前回は三菱GTOを紹介したが、今回はGTOの輸出モデル「三菱 3000GT」を紹介する。GTOの名前を使はないのは。最大の輸出先であるアメリカで、GMのポンティアックが使っており、登録済みであったため使えなかったのであろう。
1991年に登場した3000GTは、最上級グレードのVR-4が、その頭角を現すスタイルと、ツインターボ・ツインインタークーラーV型6気筒、フルタイム全輪駆動、4輪ステアリング、電子制御式完全独立サスペンション、アクティブ・エアロダイナミクスなどの高性能技術により、「Motor Trend」誌のインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。また、1995年と1996年に販売された3000GTスパイダーは、フォードが1957年から1959年に販売した「スカイライナー」以来の量産型リトラクタブル・ハードトップ・コンバーチブルであり、その後、爆発的な人気を博すことになるボディースタイルのトレンドの火付け役となった。
◆1991年3000GT/HSX concept
1989年の東京モーターショーで公開されたコンセプトカーHSXは、その後3000GT/HSXとして紹介された。これは、そのフォルダーでコピーには「三菱の高速実験スポーツカーは、もはや実験ではない。現実だ。」とある。
◆1991年型米国仕様3000GTのカタログ
先行開発走行実験車HSR-Ⅱとともに紹介された3000GT。コンセプトカーHSXとはリアスポイラーの形状が異なり、タルガトップルーフは採用されず、2シーターから4(2+2)シーターに変更されていた。
上の4点は、最高グレードの3000GT VR-4で、アクティブ・エアロ・システム、ポップアップ式ヘッドランプを備えたエアロダイナミクスに優れた魅力的なボディを与えられ、全輪駆動システム、四輪ステアリング、電子制御サスペンション、アクティブ・エキゾースト・システムなどを標準装備する。6G72型2972cc V型6気筒DOHC 24バルブ ツインターボ・ツインインタークーラー300hp/6000rpm(net)、42.5kg-m/2500rpmエンジン+ドイツのゲトラグ(Getrag)社製5速MTを積む。タイヤは245/45R17 Vレート・ラジアル。カタログはMitsubishi Motor Sales of America, Inc.で発行されたもの。
これは中間グレードの3000GT SL。駆動方式はFF(前輪駆動)で、6G72型2972cc DOHC 24バルブ V型6気筒NA(自然吸気)仕様の222ps/6000rpm、27.8kg-m/4500rpmエンジン+5速MTを積み、オプションで4速ATも選択できた。リアスポイラーは3000GT SLではオプション設定で、ベースグレードの3000GTにはオプション設定もなかった。
◆1993年5月、ベルギーで印刷されたオランダ語版カタログ
グレードは1種類で、米国のVR-4相当。6G72型2972cc DOHC 24バルブ V型6気筒ツインターボ・ツインインタークーラー210kW(286ps)/6500rpm、407Nm(41.5kg-m)/3000rpmエンジン+ゲトラグ社製5速MTを積む。タイヤは225/50ZR17を履く。カタログに書かれたコピーの一部を紹介すると、
「絶対的なワールドクラスのパフォーマンス。・・・3000GTのドライビングは、かつてない体験です。このスポーツカーの圧倒的なエンジンパワーだけで、すべてのドライブがほとんど感動的な出来事になる。例えば、ツインターボ、ツインインタークーラー、3.0L V6エンジンの加速効果は、0-100km/hまで5秒強。フォーミュラIのマシンはそれよりわずか1.5秒短い。走行中はスピードメーターに注意してください。エンジンはとても静かでスムーズに動くので、気づかれることなく素晴らしいスピードに達することができます。」
「究極のドライビング感覚への誘い。・・・3000GTでコックピットと呼ぶには理由がある。このシートに座ることは、究極の体験なのだ。2+2のインテリアはもちろん、車高が低くワイドなスタイルと完全に調和している。乗員にかつてない贅沢と、最高のスポーティ・ドライビング・プレジャーにふさわしい細部へのこだわりを提供する。運転席は人間工学に基づき、すべてのコントロールとコントロール・パネルへのアクセスが完璧。そのデザインは、機能性の中に明確な美的センスを感じさせる。3000GTのステアリングを握れば、世界で最も美しく最高のスポーツカーのひとつである3000GTの、まさにスリルを味わうことができます。」
