第21回 地球温暖化対策ハイブリッドミニバン登場

2023年11月27日

世界的に電気自動車の競争が激化しているが、そのはじまりは1997年、京都で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)にて、地球温暖化の原因となる二酸化炭素など、温室効果ガスの削減率を国別に定め、その達成を義務づけた……のがはじまりであろう。

それ以前の戦前戦後にも電気自動車などがあったが、それはガソリンの入手が難しい代然車の時代であり、環境とは無縁のものといえるだろう。昨今の自動車は、温室効果ガスの大きな発生源のひとつとされ、その排出量を減らすことができるか?討議研究されてきて、燃焼ガスのない電気自動車がこれまで以上に実用化されているのである。

トヨタ初のハイブリッド車構想は、初代クラウン開発を担当した主査が、カスタービンエンジンを活用するシステム開発に着手した1968年にさかのぼる。だが当時は動力の性能要求を満たすバッテリーの開発が追いつかず、1980年代初めに中断されたとされる。だが1993年に「21世紀のクルマ」に関する議論がトヨタ社内で高まり、「G21プロジェクト」として、画期的な燃費向上への取り組みがスタートしている。

そして1997年12月、ハイブリッドシステムを採用した世界初の量産車プリウス登場。動力源として専用設計のVVT-i、1.5リッターガソリンエンジンと電気モーターを備え、それぞれの駆動力を走行状況に応じて最適に組み合せるシステム採用。既存のガソリン車と同等の走行性能を保ち、約2倍の低燃費とCO2排出量半減などを実現した。2000年から輸出を開始し、環境に敏感なアメリカ市場では大きな話題となり、セレブリティーたちが率先して愛用したことも社会現象となった。

電気自動車が広く普及するまでの対応方法として考えられたのが、内燃機関とバッテリー動力のモーター併用のハイブリット車や、水素と酸素の化学反応を利用する燃料電池車などである。そして、ハイブリッド車がワンボックス&ミニバン系に初めて登場したのが2001年6月発売のエスティマハイブリッドといえるだろう。

2000年当時、自動車メーカーの研究は多様化を見せていた。トヨタは異業種(ビール、アロマ、チョコレート、ファーニチァー、インターネットなどの主要社)とのタイアップ=合同プロジェクトWiLLをラインナップ、2001年のWiLL第2弾車 VS(ブイエス)は、大胆でスタイリッシなデザイン、優れたユーティリティ、そして高い走行性能をあわせ持った新コンセプト5ドアとして開発。アングルで印象か変わるエクステリアは、クーペ・セダン・ワゴンといったこれまでのカテゴリーにあてはまらない「理屈抜きにかっこいいスタイル」をめざした……というが、ミニバン的発想も盛り込まれていた。またホンダはF1復帰とともに、人間型ロボットのASIMO(アシモ)で新展開を見せた。

