第146回 ダッジ・ステルス(三菱GTOのOEM車)

2024年11月27日

 三菱GTOは米国のクライスラー社にOEM出荷され、1991年から1996年にかけてダッジ・ステルス(Dodge Stealth)の名前で販売された。今回はステルスについて紹介する。

1990年 オートショー・プレスキットから

この写真のキャプションには「ダッジのコンセプトが現実のものに—1988年のオートショーシーズンに「明日のダッジ」として発表されたコンセプトカー、イントレピッド(Intrepid)(上段の写真)は、1990年秋にショールームに登場する1991年型ダッジ・ステルス(下段の写真)のデザインにインスピレーションを与えた。」とある。

 また、広報資料には「アドバンス・デザインの短期的な側面は、将来の量産車に向けた方向性を定義し、紹介することである。これらのデザインは、コンセプトカーを通じて、全国の自動車ショーで数百万人の人々の目に触れることもあります。これにより、クライスラーは購入者の考えを知ることができ、消費者は新しいコンセプトに備えることができます。

  ダッジ・イントレピッドは、そのようなプロジェクトの1つでした。ここでは、デザインチームは、高性能スポーツカーの興奮、パワー、活気あふれる楽しさを表現することに取り組みました。その流線型のフォルムとドラマチックな形状により、イントレピッドは完璧にこのイメージを体現しています。1988年の自動車ショーでの熱狂的な歓迎は、その成功を証明した。」とある。

 イントレピッドはクライスラー社が1980年代後半にカリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad)に設立した、アドバンス・デザイン・スタジオでデザインされたが、「現代の切迫した要求の多くから離れることは、創造的なプロセスにとって重要です。そして、トレンドを生み出し、新しいアイデアにオープンなことで知られるカリフォルニアほど、そのための場所としてふさわしい場所があるでしょうか。」とも記されている。

 ちなみに、カリフォルニアにアドバンス・デザインの拠点を開設したのは、米国の自動車メーカーではクライスラーが最も早く、1990年には、米国で大きな売上を上げていた大手自動車メーカーの多くはカリフォルニアにデザイン拠点を構えていた。

 しかし、2008年3月、クライスラーはカリフォルニアのアドバンス・デザイン・スタジオを閉鎖すると発表。ステートメントには「世界的なリソースを活用し、新たな合弁事業や提携関係を構築し、業務を統合することで、よりグローバルなバランスを実現し、固定費を管理できるよう努めています。これらの動きは、クライスラーがよりグローバルな視点を持つメーカーとなることを目的としており、デザイン、エンジニアリング、調達、そして現地のお客様への対応を現地で行うことを目指しています。」とあった。当時プライベート・エクイティ企業であるサーベラス・キャピタル・マネジメントが所有するクライスラーは、ミシガン州オーバーンヒルズの本社にある既存のスタジオにアドバンス・デザイン業務を統合すると発表した。

1991年型ダッジ・パフォーマンスカー総合カタログ

上の2点は、カタログ表紙と最上級グレードのStealth R/T Turbo。R/T TurboとR/Tの外観は三菱GTOとはかなり異なる。

グレードバリエーションは、ベースグレードのStealthには3.0L V6 SOHC 12valve 164hp+5速MT(オプションで4速AT)、Stealth ES/RTには3.0L V6 DOHC 24valve 222hp+5速MT(オプションで4速AT)、Stealth R/T Turboには3.0L V6 SOHC 12valve 164hp+5速MT(オプションで4速AT)、3.0L V6 DOHC 24valve twin intercooled, twin turbo 300hp+ゲトラグ社製5速MTが設定されていた。Stealth R/T Turboはフルタイム4WD、4WS(4輪操舵)、ECS(電子制御サスペンション)を装備するが、ほかのグレードはFF(前輪駆動)駆動であった。Stealth R/TにはECSは装備されていた。