◆1993年型米国仕様3000GTのカタログ
上の5点は表紙と最高グレードの3000GT VR-4で大きな変更は無かった。中間グレードとベースグレードの3000GT SLと3000GTにリアスポイラーが標準装備された。ただしアクティブ・エアロ・システムは3000GT VR-4のみに装着される。
3000GT VR-4に積まれる、6G72型2972cc V型6気筒DOHC 24バルブツインターボ・ツインインタークーラー300hp/6000rpm(net)、42.5kg-m/2500rpmエンジン
3000GT VR-4の駆動系とサスペンション。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット+コイルスプリング、リアはダブルウイッシュボーン+トレーリングアーム+コイルスプリングの4輪独立懸架。
◆1993年に米国で発行された1995年型3000GT Spyder生産試作車のカタログ
1993年10月、千葉の幕張メッセで開催された第30回東京モーターショーに登場した、1995年型3000GT Spyder(リトラクタブルハードトップ)のプレカタログ。1993年にMitsubishi Motor Sales of America, Inc.で発行されたもので、ベースモデルにはすでに1994年のマイナーチェンジが採用されている。カリフォルニア州にある三菱のサイプレス・スタジオでデザインされ、AS社(American Sunroof Corp.:ASC)でクーペのルーフをカットして改造された。AWDのVR-4とFFのSLがベース車として採用されている。1994年秋に販売されると記されているが、実際に発売されたのは1995年4月であった。1995年型3000GTのカタログに載ることはなかったが、1955年と1956年に3000GT Spyderの専用カタログが発行されている。
最初のスパイダー製作用ベース車は、三菱の名古屋工場で組み立てられたが、柔らかいスプリング、Aピラー補強材、クォーターウィンドーとハッチ部分を覆うプラスチックプラグが取り付けられて出荷された。ASCでは、ルーフを慎重に切り取る前に、内装の大半が取り除かれ、サイドシルにはボックス断面の補強用ブレース、フロントガラスカウルとヘッダー補強材、リアショックアブタワーバルクヘッドブレース、その他のスチール製部品は、精密治具を使用して手作業で溶接された。露出した金属はすべて防錆加工され、新しい配線が敷設され、ハードルーフの機構が取り付けられた。この改造には約12時間を要したという。滑らかな2ピース構造のシート成形複合材製ルーフ(重量は45kg)は、C3(Computerized-Convertible-Control)64kメモリコンピューターからの指令を受け、2つのバランスコイルスプリングの助けを借りて、4つの電動モーター、4つの油圧ポンプ、上部シリンダーを作動させる。ルーフの開閉に要する時間は約35秒であった。
◆1994年英国仕様3000GTのカタログ
グレードは1種類で、米国のVR-4相当。6G72型2972cc V型6気筒DOHC 24バルブツインターボ・ツインインタークーラー210kW(286ps)/6500rpm、407Nm(41.5kg-m)/3000rpmエンジン+ゲトラグ社製5速MTを積む。タイヤは225/50ZR17を履く。1994年のマイナーチェンジが施されており、前後のバンパー形状の変更、ポップアップ式ヘッドランプは固定の4灯式に変更され、エンジンフード上にあったブリスターカバーは廃止された。さらに、サイドエアベントの形状も変更されている。
◆1994年型米国仕様3000GTのカタログ
上の4点は3000GT VR-4。外観は英国仕様同様のマイナーチェンジを受けており、さらに、VR-4のエンジンは300hp/6000rpm⇒320hp/6000rpm、42.5kg-m/2500rpm⇒43.5kg-m/2500rpmに強化されている。3000GT SLと3000GTのノンターボエンジンの性能は変更なし。全車運転席のみ標準装備であったエアバッグが、助手席にも標準装備された。
◆1995年型3000GT Spyderのカタログ(米国市場限定モデル)
