第144回 三菱GTO

2024年9月27日

 1990年は、5月のディアマンテ、11月のシグマ発売によって、三菱のクルマに関する話題が豊富な年であったが、その話題性にさらに花を添えたのが1990年10月に発売されたGTOであった。

 同じ年の9月(北米では7月に先行発売)には、本田技研工業からもアルミボディーをまとった高性能スポーツカーNSXが発売され、スポーツカーに対する関心が高まるなかでの発売であった。

 過去3回にわたって紹介したスタリオンの販売によって、三菱のスポーティーカーに対する評価は高くなっていたが、三菱自動車とクライスラー社が1985年10月に折半出資で設立した現地生産会社、ダイヤモンド・スター・モーターズ社(Diamond-Star Motors Corp.)で、米国スポーツカー市場の実態にも肌身で触れながら、クライスラー社と共同で生み出したエクリプス(Eclipse)の開発を通して、三菱のスポーツカーに対する開発力はさらにレベルアップされたという。その開発力を縦横に駆使して、スタリオンを超える新時代のスーパー4WDスポーツカーとして34年前に誕生したのが三菱GTO(海外向けは3000GT、クライスラー社ではDodge Stealth)であった。

 1990年10月25日、赤坂プリンスホテルでの発表会は約850名の報道陣が来場する盛会で、米国でも、1989年のギャランに続き「’91インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得している。今回はGTOのカタログをファイルから引き出して紹介する。

1989年10月、第28回東京モーターショーに登場した三菱HSX

 同じショーに出展された、三菱の先行開発走行実験車HSR-Ⅱが実現した、高性能な走りを、より生産モデルに近い形で具現化した、三菱のシンボリックな本格スポーツカーで、1年後に発売されたGTOの先行試作的なモデルであった。

6G72型3.0L V6 DOHC ツインターボ・ツインインタークーラーエンジンをはじめ、アクティブ4(4バルブ、4WD、4WS、4IS、4ABS)を装備した新時代のスポーツカーであった。リアフェンダー上部からテールフィンのごとく立ち上がりリアスポイラーへとつながる造形は量産型GTOとは異なる。2シーター、タルガトップルーフを採用している点もGTOとは異なっていた。

HSXの内装は白で統一されており、GTOの黒とは対照的な演出であった。

アクティブ・エアロ・システムの可動式フロントスポイラーと可動式リアスポイラー。6G72型3.0L V6 DOHC ツインターボ・ツインインタークーラーエンジン。テストコースの高速周回路を疾走するHSR-ⅡとHSX。

1990年10月に発行されたGTO最初のカタログ

上の4点は、カタログ表紙とGTO TWIN TURBOモデル。エンジンは新開発の6G72型2972cc DOHC 24バルブ V型6気筒ツインターボ・ツインインタークーラー280ps/6000rpm(net)、42.5kg-m/2500rpm+ドイツのゲトラグ(Getrag)社製5速MTを積む。80km/h以上の高速時にフロントベンチュリーカバーとリアスポイラーが自動的に作動する「アクティブ・エアロ・システム」、2500rpm以下で排気ガスのマフラーへの流入経路を切り換えられる「アクティブ・エキゾースト・システム」などが装備された。

もう一つのグレードGTOには、デボネアVで実績のある6G72型2972cc DOHC 24バルブ V型6気筒NA(自然吸気)仕様の225ps/6000rpm、28.0kg-m/4500rpmエンジン+5速MTまたは4速ATを積む。

サイズは全長4555mm、全幅1840mm、全高1285mm、ホイールベース2470mm、車両重量1640~1700kg。価格333.5~398.5万円。

光物は一切無く、マットブラックでまとめられたGTO TWIN TURBOの運転席。フルスケール180km/hの速度計とフルスケール9000rpmのタコメーターが並ぶ。輸出仕様にはフルスケール180mile/h(290km/h)の速度計がつく。前席の本皮シート、オーディオはメーカーオプション。

GTO TWIN TURBOの構造図。サスペンションはディアマンテのものに近く、前輪がマクファーソンストラット、後輪はダブルウイッシュボーン。そして、運転の楽しさと高度な安全性を両立させる三菱独自の「オール・ホイール・コントロール理念」を具現化するため、フルタイム4WD、4IS(4輪独立懸架)、4WS(4輪操舵)、ECS(電子制御サスペンション)、4ABS等を装備。安全性については、SRSエアバッグを全車に装備し、高剛性ボディー、衝撃吸収バンパー、4ピストンキャリパー付きディスクブレーキなど、あらゆる角度からの配慮がなされていた。タイヤサイズは225/55R16 93V。1992年1月のマイナーチェンジで、国内初の17インチタイヤ、225/50R17 94Vに変更されている。

1993年1月に登場したスペシャルエディションGTO-MR

GTO TWIN TURBOとGTO(AT仕様)をベースに、ヨーロピアン・チューンド・サスペンション、ブレーキクーリングエアガイド、BBS社製アルミ鍛造ホイール(17×7.5JJ)、専用ボディー色(コルスグレー)、専用シート生地、CDオートチェンジャーを装備し、GTOには装備されていなかった電子制御サスペンション(ECS)、VCU式リアリミテッドスリップデフ、アクティブ・エアロ・システム、ダイヤトーンハイグレードオーディオ(6スピーカー)を標準装備する。全国限定300台が販売された。

