黎明期におけるクルマのバリエーションは、例えば「セダン」「クーペ」「ワゴン」「バン」「ピックアップ」「トラック」のように、単一シャシーからさまざまなバリエーション展開がされてきた。1950年代には国産車もシャシーがボディと一体化されたモノコック構造が普及し始め、その後はモデル開発が「社内機密」という観点から、自社で開発がなされるようになる。
ミニバンが台頭してきた2000年代から、同一ベースのシャシーを使って、数多くのバリエーションモデルを生み出すことがあたりまえとなってきた。2002年9月にホンダはモビリオベースのモビリオ スパイクを生み出し、開発テーマとして荷室空間(CARGO)=“自分流にとことん使える空間”、スタイリング(STYLING)=“愛着を感じさせるこだわりのあるカタチ”、居住空間(CABIN)=“一人でも仲間とでも楽しく過ごす、とっておきの場所の創造の要件”を、センタータンクレイアウトを採用したグローバル・スモールプラットフォームにより具現化。ボックス型デザインはトヨタbB、日産キューブ、ホンダモビリオなど、流行の一部を占めてゆく。
2003年1月に国内市場にトヨタが新規投入したミニバン、ウィッシュは、5ナンバーサイズだがミニバンとしては低めの全高(1590mm、FF車)でスポーティな雰囲気を備えることが特徴。後席ドアは前ヒンジ式。シートは3列配置の6名または7名乗りであり、セカンド・サードシートは分割可倒式、用途に応じてフラットで広いラゲージスペースや多人数乗車が使い分けられるように工夫されていた。当初、エンジンは132PSを発揮する1.8リッターのみだったが、2003年4月に155PSを発揮する2.0リッターを加えた。駆動方式はFFとアクティブトルクコントロール4WDで、トランスミッションは2.0リッターのFFモデルにはCVTを、1.8リッターのFFと4WDには4ATを用いた。サスペンションは全車の前輪はストラット、後輪は2.0Zと4WDがダブルウィッシュボーン、その他はトーションビーム式を採用していた。
2003年9月には“コンパクトでありながら実用性の高い3列シート車”を目標に開発した日産キューブ3(キュービック)が登場。特徴は3列シートを採用したパッケージで、コンパクトでありながら、セカンド+サードシートのニールーム&ヘッドルームは、必要な時は大人が十分乗れるスペースを確保し、大きなリヤドア開口と簡単・軽快なシート操作の組み合わせで、2列目・3列目への乗降性に配慮。また、小回りの利く4.7mの最小回転半径は、街中での快適な運転に貢献していた。
2003年5月に三菱は“ライフスタイルをより豊かにする次世代ミニバン”としたグランディスを発売。3ナンバー3列シートの次世代ミニバンで“お客様のライフスタイルをより豊かに流れるような「スポーティ&エレガンス」な造形を基調に、「ジャパニーズ・モダン」な美しさを随所に表現する次世代ミニバン”とした。発売から2週間で月間販売目標上回る2倍を超える7,187台を受注したと発表された。ダイムラークライスラーが三菱自動車の経営権を引き継いだ後、2代目スバル レガシイやマイバッハのデザイナー担当だったオリヴィエ・ブーレイは2001年5月に三菱自動車の設計室長に任命され、グランディスもデザインして知られた。
2003年9月にはコンパクトサイズのミニバン、トヨタ シエンタがカローラ店ならびにネッツト店から発売。全長4.1mのコンパクトなボディサイズながら、3列シートを備えて7名乗車が可能。後席用には両側スライドドアを採用し、一部グレードにイージークローザー付パワードアを設定(左側)。サードシートはヘッドレストを付けたままの格納が可能で、状況に応じたラッゲージスペースを得られた。4WD車ではスペアタイヤの代わりにパンク修理キットを標準装備し、サードシートの乗員空間を確保する工夫がされていた。
2003年10月に3代目ホンダ・オデッセイが登場。「ミニバン・イノベーション」をコンセプトに「速い(低重心化による乗り心地とハンドリング)」、「美しい(低全高の流麗なフォルム)」、「広い(低床化による前モデルを上回る室内高)」を高次元で融合する……次世代ミニバンとして開発。立体駐車場にも入庫可能な低全高フォルムとしながら、3列7人に十分な居住性、ユーティリティがアピールされた。
同じ2003年10月、マツダMPVの大幅改良が実施され、エクステリアについてスポーティとノーマルの2つのデザインを採用。インテリアは、シート表皮やインパネ/トリムの加飾パネル類を全面変更し、スポーティかつ上質なものとした。さらに2列目シートスライド機構の充実により快適性をより高めた。さらに高効率な新4ATの搭載でクラストップレベルの燃費を達成し、超―低排出ガス認定(U-LEV)に対応し、グリーン税制にも適合させ、多様化する競合車に勝る存在感をアピールするとともに、購入者の選択肢をさらに広げたとしていた。2004年9月に盗難防止効果が高いイモビライザーや、携帯性に優れ品質感のあるリトラクタブルタイプキーの全車標準装備、17インチタイヤ&アルミホイールなども上級車に採用してゆく。
ミニバンもデザインから安全対策および販売面まで、各社が他社動向をみつつ企画設計する行為が過敏になりつつあった。