1995年4月に米国限定で発売された3000GT Spyder。カリフォルニア州・ロングビーチのASC(American Sunroof Corp.)でクーペからスパイダーに改造されて販売された。グレードは3000GT VR-4と3000GT SLをベースにした2種類が設定され、価格はVR-4が6万4449ドル、SLは5万7499ドルであった。クーペの価格はVR-4が3万7050ドル、SLは2万4050ドルであったから、クーペと比べるとVR-4で1.7倍、SLではなんと2.4倍もする高価なクルマであった。
◆1995年型米国仕様3000GTのカタログ
1995年型は大きな仕様変更は実施されなかった。写真のクロームメッキが施されたアロイホイールはVR-4には標準装備され、SLにはオプション設定された。
◆1996年型3000GT Spyderのカタログ(米国市場限定モデル)
スパイダーは1996年型も引き続き生産されたが、販売目標であった年間1000台には及ばず、1997年8月に販売を終了した。Mitsubishi Motors North Americaのデータによる生産台数は下表のとおり。
GR-4 Spyder | SL Spyder | 合計 | |
1995年型 | 520台 | 368台 | 888台 |
1996年型 | 84台 | 62台 | 146台 |
合計 | 604台 | 430台 | 総計1034台 |
◆1997年6月、日本で発行された英語/西語版3000GTのカタログ
グレードは1種類で、フルタイム全輪駆動、4輪ステアリング、電子制御式完全独立サスペンション、アクティブ・エアロダイナミクスなどを装備し、6G72型2972cc V6 DOHC 24バルブツインターボ・ツインインタークーラー210kW(285.5ps)/6000rpm、407Nm(41.5kg-m)/3000rpmエンジン+ゲトラグ社製5速MTを積む。タイヤは225/50R17 94Vを履く。フルスケール280km/hの速度計がつき、ヘッドランプクリーナーが初めて登場した。右ハンドルと左ハンドルが設定されている。
◆1998年型米国仕様3000GTのカタログ
上の2点は表紙と3000GT VR-4。フロントバンパーの形状が変更されている。フルタイム全輪駆動、4輪ステアリングは継承するが、電子制御式サスペンション、アクティブ・エアロダイナミクスなどは外されている。6G72型2972cc V6 DOHC 24バルブツインターボ・ツインインタークーラー320hp/6000rpm、43.5kg-m/2500rpmエンジン+ゲトラグ社製6速MTを積む。タイヤは245/40ZR18を履く。
上段のクルマは3000GT、下段のクルマは3000GT SL。リアスポイラーの形状が大きく変化している。3000GT SLのエンジンは2972cc V6 DOHC 24バルブ218hp/6000rpm、28.3kg-m/4500rpmだが、3000GTのエンジンは2972cc V6 SOHC 12バルブ161hp/5500rpm、25.6kg-m/4000rpmに換装されている。トランスミッション(トランスアクスルだがカタログ表記に合わせる)は両グレードとも5速MTまたは4速ATが選択可能であった。タイヤは3000GT SLが245/45ZR17、3000GTは225/55VR16。3000GT SLのABS(Anti-lock Braking System)が標準装備からオプションに後退している。
3000GT VR-4の運転席。
◆1999年ドイツで発行された独語版3000GTのカタログ
三菱自動車ドイツ社(MMC Auto Deutschland GmbH)で発行されたもの。なぜか“The state of the art(最先端の技術)”のコピーのみ英語。グレードは最上級の6G72型ツインターボ・ツインインタークーラーエンジン+ゲトラグ社製6速MTを積む。タイヤは225/50ZR17を履く。
◆1999年型米国仕様3000GTのカタログ
米国における3000GTの最終モデル。フロントバンパーの開口部が大型化され、ヘッドランプ周りも変更されている。
最上級グレードの3000GT VR-4。VR-4のリアスポイラーはウイングタイプのものに変更された。
ベースグレードの3000GT。FF駆動で、2972cc V6 SOHC 12バルブ161hp/25.6kg-mを積む。中間グレードの3000GT SLのABSはオプションから標準装備に戻っている。ちなみにベースグレードの3000GTにはABSは付かない。
3000GT VR-4の運転席。レザーシートとトリムは3000GT VR-4とSLには標準装備、3000GTにはオプションであった。
次回は三菱GTOのOEM車であったダッジ・ステルス(Dodge Stealth)について紹介する。