第141回 三菱スタリオン – 1

2024年6月27日

 今回は、前回約束した三菱のスポーティーカー、スタリオンについて紹介する。スタリオンは1982年3月に開催された第52回ジュネーブ国際自動車ショーで公開され、同年5月14日に国内で発売された。じつはスタリオンの発売予定は1981年であったが、当時は新型車へのターボ装着がまだ認可されておらず、その認可を待っていたため1年遅れとなってしまった。

 三菱のスポーティーカーは、「ギャランGTO」(1970年)、「ギャランFTO」(1971年)、「ランサーセレステ」(1975年)と発売してきたが、日本製スポーティーカーの需要が北米でも見込めるようになり、ターボエンジンの国内認可が見通せるようになったので、本格的スポーティーカーの開発プロジェクトをスタートさせた。1978年秋のことであった。開発にあたっては、先進技術を積極的に取り入れ、高度な走行機能と燃費が優れているターボエンジンによって200km/h以上を余裕をもって走行可能なこと、そして、速さの追求では経験も深く水準も高い西独の同車格車(ポルシェ124ターボであろう)をしのぐことを目標に進められた。

1982年5月に発行されたスタリオン最初の本カタログ

 上の4点は本カタログの一部。スペシャルスポーティーカーとしての緊迫感ある姿とするため、外観はスラントノーズとショート&ダックテールによるウェッジシェイププロポーションとし、ボディーと一体感のある大型バンパー、ヘッドランプは空気抵抗を小さくするためリトラクタブルへッドランプを採用、幅広センターピラーおよび大型フルドアによるクリーンな面構成など、スペシャリティーを強調している。ハイグレードのGSR-Ⅲ、GSR-Xには先進エレクトロニクス技術を結集した電子メーターを採用。サイズは全長4400mm、全幅1685mm、全高1320mm、ホイールベース2435mm。乗車定員5名。車両重量1125~1255kg。

 上の2点は1982年5月に発行された簡易版カタログの一部。内装は機能を優先したシンプルなデザインを基調とし、6-ウエイ・フルアジャスタブルシート(ヘッドレスト、リクライン、前後調整に加え、シートバックのサイドサポート、クッション前端部、ランバーサポートの調整が可能)、ラップラウンドリアシート、クラスタースイッチ、4本スポークステアリングホイールなどにより、機能向上と独自のインテリアを実現している。

モデルバリエーションは、G63B型1997cc直列4気筒OHC シリウスECIターボエンジン145ps/5500rpm、22.0kg-m/3000rpmを積み、4輪独立懸架が4車種、GSR-Ⅰ(MT:181.5万円)、GSR-Ⅱ(MT:199.5万円、AT:207万円)、GSR-Ⅲ(MT:228万円、AT:235.5万円)、GSR-X(MT:273.5万円、AT:281万円)とベーシックモデルのG63B型1997cc直列4気筒OHC シリウスエンジン(自然吸気)110ps/5500rpm、16.7kg-m/3500rpmを積み、後輪リジッドアクスルのGX(MT:173万円)の合計5車種がラインアップされていた。トランスミッションは5速MTとOD付き4速AT。ブレーキは全車ディスクで、GXの後輪を除きベンチレーテッドディスクを採用していた。タイヤはターボ車には195/70HR14スチールラジアル、ノンターボ車には195//70SR14を装着、ハイグレードのGSR-ⅢとGSR-XにはミシュランXVRとアルミホイールが標準装備された(他のモデルにはオプション)。ターボ車にはブリヂストンのポテンザRE47もオプションで装着可能であった。ステアリングシステムはラック&ピニオンではなく、リサーキュレーティングボールタイプが採用されていた。ターボ車の0-400m発進加速16.1秒、最高速度180km/h(速度リミッター付き)の俊足であった。

◆1982年5月に発行された輸出用英文カタログ

 モデルバリエーションは2000と2000EXの2種類のみ。ボンネット前端につくバッジは国内仕様では「MMC」だが、輸出仕様には「スリーダイヤ」が付く。サイズは国内仕様より若干大きく、全長4425mm、全幅1705mm、全高1315mm、ホイールベース2435mm。乗車定員4名。車両重量は2000が1220kg、2000EXは1245kg。

エンジンは最高出力が国内仕様より25馬力高い、4G63型1997cc直列4気筒OHC ECIターボ170ps/5500rpm、25.0kg-m/3500rpm、トランスミッションは5速MTを積む。0-400m発進加速15.5秒、最高速度220km/h。