1991 DODGE STEALTH R/T TURBO 「手頃な価格のフェラーリ348だと思ってください。」と、モータートレンド誌のコメントが載る。

1991年 オートショー・プレスキットから

上の2点はStealth R/T Turbo。三菱3000GTとは、リアのデザイン、テールフィン、サイドクラッディングなどのデザインが異なるのがよく分かる。

Stealth ES。FF駆動で3.0L V6 DOHC 24valve 222hpを積む。R/Tシリーズとはリアのデザインが全く異なる。

Stealth R/T Turbo の運転席。1991年式ダッジ・ステルスで目を引く特徴は運転席です。ドライバー重視の操作系により、ピュアスポーツカーとしてのイメージがさらに高められており、さらに、運転席のエアバッグは、4グレードすべてに標準装備されている。

1991年インディ500ペースカーのカタログ

1991年のインディ500レースではダッジ・ステルスがペースカーとして使用される予定であったが、この決定には多くの論争が巻き起こった。ダッジにはダッジ・バイパー(Dodge Viper)など他にも素晴らしいクルマがあるのに、日本製のクルマが検討されていることに多くの人が憤慨した。結局、ダッジ・バイパーが使用されることとなった。しかし、バイパーの生産開始予定は1992年1月であったため、レースの優勝者にはバイパーの代わりにステルスが贈呈されている。

 ダッジ・バイパーは1989年の北米国際自動車ショー(デトロイト・ショー)にVM-01 Conceptとして登場。コンセプトカーVM-02を経て、1992年に発売された。非常に好評であったため、当時のリー・アイアコッカ会長が量産化を決断、3代にわたり、2017年まで販売された。アルミブロックの8リッターV10 OHV 400hp/62.2kg-mエンジン+5速MTを積む。ペースカーのステアリングを握ったのはキャロル・シェルビー。

残念ながらオフィシャル・ペースカーになれなかったStealth R/T Turbo。ボディーサイドには「OFFICIAL CAR」とある。

諦めきれないディーラーはステルスのオフィシャル・ペースカーレプリカ版を販売した。

1992年型ダッジ・パフォーマンスカー総合カタログ

Stealth R/T Turbo。R/T TurboとR/Tのポップアップ式ヘッドランプカバーは黒のアクリルが装着されている。サイドクラッディングの形状も三菱3000GTとは異なる。

写真のクルマはStealth R/Tで、Stealth R/T Turboとともに三菱3000GTとは全く異なるリアデザインとリアスポイラーを採用している。右下にある4WS(四輪操舵)はターボモデルのみに採用されていた。

左上はStealth ES、右下はベースグレードのStealth。ベースグレードのStealthにはサイドクラッディングは付かない。リアのデザインは上位グレード2モデルとは異なり、三菱3000GTに近い。リアスポイラーのオプション設定はない。左下にあるABSはセキュリティアラーム、パワードアロックとのパッケージでオプション設定されている。

Stealth R/T Turboのインパネ。速度計のフルスケールは160mph(257.5km/h)。

Stealth R/T Turboの透視図。

ステルスのグレードバリエーション。このほかに、Stealth R/T Turboと同じボディーでESと同じホイールのFF、222hpのStealth R/Tが加わる。

1993年型ダッジ・パフォーマンスカー総合カタログ

1993年型ダッジ・パフォーマンスカー。向かって左からバイパーRT/10、ステルス、デイトナ、シャドー ES、スピリット ES。ステルスには「エキゾチックなスタイル、高度なエンジニアリング、スーパーカー並みの性能を備えた4モデルが、ポルシェやコルベットよりも数千ドルも安い価格で提供されています。」とある。

 そして、クルマの性能評価の仕方も変化しており、それに対応するため10億ドルをかけてテクノロジー・センターを新設したと訴求している。

 「新しいパフォーマンス評価の方法

 普通の自動車と「高性能車」の違いは何でしょうか? かつては、単にエンジンが大きく、足回りがしっかりしていて、直線加速が速いというだけの問題でした。通常、0-60マイル/時または0-400メートルでのタイムで測定されます。今日、パフォーマンスは単純かつ直接的なものではありません。それは繊細かつ洗練された、あらゆる要素を包括するものです。コーナリング、ブレーキング、ドライバビリティ、ダイナミックバランスが重要です。人間工学と空気力学も重要です。

