタイヤを装着するなか、予選で12番手に出遅れていた12号車「カルソニックIMPUL GT-R」の松田次生/セバスチャン・フィリップはスリックタイヤを選択した。そのチョイスが功を奏し、天候が回復するなか、12号車「カルソニックIMPUL GT-R」が猛追。序盤でトップに浮上し、シーズン2勝目を獲得した。  
シーズン3勝をマークし、タイトル争いに王手をかけていた23号車「XANAVI NISMO GT-R」の本山哲/ブノワ・トレルイエは80kgのウエイトハンディに苦戦。それでも9位入賞で2ポイントを加算し、本山哲/ブノワ・トレルイエがドライバー部門でチャンピオンに輝いた。  
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