先月はお休みしたが、今回は2024年4月12日から14日の3日間、幕張メッセで開催された「Automobile Council 2024」を取材したので、一部を紹介する。
◆故マルチェッロ・ガンディーニ追悼展「In Memory of Marcello Gandini」
2024年3月13日に永眠した伝説のカーデザイナー、マルチェッロ・ガンディーニ(イタリア、享年85歳)の生前の功績をたたえ、深く記憶に残すため、「Designed by Gandini」をテーマに据えた主催者展示が急遽行われた。
マルチェッロ・ガンディーニの傑作と言われる中から、1970年ランボルギーニ・エスパーダ・シリーズⅡ、1968年ランボルギーニ・ミウラ P400、1975年ランボルギーニ・カウンタック LP400、1975年ランチア・ストラトスHF ストラダーレ、1974年ディーノ308gt4の5台が展示された。
ディーノ308gt4。ディーノV6に代わって開発され、3L V8をミッドシップするにもかかわらず、4シーターに仕上げられ、ウエストラインが前傾して、全体として見ればウエッジシェイプだが、扁平かつ水平なルーフを持つ。カタログで詳細を紹介する。
チューブラーフレームのクーペ2+2ボディー。サイズは全長4300mm、全幅1800mm、全高1180mm、ホイールベース2550mm、トレッド前後とも1460mm。車両重量1150kg。4輪独立懸架。5速MT+ノンスリップディファレンシャル。ラック&ピニオンステアリング。4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ。2個のライトアロイフュエルタンク容量は80L。タイヤは205/70 VR 14 X、Pirelli P7はオプション。燃費は5~5.6km/L。
エンジンは2926cc V型8気筒4OHC 4 twin choke Weber 40 DCNF、255hp/7700rpm(U.S. バージョンは215hp/6600rpm SAE net)を積む。下段右頁以降の写真はU.S. バージョン。
◆特別展示「American Heritage」の名車たち
広報資料には「オイルショック以前、世界のモータリゼーションをリードしていたのはまぎれもなくアメリカ車でした。先進の装備、パワフルなエンジンに加え、その独特なデザインは欧州や日本のメーカーに多くの影響を与えました。そんな古き良きアメリカ車の持つ独特な魅力を再確認できる企画です。AUTOMOBILE COUNCIL9回目にして、”アメ車“ファンからの要望に応え、初めて大々的にアメリカ車をフィーチャーします。」とある。筆者個人としてはアメ車が最も輝いていた1950年代のクルマも加えてほしかった。
右から、1983年型AMCイーグル・ワゴン、1967年型シボレー・カマロRS、1963年型シボレー・コルベット。
左から、1977年型AMCジープJ-10、1970年型ダッジ・チャレンジャーR/T440+6 コンバーティブル。
◆ロータリーエンジン(RE)を積んだコンセプトカー3台を持ち込んだマツダ
2023年10月に東京ビッグサイトで開催された「Japan Mobility Show 2023」で発表された、2ローターRotary-EVコンパクトスポーツカーコンセプト「MAZDA ICONIC SP」。
上の5点は、1970年の第17回東京モーターショーに出展された、2ローターREをリアミッドシップに積んだコンセプトカー「RX500」。
1970年の第17回東京モーターショーの会場で配布されたリーフレット。展示されたRX500は黄色であったが、リーフレットでは周りの緑が写りこんで淡いグリーンに見える。
リーフレットには「クルマが1,000万台を超えた昭和41年(1966年)。その年がマイカー元年と呼ばれたことも、まだ記憶に新しい言葉と言えます。以来、わが国のモータリゼーションは急速に発展し、今日ではクルマのない日常生活・社会生活は考えられなくなりました。」とある。
リーフレットの裏面には「70年代に車の主流はロータリー車に変わる!」とあるように、当時、ドイツのNSU社へのREに関する技術提携の申し込みは、世界各国から100社に及び、日本だけでも34社を数えたという。
しかし、1973年10月に第1次石油ショック(第4次中東戦争勃発に伴いアラブ諸国は石油戦略を発動、OAPEC〈アラブ石油輸出国機構〉が石油の減産・禁輸を行い、OPEC〈石油輸出国機構〉は原油価格を一挙に4倍に引き上げた)が発生すると、ほとんどの自動車メーカーが予定していたRE車の発売計画あるいは開発計画をキャンセルしてしまった。ガソリン価格の高騰と供給不安が、当時は燃費が悪かったREの息の根をとめてしまったのである。かくして大騒ぎしたあげくのはてに、市販されたRE車(4輪車)はマツダを除くと、短期間販売されたNSUとシトロエンだけであった。
石油ショックを受け、発生した直後の10月に、政府は日曜、祝日にマイカーの高速道路乗り入れ規制実施、11月には通産省がガソリンスタンドの日曜、休日休業を発表。さらにはモーターショーのあり方まで問われ、翌1974年の東京モーターショー開催中止が決定、以降は隔年開催となった。
「東洋工業はアイデアのない車はつくりません。それがパーソナリティーなのです。」半世紀以上昔のこのコピーは今のマツダにも通用する。ここに登場するRX500はブルーがかったシルバーのように見える。複数台製作したのか、印刷時のカラー調整なのか?