日産のキューブは1998年に発売。シンプルなスタイリングや、コンパクトながら広い室内のハイトワゴンとして支持され、なんと約40万台を販売するヒットモデルとなった。2000年9月のマイナーチェンジでは、オーテックジャパンがフロントエンドを個性的なデザインにカスタムした、キューブスクエアを発売。2WDオートマチック車の価格139.8万円はベース車より26万円高、丸形ヘッドランプのフロント部が個性的だった。スクエアは四角の意味で、グリル部にその意味合いがみられる。
2000年1月に発売されたエスティマの2代目をベースに、2001年6月に追加されたハイブリッド車、エスティマハイブリッド。システムはTHS-Cを採用し、ガソリンエンジンをジェネレーター兼用のモーターでアシストする。動力はCVTを介して前輪に伝えられ、後輪はリヤトランスアクスル部に組み込んだジェネレーター兼用のモーターで駆動する、電気式4WD方式を採用。
未来をドライブする楽しみ……とカタログの説明にある。なおDVDボイスナビゲーションはメーカーオプション。ハイブリッドゆえに室内にAC100ボルトのコンセントを備えており、最大1,500ワットの電力を供給できた。まだニッケル水素電池の時代であった。
ハイブリッドの初期のため、通常はエンジンのみで走行し、高負荷時にモーターがアシストする。停車時はエンジンを停止し、発進時はバッテリー残容量が少ない時などを除いてモーターのみで発進。滑りやすい路面走行時や全開加速時など、必要に応じて後輪も駆動する方式を採用。
減速時には前後のモーターを回生ブレーキとして使用し、その時エンジンに動力が伝わらないように切り離すことで、効率良く電力を回生している。扱いはトヨタ店(大阪地区は大阪トヨペット)、トヨタカローラ店で、エスティマハイブリッド8人乗りの価格は335万円、7人乗りはシートが豪華なためか338万円。ガソリン車4WDより58万円高だった。
トールワゴンとして2001年5月に発売した2代目のカローラスパシオはカローラ店扱い、デザイン上では後部でキックアップさせたベルトラインが特徴。カタログ表紙はデザインスケッチを配し、スパシオの名を強調し、カローラの名は目立たないよう控え目に演出されていた。特徴的なフード形状や、グリップタイプのドアハンドルの採用により、車格感を高めつつ、質感の高いデザインを目指し、リヤはルーミーでかつ張りのある力強い造形を創造するとともに、特徴的な意匠のリヤコンビネーションランプにより引き締った軽快感を表現したという。
室内デザインは、インストルメントバネル、オーディオなど部品間の隙間を極力小さくし、面一性を追求したという。また、グローブボックスの開閉機構にエアダンパー、回転式アシストグリップにオイルダンパーを採用し、大衆向けながらも、“上品な作動フィーリング”を提供していた。
インテリアデザイン面では、上下に色分けされた2分割のインストルメントパネルを採用、「横への広がり感を演出」し、「近代的な質感を表現」している。シート、トリム表皮材は、“上質”を訴求するものを設定し、さらに2種類の木目調パネルの用意していた。
「躍動感ある外形デザインを創出するとともに、上質感、スポーティ感を演出」とリリースにある。室内での初代との大きな違いは、5+2座席としたこと。普段は2列シートのゆったりした5名乗りだが、必要時には床下格納式の3列目シートを起こして、7名乗りにできる工夫もされた。
エンジンはVVT(Variable Valve Timing=連続可変バルブタイミング機構)、BEAMS(Breakthrough Engine with Advanced Mechanism System=先進機構を備えた画期的エンジン)。1794cc、136PS/6000rpm、1496cc、110PS/6000rpmで斜めスキッシュ燃焼室、高圧縮比(10.0)などによる低燃費に寄与。またシャシー=プラットフォームは9代目カローラの「New Century Value」のコンセプトを流用進化した、衝突安全ボディGOAの採用などでクラストップレベルであり、40%ラップオフセット前面衝突試験などを実施していることを訴求して、安全性を謳っている。
発売時のラインナップ。エンジンは1.5リッター・110PS、1.8リッター・136PSの2種。当初はFFのみだったが、2ヵ月後にフルタイム4WD(1.8リッター)を追加。2003年4月のマイナーチェンジ時に、平成12年(2000年)基準排出ガス75%低減レベル(超-低排出ガス)」を全車達成し、1.5リッター車は「平成22年燃費基準」を先行してクリア(グリーン税制による減税措置対象車)した。
わが国におけるキャブワゴンブームの火付け役となったライトエース。これを始祖とする新世代ミニバンで2001年11月に発売されたのが、ノアである。ライトエース ノア/タウンエース ノアの後継モデルとして登場した。オーソドックスな外観のノアは、「堂々とした造形により存在感を強調するとともに、親しみやすさ」を演出していた。トヨタカローラ店向けのミニバン/キャブワゴンだった。
まったく新しいFF方式のプラットフォームを採用し、ボディサイズは5ナンバー規格を維持しつつ、広い室内とフラットで低いフロアを得た。3列配置のシートは最大8名定員で、リヤドアは左右ともスライド式を採用。この世代から商用バンを廃してワゴンのみとなった。
