今回は、前回に引き続き三菱スタリオンの続きを紹介する。
スタリオン発売後は、三菱の高性能イメージリーダーカーとして性能の向上に力を入れ、1983年6月には、175馬力の空冷式インタークーラー付きターボ車、1984年6月には、200馬力のシリウスダッシュエンジン搭載車など、三菱の最先端技術を投入した車種を追加している。また、高速性能に重点をおいたことによって、当初から特別高性能タイヤをオプション設定するなどタイヤの選定にも配慮し、急速に進んだタイヤの扁平化にも真っ先に対応している。
発売後は、米国でまず比較的好調に推移し、月販1500台を記録するようになった。そこで国内販売にも弾みをつけるべく、1987年2月、米国仕様のブリスターフェンダーを持つワイドボディー車、続いて1988年4月には2.6リッターエンジン車を国内でも発売している。
三菱初の200km/h走行に挑戦したスタリオンは、その後の乗用車の高速化時代に対応する多くの技術的課題の解決にも大きく貢献した。
◆1984年9月に発行されたスタリオンのカタログ
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上の4点は、1984年6月に発売された、200馬力のシリウスダッシュ(SIRIUS DASH)エンジンを搭載したスタリオンGSR-V。トランスミッションは5速MTを積む。インスト周りとステアリングホイールが変更されている。タイヤは215/60R15-90Hで、GSR-VにはピレリP6が標準装備された。
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G63B型SIRIUS DASH 3×2インタークーラー・ECIターボ、1997cc直列4気筒SOHC 200ps/6000rpm、28.5kg-m/3500rpmエンジン。DASHはDual Action Super Headを省略したもので、3×2は3本のバルブを2ステージで作動させるということ。1本の排気用バルブと、小径のプライマリーバルブ(低速用)と大径のセカンダリーバルブ(高速用)と称する2本の吸気用バルブを備え、エンジン回転数が低い間、セカンダリーバルブは弁制御機構により閉じたままの状態で、低速用プライマリーバルブのみが作動。この時点では吸入混合気の乱流が強化され、タイミングも低速用に設定。力強い低速トルクと優れた燃費を実現している。そして中・高回転域に入ると高速用セカンダリーバルブの作動が始まり、吸入空気は2本のバルブにより大幅に増大し、200馬力という大出力を発生する。回転数に応じた複雑なバルブの動き方をコントロールする高度なエレクトロニクス技術を取り入れたこの仕掛けは世界初と言われる。
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グレードGSR-Ⅲには液晶式電子メーターが標準装備されていた。
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車種構成は200馬力の「2000ターボGSR-V」のほかに、G63B型175馬力インタークーラー・ターボエンジンを積んだ「2000ターボGSR-Ⅲ」と「2000ターボGSR-Ⅱ」の5速MT車と4速AT車がラインアップされていた。-
◆1985年8月に発行されたスタリオンのカタログ
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上の3点は表紙と200馬力(グロス)エンジンを積むGSR-V。
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175馬力(グロス)エンジンを積むGSR-Ⅲ。ステアリングホイールがほかのグレードとは異なるものが採用された。
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175馬力(グロス)エンジンを積むGSR-Ⅱ。
◆1987年2月に発行されたスタリオンのカタログ
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上の3点は表紙とGSR-V。GSR-Vに積まれたDASH 3×2インタークーラー・ECIターボエンジンの出力表示のみ、グロス値200馬力からネット値170ps/5800rpm、26.0kg-m/3000rpmに変更された。
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GSR-ⅢとGSR-Ⅱのエンジン出力は175馬力(グロス)のままであった。
◆1987年2月に発行されたスタリオンGSR-VRのカタログ
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1987年型から輸出仕様がブリスターフェンダーを付けたモデルに変更され、1987年2月に国内でもスタリオンGSR-VRとして発売された。G63B型1997cc直列4気筒SOHC DASH 3×2インタークーラー・ECIターボ 170ps/5800rpm、26.0kg-m/3000rpm(ネット)エンジン+5速MTを積む。ハードサスペンション、8段階調節式ショックアブソーバー、リミテッドスリップデフ、アルミホイール、215/60R15 90H ADVANタイヤなどを標準装備。サイズは全長4410mm、全幅1745mm、全高1320mm、ホイールベース2435mm、トレッド前/後1465/1425mm、車両重量1240kg。価格は262.5万円であった。