1999年に開催された第33回東京モーターショーで発表されたコンセプトカー「RX-EVOLV(エボルブ)」。新開発された280psのNA(自然吸気)ロータリーエンジン「RENESIS」を積み、まったく新しい4ドア4シータースポーツカーの世界を提案した。サイズは全長4285mm、全幅1760mm、全高1350mm、ホイールベース2720mm。
上の7点は、第33回東京モーターショーで配布されたプレスキットに挿入されていたRX-EVOLVの冊子。
◆アルビス・コンティニュエーション・モデル(継続生産車両)
毎回気になっているのがアルビスのブース。いまはやりの?コンティニュエーション・モデルだが、ジャガーは2014年にライトウエイトEタイプ、2017年にXKSS、2018年にDタイプ、そして2021年にはCタイプのコンティニュエーション・モデルを発売した。Dタイプは175万ポンド(3億3600万円)、Cタイプは150万ポンド(2億8800万円)。アストンマーチンDB5ゴールドフィンガー・コンティニュエーションは275万ポンド(5億2800万円)で25台販売された。
アルビス・コンティニュエーション・モデルは今回3台展示されたが、価格は6380万円~7200万円と破格な価格設定だと思う。日本での知名度は低いが、知る人ぞ知る上品な高級車アルビスを操るなど粋だと思うが。
上の3点は、アルビス4.3Lバンデンプラツアラーとそのシャシー。
上の2点はアルビス4.3Lコンティニュエーション・モデル・バンデンプラツアラーのカタログ。下段写真左頁のクルマは右が1937年製、左が2020年製。2020年製は現在の交通環境の中で安心して走れるよう、1937年製とは一部の仕様が変更されている。主な変更点は、SUトリプルキャブレター⇒アルビスオリジナル燃料噴射装置(エンジン最高出力137ps⇒160ps)、ポイント点火方式⇒アルビスオリジナルエンジンマネジメントシステム、4速フルシンクロMT⇒6速フルシンクロMT、ワイヤー式ドラムブレーキ⇒油圧式4輪ディスクブレーキ、ダイナモ⇒オルタネーターなど。価格は6380万円。
上の3点はアルビス3.0Lコンティニュエーション・モデル・グラバー・スーパークーペとカタログ。2993cc直列6気筒OHV 172ps/5000rpmエンジン+5速MTを積む。1台の製作に約2年を費やすという。価格は6600万円。
上の3点はアルビス3.0Lコンティニュエーション・モデル・グラバー・スーパーカブリオレとカタログ。価格は7200万円。
◆ブリストル研究所
Automobile Council 2024で一番のサプライズは、ロールス・ロイス、ベントレーで有名な涌井清春さんが設立した「ブリストル研究所」が持ち込んだすばらしいブリストル4台だ。
上の2点は、1946年のジュネーブショーで正式デビューした、ブリストル・カーズ最初のクルマ「Type 400」。自社開発であるが、ドイツのBMWが戦前に生産していた326/7/8モデルをお手本につくられ、「キドニーグリル」も頂戴している。
上の2点はType 400のカタログ。エンジンは85型1971cc直列6気筒OHV Solexデュアルポートダウンドラフト30 AAPI キャブレター75bhp/4200rpmが標準で、オプションとして85A型3連SUキャブ80bhp/4200rpm、85B型3連SUキャブ+ハイパーホーマンスカムシャフト85bhp/5000rpmが設定されていた。カタログには記載は無いが、ほかに85C型3連SUダウンドラフト32 B.1.キャブ85bhp/4500rpmもあった。トランスミッションは4速MTで2、3、4速はシンクロメッシュ付き、サスペンションはフロントが横置きリーフスプリングの独立懸架、リアはトーションバー+リジッドアクスル。ステアリングはラック&ピニオン、ブレーキは油圧式4輪ドラム。サイズは全長4648mm、全幅1626mm、全高1499mm、ホイールベース2896mm。
ブリストルの2作目「Type 401」。ボディーの基本設計はチューブラーフレームにアルミパネルを貼り付ける、イタリア・ミラノのカロッツェリア「ツーリング・スーパーレッジェーラ」。展示車は無塗装仕上げで、航空機メーカーであるブリストルならではの素晴らしい仕上げを見ることができた。基本スペックは400に近く、エンジンは85C型85bhp/4500rpmを積む。
1958年に登場した「Type 406」。ブリストルが高級車マーケット参入を目指したモデルで、装備も豪華なものとなった。110型2216cc直列6気筒OHV 105bhp/4700rpmエンジン+4速MT(4速はオーバードライブ)を積み、サイズは全長4978mm、全幅1727mm、全高1524mm、ホイールベース2896mm。ブレーキは初めて4輪ディスクが採用された。価格は前のモデルType 405の3188ポンドに対し、4493ポンドと1.4倍になっている。
1967年に登場した「Type 410」はクライスラー・カナダ製5211cc V型8気筒OHV 250bhp/4400rpm、47.0kg-m/2800rpmエンジン+クライスラー製トルク・フライト3速ATを積む。サスペンションはフロントがウイッシュボーン+コイルスプリング、リアはワッツリンク+トーションバースプリング、ステアリングはパワーアシスト付きリサーキュレーティングボールタイプ、ブレーキはガーリング製4輪ディスク。DunlopのスチールホイールにAvon Turbospeed 6.70×15タイヤを履く。サイズは全長4915mm、全幅1727mm、全高1499mm、ホイールベース2896mm。
上の4点は会場で配布されたブリストルの歴史を簡潔にまとめたリーフレット。最上段には涌井さんがブリストルをテーマに選んだいきさつが記されている。
1971年アルファロメオ・モントリオール。これもマルチェッロ・ガンディーニの作品。「In Memory of Marcello Gandini」とある。
早々と「売約済」となったアルファロメオ・ジュリアスプリントスペチアーレ。白が似合う。隣のイスレロには7000万円のプライスタグがついていた。
◆今年は34社のマルシェが出展し盛況であった。いくつかを載せる。精巧なブガッティ・ロワイヤルの シャシーは圧巻であった。最後に三樹書房/グランプリ出版のブースもお見逃しなきよう。