 上の2点は輸出仕様スタリオンの透視図とリアサスペンション。フロントサスペンションはマクファーソンストラット+コイルスプリング、リアサスペンションは三菱独自のストラット式を採用した4輪独立懸架で、優れた操縦安定性と快適な乗り心地の両立を図っている。走行中車両の直進性を確保するため前輪キャスター角を5°20′と大きく、トレールを11mmと小さく設定。さらにガス封入式ストラット、重荷重の時スプリングの補助となるラバーヘルパーの採用、大口径スタビライザーの採用などにより、高速時やコーナリング時の剛性を高める独自の設定がなされていた。ブレーキは4輪ともベンチレーテッドディスクブレーキ、タイヤは195/70VR14。オプションで205/70VR14が設定されていた。

 輸出仕様スタリオンの室内。6-ウエイ・フルアジャスタブルシートを装備し、フルスケール240km/hのスピードメーターを備える。リアシートを前方に倒すとフラットな荷室が出現する。

◆1982年に米国で発行された1983年型スタリオンのカタログ

 「スタリオンの “コマンドカプセル “に入った瞬間、興奮が始まる。」のコピーとともに紹介される米国向けスタリオン。グレードはStarionとStarion LSの2種類のみ。サイズは国内仕様と同じで、全長4400mm、全幅1685mm、全高1326mm、ホイールベース2435mm。

 エンジンは2555cc直列4気筒OHC MCA-Jetターボ145ps/5000rpm(SAE net)、25.6kg-m/2500rpm(SAE net)。トランスミッションは5速MTを積む。

上の2点は米国向けスタリオンLSの室内。ハイグレードのLSには電子メーター、6-ウエイ・フルアジャスタブルシートが標準装備される。

 上の2点はスタリオンのリアビューとスペック/装備表。標準タイヤは195/70R14だが、オプションで215/60R15が設定されていた。脱着可能な手動式サンルーフ、ボディーサイドモールディング、クルーズコントロールもオプションで用意されていた。LSグレードにはエアコンは標準装備され、レザーシート、ツートンカラー塗装がオプションで選択可能であった。

1983年6月に発行されたインタークーラーターボ車のカタログ

1983年6月、スタリオンGSR-ⅡとGSR-Ⅲの5速MT車に175馬力のインタークーラーターボエンジンが搭載されて発売された。

G63B型1997cc直列4気筒OHCインタークーラーターボ175ps/5500rpm、25.0kg-m/3500rpmエンジン。三菱は国内唯一のターボ自社開発メーカーとしてエンジンにベストマッチングするターボシステムを総合的に製品化。スタリオンにも小型軽量(タービン径56mm、コンプレッサー径54mm)のTC-05型ターボユニットを採用。軽量ゆえの優れたレスオンスと、低速からの滑らかなターボ効果がスタリオンのハイパーフォーマンスの核となっている。

1983年6月時点のモデルラインアップは、175psインタークーラーターボ+5速MTを積むGSR-ⅡとGSR-Ⅲ、145psターボ+OD付き4速ATを積むGSR-ⅡとGSR-Ⅲが見込み生産され。145psターボ+MT/ATを積むGSR-Xおよび145psターボ+MTを積むGSR-Ⅰは注文生産となり、ノンターボのGSR-Ⅰはカタログから落とされた。

スタリオン4WDラリー

 1983年10月に開催された第25回東京モーターショーで発表された「Starion 4WD Rally」。1984年秋から世界ラリー選手権(WRC)に参戦する計画で開発を進めていたが、計画は中止になり、ホモロゲーション取得には至らなかった。サイズは全長4280mm、全幅1730mm、全高1315mm、ホイールベース2435mm。両重量960kg。1997cc直列4気筒SOHC ECIインタークーラーターボ350psエンジン+5速MTを積むフルタイム4WD。サスペンションは前後ともシングルウイッシュボーン+ストラット+コイルスプリングの独立懸架。プロペラシャフト、サスペンションロアアーム、アンダーガードにはCFRP(Carbon-fibre reinforced plastic)、エンジンフード、エアダム、フロントフェンダー、トランクリッド、スポイラーにはFRPを採用。ステアリングシステムはラック&ピニオン式に変更されていた。タイヤとホイールは225/600R-15、9JJ×15。

<モーターショーで配布されたカタログを紹介する>

<モーターショーで配布されたプレスフォトの一部を紹介する>

 最後に「スタリオン(STARION)」のネーミングは、星=STARとギリシャ神話の英雄ヘラクレスの名馬アリオン=ARIONを組み合わせた造語で、星のもとを天駆ける名馬のイメージを象徴したものである。

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