1993年8月、マイナーチェンジされたGTO

 マイナーチェンジでは、走りの躍動感を象徴する精悍なフロントマスクと、プロジェクター式エアロヘッドランプを採用。力強いボディーサイドのZラインと、シンプルなフォルムで形づくるサイドエアダム。全身のエアロダイナミクスをより進化させ、アグレッシブな印象で見る人の心をつかむ新しいスタイリングが採用された。

これはGTO TWIN TURBOモデル。エンジンは6G72型ツインターボ・ツインインタークーラー280ps/43.5kg-m(トルクはこの時点で1.0kg-mアップした)、そして、ドイツのゲトラグ社製トランスミッション(トランスアクスルだがカタログ表記に合わせる)は5速MTから6速MTに換装された。タイヤは235/45ZR17 ADVAN HFタイプGを履く。

これはGTOモデルで、6G72型NA(自然吸気)仕様の225ps/28.0kg-mエンジン+5速MTまたは4速ATを積む。タイヤは225/50R17 94V ADVAN HFタイプFを履く。

GTOツインターボの運転席。6速トランスミッションを強く訴求している。

GTOツインターボの透視図。駆動系、サスペンションの配置がよく分かる。「オール・ホイール・コントロールbyフルタイム4WD・4IS・ECS・4WS・4ABS」とある。

1994年8月、GTO TWIN TURBO MR追加設定

走行性能を高めるための精緻な仕掛けを取り除いて軽量化を図り、よりスポーティーなサスペンションで、スポーツカーとしてのポテンシャルに磨きをかけたのがTWIN TURBO MRであった。エンジンは6G72型ツインターボ・ツインインタークーラー280ps/43.5kg-m、トランスミッションはドイツのゲトラグ社製6速MTを積むが、TWIN TURBOモデルとの違いは、スポーツチューンドサスペンション、BBS社製アルミホイール、ブレーキクーリングエアガイドを装備。アクティブ・エアロ・システム、アクティブ・エキゾースト・システム、4輪操舵(4WS)、フォグランプ、オートクルーズコントロール、電波式キーレスエントリーシステム、ダイヤトーンハイグレードオーディオなどは外され、4ABSはオプションに、本革シートはオプションから外されている。車両重量はTWIN TURBOモデルより30kg軽い1680kg。

1995年8月、GTOグレード廃止、GTO SR登場

これは新設されたGTO SR。グレードはGTO TWIN TURBO、GTO TWIN TURBO MRおよびGTO SRの3種類となった。GTO SRは6G72型NA(自然吸気)仕様の225ps/28.0kg-mエンジン+5速MTまたは4速ATを積む。廃止されたGTOと比較すると、4WS、電波式キーレスエントリーシステム、オートクルーズコントロールが外され、4ABS、フォグランプ、AM/FM電子同調ラジオ&カセット、助手席側SRSエアバッグシステムなどが標準装備からオプションに変更されている。

1997年8月、マイナーチェンジされたGTO

 フロント部分のデザインが変更され、ステアリングホイール、リアスポイラーの形状なども変更されている。

上の3点は表紙とGTO TWIN TURBO。6G72型ツインターボ・ツインインタークーラー280ps/43.5kg-mエンジン+ゲトラグ社製6速MTを積む。245/40ZR18タイヤ+18×8.0JJ アルミホイールを履く。

これはGTO TWIN TURBO MR。ABSはオプションから標準装備になったが、BBS社製アルミホイールは廃止された。6G72型ツインターボ・ツインインタークーラー280ps/43.5kg-mエンジン+ゲトラグ社製6速MTを積む。245/40ZR18タイヤ+18×8.0JJ アルミホイールを履く。

上の2点はGTO SR。6G72型NA(自然吸気)仕様の225ps/28.0kg-mエンジン+5速MTまたは4速ATを積む。助手席側SRSエアバッグシステムがオプションから標準装備に戻された。225/50R17 94Vタイヤ+17×7.5JJホイールを履く。

1998年8月25日、マイナーチェンジされ発売されたGTOの最終モデル

上の4点は、最高グレードのGTO TWIN TURBO。前後のデザインが変更され、TWIN TURBOモデルにはウイングタイプの大型リアスポイラーが装備された。スペックに大きな変更はないが、アクティブ・エキゾースト・システムは廃止された。

GTOのラインアップ。左からGTO TWIN TURBO、GTO TWIN TURBO MR、GTO SR。

1998年8月発行のアクセサリーカタログに載ったナビゲーションシステム

ナビシステムがオプション設定されたのはこの時が初めてと思うが、現代のカーナビとは異なり、機能的にも使い勝手も、満足できるものではなかったであろうと推察する。筆者はカーナビは苦手で、今でもほとんど活用していない。

次回は輸出仕様の3000GTについて紹介する予定。

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