 性能は依然としてテストコースで測定することができ、おそらくそれは常に究極のテストとなるでしょう。しかし、性能はますますコンピューターの画面上や研究施設の管理された環境で測定されるようになっています。それは、今日の自動車には、エンジン、トランスミッション、サスペンション、ステアリング、ブレーキなどの重要な自動車システムの動作を微調整するように設計された、高度な電子モニター、センサー、制御装置が搭載されているためです。

 だからこそ、クライスラー社は10億ドルを投じて、世界で最新かつ最も先進的な自動車技術センターを設立したのです。クライスラー・テクノロジー・センター(CTC)は、あなたのような世界中のドライビング愛好家のために、ここに紹介するような性能重視の車を製造するために設計・建設されました。」

1993年型 Stealth R/T Turbo。1992年型と大きな違いはない。

1993年 プレスキットから

上の2点は1993年型 Stealth R/T Turbo。カタログでは見られない角度から撮られた写真。

1994年型ダッジ・ステルスのカタログ

上の2点は4WD、4WSを装備した最上級グレードのStealth R/T Turbo。前後のデザインが変わり、ヘッドランプはポップアップ式から固定のプロジェクター式に変更された。サイドクラッディングも変更され、ダミーの空気取り入れ口は廃止されている。R/T Turboのエンジンは300hp/6000rpm⇒320hp/6000rpm、42.5kg-m/2500rpm⇒43.5kg-m/2500rpmに強化された。タイヤはP245/45ZR17。クロームホイールとクロームセンターキャップはオプション。

ノンターボエンジン(222hp)、FF駆動のStealth R/Tラインには、ABS、電子制御サスペンション、リアスポイラー、エアコン、パワーシート、パワーウインドーなどを装備したStealth R/T(Luxury Equipment)と、それらを装備しないStealth R/Tの2グレードが設定された。外観はR/T Turboと同じ。タイヤはP225/55VR16。

SOHC 12バルブエンジン(164hp)、FF駆動のベーシックグレードStealth。前後のデザインはR/Tラインと異なる。ヘッドランプはポップアップ式から固定のプロジェクター式に変更され、サイドクラッディングは付かない。リアスポイラーはパッケージ・オプションで装着可能であった。タイヤはP205/65HR15を履く。1994年型ではStealthとStealth R/Tの中間グレードであったStealth ESはカタログから落とされた。

Stealth R/T Turboの運転席。「これほど多くのテクノロジーをこれほど安価に利用できることは、これまでありませんでした。」との「Motor Trend」市のコメントが載る。速度計のフルスケールは160mph(257.5km/h)⇒180mph(290km/h)に引き上げられた。

1995年型ダッジ・ステルスのカタログ

 1995年型ではStealth R/T(Luxury Equipment)がカタログから落とされ、Stealth R/T Turbo、Stealth R/T、Stealthの3種類のグレードに絞られた。スペック上は1994年型と大差ない。

最上級グレードのStealth R/T Turbo。タイヤはP245/45ZR17が標準装備され、オプションで18インチの245/40ZR18が設定された。写真のクロームメッキ・アルミホイールはオプションであった。

これはFF駆動のStealth R/T。

左頁はStealth R/T Turboの運転席。右頁はベースグレードのStealth。前後のデザインはR/Tラインとは異なり、サイドクラッディングも付かない。

1996年型ダッジ・ステルスのカタログ

ステルスの最終カタログで、3グレードがラインアップされており、スペックも1995年型と大差ない。

これで3回にわたった三菱GTOとその兄弟車三菱3000GTおよびダッジ・ステルスの紹介を終わります。

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