エンジンは4気筒DOHC16バルブVVT-i、1998ccD-4の152PSで、変速機は4速ATコラムのECT-iE。駆動方式はFFおよび、2WDモードも選択可能のアクティブトルクコントロール4WD。Gセレクションには、3種の走行モード(快適-標準-スポーツ)の姿勢安定制御H∞-TEMSをオプションで導入した。
2001年11月に発売、野心的フォルムの「ヴォクシー(VOXY)」は英語のVOX(言葉・声)からの造語。BOXY(英語「箱型」の意)を連想させるとともに若々しい響きの語感から命名された。ネッツトヨタ店扱い車。ノアとヴォクシーは、“キュービック クリエーター“を開発のキーワードに、「ヴォクシーは鋭く、迫力のある引き締まったデザインで若々しさを追求」し、「21世紀にふさわしいクリエイティブなスタイル」で生み出された。
FFレイアウトの新パッケージを採用。フラットで低いフロア、大きな室内長、高い室内高を確保している。「自然な姿勢でスムーズに乗り降りできる見晴らしの良いフロントシート、リヤ両側スライドドアの採用により、コンパクトな車両で優れた乗降性とゆとりある室内空間を創出」「これまでのミニバンにないキャビンとラゲージスペースの自在な空間アレンジを実現した」とのことである。
トヨタ車体の富士松工場で生産されていたライトエースを始祖とする新世代ミニバン、ノアとヴォクシー。全幅は前モデル同様の1695mmだが、全長は85mm伸びた4560mm、ホイールベースはミニバン化で110mm伸びた2825mmで、全高は1895mmから95mmも低い1850mmとなった。ドライバーのヒップポイント地上高も65mm低い795mmで、ミニバン化の効果が出ていた。
ホンダは新型コンパクトミニバン、モビリオを2001年12月に発売。乗用車のデザインで重視されてきた「流れ」や「勢い」といった概念を用いず、ヨーロッパの路面電車をモチーフに、直線と大きなグラスエリアが印象的なバーチカルエモーション・デザインを実現し、さらに垂直・水平ラインを基調とし、乗り降りや視界の良さ、空間の広さなどの機能を形にしたという。
燃料タンクをフロアフレームで囲み、高いボディ剛性と居住性を目指したレイアウトの「グローバル・スモールプラットフォーム」をベースに、ホイールベースを延長した部分にクロスメンバーを追加、さらにリアパネルの大断面クロスメンバー化、アウターパネルの額縁構造などで、全長約4mのボディに大きな室内空間と3列シートを実現しながら極めて剛性の高いボディ骨格を実現したとしている。
「高効率パッケージ」と称し室内長2,435mmの室内空間を生み出し、燃料タンクを1列目シート下に配したため、足元も低床で大人でもしっかり座れることを訴求。さらに3列目シートは2列目シート下に収納可能で、大容量579L(FF車)の荷室スペースが出現する。室内高1,360mmまでの背の高い荷物や約2.6mの長い荷物も積載可能な多彩なシートアレンジを用意し、2列目シートは最大260mmのスライドを可能としていた。
2002年グッドデザイン賞を日本産業デザイン振興会から与えられたため、カタログ類も右図のように急遽変更された。最高峰のグッドデザイン大賞があり、ホンダ車では1984年にシビック3ドアハッチバック、その他メーカーでは1988年日産シルビアQ’s、2003年にはトヨタプリウスなどが輝いているが、受賞発表後の1ヵ月間をのぞきカタログなど販促活動に使用する際には使用料が必要であった。ホンダは2011年の東日本大震災時のインターナビの通行実績情報でも大賞に輝いている。
2代目になったエルグランドは2002年5月に登場。『「夢」と「くつろぎ」と「感動」を提供できる最高級ミニバン』が商品コンセプト。「お客様から高い評価をいただいているゆとりの室内空間、スタイリング、走行性能などに、より磨きをかけるとともに、最先端の情報技術など利便性を更に向上させる装備を採用」したとしている。販売目標台数は月3,300台だった。
見るからに「エルグランド」とわかる圧倒的な存在感がある外観スタイル……を強調したカタログ。デザインは、CONFIDENCE(みなぎる自信)&NEWNESS(明快でクールなデザインテイスト)をキーワードに、「エルグランドらしさ」を表現したという。大きくスラントしたフロントノーズ、二段構成のグリル&ヘッドランプ。踏ん張り感を表現したフロントフェンダー、フェンダーと一体化したドアミラー。シンプルで張りのあるボディサイドを引き締めるライン……などが特徴とされた。
エルグランドの特徴として、「ゆとりとくつろぎをもたらす“ファーストクラス”の室内空間」。その室内は、「リビングルームにいるようなゆったりとくつろげる空間を実現した。特に、使い勝手の良いセカンドマルチセンターシートの採用により、多彩なシートアレンジを実現」し、8人乗りでもセカンドとサードシート間のウォークスルーを可能としていた。
ハイウェイスターは、ROAD TRACE CRUSER(ロールを抑えたスポーティな走り)をコンセプトとし、STAND-OUT(目を引くボリューム感)& SMOOTH(ボディとパーツの一体感)をキーワードに、力強く洗練されたスタイリングを表現したという。ローダウン(-10mm)による安定感を演出したフォルム、専用センターボリュームバンパー、6本スポークの17インチホイールなどが特徴。
エルグランドの全国希望小売価格(消費税別)は2WDの場合、5ドアの8人乗りグレードVが289万円、4ドアまたは5ドアの8人乗り2WDグレードVGが308万円、5ドアの8人乗り2WDグレードXが358万円、XLの人乗りが418万円。4WDグレードは各車 32万円高。ハイウェイスターは2WDが330万円。4WDは362万円だった。