◆1987年7月に日本で発行されたスタリオンの英語/仏語併記版カタログ
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車名は「MITSUBISHI STARION 2000 Turbo EX」。ブリスターフェンダーを持ち、1997cc直列4気筒SOHC ECIターボ150ps/5500rpm、23.5kg-m/3000rpm(DINネット)エンジン+5速MTを積む。最高速度195km/h。タイヤはフロントが205/55VR16、リアは225/50VR16。LSD(リミテドスリップデフ)、ABS(アンチスキッドブレーキシステム)、クルーズコントロール、レザーシート、ブロンズグラス、サンルーフ、ヘッドランプウォッシャー、エアロフルホイールカバー(表紙のクルマが装着している)などはオプションであった。
◆Mitsubishi Motor Sales of America, Inc.で発行された1988年型スタリオンのカタログ
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上の3点は表紙とハイグレードのスタリオンESI-R。G54B型2555cc直列4気筒SOHC ECIインタークーラーターボ188hp/5000rpm、32.4kg-m/2500rpmエンジン+5速MTを積む。ESI-Rにはオプションで4速AT、本革シートと内装、サンルーフなども選択可能であった。ホイールとタイヤはフロントが16×7Jアロイ+205/55VR16、リアは16×8Jアロイ+225/60R16を標準装備するが、オプションの「スポーツ/ハンドリングパッケージ」を選択するとフロントが16×8Jアロイ+225/50VR16、リアは16×9Jアロイ+245/45R16、に加えて8段階調節式ショックアブソーバー、エアロスタイルホイールインサート(2点目のクルマが装着)が得られた。
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SCCA(Sports Car Club of America)の耐久レースで疾走するスタリオンESI-R。右ページにはインタークーラーとターボチャージャー、そして標準タイヤとオプションタイヤについての解説が載る。この年、チーム三菱は3台のスタリオンで参戦したとある。
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これはベースグレードのスタリオンESI。G54B型188馬力エンジン+5速MTを積み、ATをはじめ、本革シートと内装、サンルーフ、スポーツ/ハンドリングパッケージなどのオプション設定は無かった。
◆1989年7月に発行されたスタリオンGSR-VR(2.6L)のカタログ
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スタリオンの最終モデルで、G54B型2555cc直列4気筒SOHC ECIインタークーラーターボ175ps/5000rpm、32.0kg-m/3000rpm(ネット)エンジン+5速MTまたは4速ATを積む。タイヤはADVAN HF-Dで、フロントが205/55R16 88V、リアは225/50R16 92V。
◆1989年4月、テレビドラマに登場したガルウイングドア付きスタリオン
1989年から1990年にかけてテレビ朝日で放送された石原プロモーション制作のドラマ「ゴリラ 警視庁捜査第8班」に、三菱自動車特装部と石原プロのスタッフが総力を結集して造ったガルウイングドア付きスタリオンが登場した。スタリオン2600 GSR-VRをベースに、通信管制システム、早期警戒システム、武器管制システムなど多くの特別な仕掛けが加えられていた。
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ドラマに登場した三菱車。向かって左からデボネアV 3000 ロイヤルAMG、ギャラン2.0 DOHC TURBO VR-4、スタリオン 2600 GSR-VR、ミラージュ サイボーグ DOHC 16V-T、パジェロ メタルトップ V6 3000スーパーXL。
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ゴリラバージョンのスタリオンガルウイングが5台限定で、東京地区ギャラン店、パープラザ店のみで予約販売された。申込受付期間は1989年8月21日~9月30日。納車は締め切り後約4カ月後。ベース車はスタリオン 2600 GSR-VRだが、大きく異なる点は定員が5名⇒2名、車両重量は1320kg⇒1550kg、室内長は1590mm⇒970mmになり、ドア開閉方式が電動油圧式に、ドアロックは電磁式となる。ドアの開閉時間は4~4.5秒であった。装備に関してはオリジナル車に装着されたいろいろな仕掛けは無く、市販車と同様の一般装備のままであった。
次回は米国クライスラー社で「コンクエスト【Conquest:征服】」の名前で販売されたスタリオンについて紹介する予定。