エルグランドと偶然にも同じ……2002年5月デビューのアルファードG/アルファードVは、それまでのグランビアやレジアスなど既存4モデルを統合して発売された。ミニバンのフラッグシップを目指したモデルだが、実際にはエスティマ用の前輪駆動プラットフォームを流用、その上にひと回り大きい車体を架装したもの。シートは3列配置で、2/2/3の7名乗りと2/3/3の8名乗りの2種を設定していた。アルファードGは全国のトヨペット店(大阪地区は大阪トヨタ)での扱いだった。
「存在感ある先進的スタイル」と訴求する、アルファードGのフロントグリルは全周にメッキを施し、横3段の開口部に立体的な斜め格子を配して登場。さらにボリュームを与えたパンパーにより存在感を演出している。サイドはフロントからリヤヘ抜ける長いルーフラインとホイールアーチの張り出しを特徴的に扱ったボディで、量感と質感を表現している。リヤは見る角度で表情が変化するという、個性的な構えとしたコンビネーションランブで力強さを演出していた。
インストルメントパネルは扇形の大型センタークラスターを中央に配している。「シンプルな造形でありなからボリューム豊かなシートなどにより、存在感のあるインテリアを実現するとともに、くつろぎの室内空間を演出」し、「高級感のある大型3連メーターを配置、木目調装飾」など豪華さと新鮮さを表現。最上級MZ “G Edition” では、柔らかく質感の高い本革を採用し「プレステージ感」を強調していた。
アルファードVはビスタ店を通じ発売。フロントグリルは、ボディカラーと同色の塗装を施し、メッキの横基調の格子を配したグリルとした。MZ “G Edition”のフロントウィンドウとフロントドアには赤外線カットガラスを採用し、室内温度の上昇を抑えエアコンの運転効率を高めるとともに、日射による肌への刺激を軽減するなどの工夫がこらされた。
乗降性や使用性に配慮した両側スライドドアには、グレードにより異なるものの……イージークローザーを標準装備、助手席側スライドドアは、ドアハンドルを軽く操作するだけでドア開閉が可能なパワースライド機構を採用。また、キー一体型のワイヤレスマルチコントロールのリモコン操作でもドア開閉を可能としていた。
エンジンはV6のDOHC24バルブVVT-iの2994cc、220PS、または直4のDOHC16バルブVVT-iの2362cc、159PS。駆動方式はFFまたはセンターデフ付フルタイム4WD。上級グレードのサスペンションはセミアクティブ制御のH∞-TEMSを備える。積載状態や制動による荷重変化に応じ、前後輪の制動力配分を行うブレーキ性能を確保するEBD付ABS、加えてブレーキペダルが、速度と踏み込む量から、ドライバーの緊急制動時に制動力を高めるプレーキアシストを全車に標準装備。
2003年7月には、アルファード系もエスティマとともにハイブリッドモデルを新設定。2008年5月には2代目へのモデルチェンジを実施、このアルファードVに代わる姉妹車としてネッツ店用に新モデル、ヴェルファイアを設定してから人気がより上昇してゆく。生産はアルファード同様にトヨタ車体(株)いなべ工場。
1998年5月に発売のトヨタガイアのカタログ。第18回で紹介したナディア同様、初代イプサムをベースにした5ナンバーサイズの上級ミニバン。このカタログでは、海外の大型スーパーである米国のコストコ、フランスのカルフールが幕張に出店した当時の“おしゃれさ”を演出していた。
全幅・ホイールベース・トレッドはイプサムと共通だが、全長を90mm、全高を55mm増やして室内スペースを拡大、国内ではホンダ・オデッセイの対抗車種といえるだろう。外観にメッキパーツを多用するとともに、内装に高級な素材を用いることで高級感を演出していた。
トヨタ初のミニバンとして設計されたイプサムは、コロナプレミオのプラットフォームがベースで、やがてミニバン拡大化のためガイア、ミニバンとセダンの中間モデルのナディアなどを生んだが、ナディアは5年後の2003年、イプサムは2代目で車体を拡大してオデッセイに対抗し2009年で生産終了。ガイアも2004年で姿を消すことになる。時代的にミニバンの主流は乗用車ベースでなく、ヴォクシーやヴェルファイアのようなセミキャブ車に変貌しつつあった。
これは2002年8月時のガイアのカタログ。搭載エンジンは当初1998cc、DOHC16バルブ3S-FE型の135PS、2002年8月のマイナーチェンジで、内外装を小変更し、FFモデルのガソリンエンジンをナディア同様に1AZ-FSE型、152PS直噴タイプを搭載、2004年まで生産、販売された。
初代日産キューブは1998年に登場、スモールカー市場にハイトワゴンという新しい世界を創出、約40万台を販売して大ヒット。そして2002年10月に2代目が登場した。Magical Box=マジカルボックスを商品コンセプトに、「コンパクトな外観からは想像できない広い室内空間、充実した収納装備を持ち、自分の道具として自由に使えるハコとして開発」されたという。「あっと驚く個性的なデザイン」「左右非対称デザイン」などを特徴として登場。「東京ディズニーシー」開園2周年を記念して、発売前の3列シート車「キューブキュービック」があたる懸賞などでも注目された。
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