この連載では、ワンボックス―ミニバンのワゴン系に類する車両の変遷をお伝えしているが、「ミニバン」と呼ばれるカテゴリーには実に多くの車種が存在し、読者の方々がそれぞれにイメージする“ミニバン像”は必ずしも一致しないであろう。それは各々の生活様式や住宅事情などにも関連することであり、ここでは全ての読者の満足のいく車種を紹介することは難しく、ある程度主要なテーマに絞って紹介している。この点は鋭意ご承諾いただくということで、ご容赦願いたい。
そうした観点も含め、自動車業界で話題になったのが5年7ヵ月で100万台を販売した軽自動車のワゴンRだろう。さらに1997年2月にボディを大きくした小型車のワゴンRワイドを発売。さらに軽自動車のワゴンRがフルモデルチェンジされたのを機に、1999年5月に海外生産も考慮した小型車として「コンパクトカーのベストを追求した、完全新設計」の新型ワゴンR+(プラス)を国内発売したのである。
日本車のアセアン市場進出が当たり前となり、インドのマルチ社ではワゴンR+をベースに、2000年1月より1100ccにした改善型の量産を開始した。さらにスズキは1999年1月の軽自動車キャリイ系トラック・バンのセミキャブボディ化にともない、6月に軽乗用車エブリイワゴンおよび小型車エブリィ+(プラス)を発売。欧州安全基準の衝撃吸収ボディを採用するとともに、1300ccエンジン搭載などもあり、エブリィ+の全幅は1.5mとなった。軽より大柄な車体となり、以降軽自動車ベースの大型車も増えてゆく。
トヨタも海外向けの新型車を生み出す。1999年8月登場のファンカーゴ(楽しく+積載するの意味合い)は、ミニバンタイプの多目的乗用車で、前側はヴィッツ(スターレットの後継車で、欧州向け大衆車ヤリスの国内仕様)、後部はホイールベースを130mm伸ばしてボックス型のカーゴスペースを得られるようにしたものであった。
日産では、「ミニバン・クルーザー」をコンセプトに、「本格的なグランドツーリング性」を実現したと、1998年6月に登場したのがプレサージュだった。ルネッサの全幅1.77mのシャシーをベースにデザイン変更したもので、3.0リッターV6ガソリン220ps、2.5リッター直4直噴ディーゼル165ps、2.4リッター直4ガソリン150psを搭載していた。1998年11月には5ナンバー・ミニバンのプレーリーにリバティの名を加えモデルチェンジ、総合的にミニバン市場をリードしようとしてゆく。
さらに1999年11月にプレサージュをベースに「ダンディ ミニバン」のコンセプトで、スタイリング面で存在感を盛り込んだバサラが登場。縦型グリル&テールランプ類で「存在感のあるスタイリング」「上質感溢れるインテリア」「すべての席で快適な室内空間」が特徴で、車名の語源は「ダイヤモンド」の意味があると発表された。エアロフォルム車は「パシフィーク」からオーテック製「アクシス」にバトンタッチ、ユーザーニーズに対応した。
そうした他社動向を見据えつつ、アメリカのミ二バン市場向けに企画され1990年に登場したエスティマの2代目エスティマT、およびエスティマLが、フルモデルチェンジして2000年1月に登場。それまでのエスティマ、エミーナ/ルシーダを統合し、エンジン搭載位置を床下ミドシップから、一般的なフロント部へ移動したのが大きな変化だった。
それまでの床下ミドシップ方式では、搭載可能なエンジンの種類に制約があったが、それがなくなったことで、直4の2.0リッター118ps〜V6の3.0リッター220psユニットを新たに搭載、エスティマTは全国トヨタ店+大阪トヨペット店、エスティマLは全国カローラ店扱いで、月販目標は初代の2000台に対し、価格帯が約100万円下がった229万円スタートからとなったっこともあってか、なんと6000台とされた。
トヨタも既存シャシーの流用で、ファンカーゴ同様にヴィッツのプラットフォームを持つMPVタイプ車として、bBが2000年2月にネッツ店から発売された。1995年発売のホンダS-MXの成功(話題性)を参考に、試作車を製作せずにCGによるバーチャルの「フルデジタル設計」を採用、若い世代に向けたものであった。独特のボクシーなデザインと、使い勝手の良さに加え、1.3リッターで129.8万円の低価格車を設定したため、車両自体は広い世代に支持された。
アメリカナイズされた場面、今や超レアなGravityスケートボードのロングタイプで演出。右ページのbBのスピード&タコメーターのデザインにも注目。コンピューター設計によるグラフィック&プロダクトデザインの独自感が満ち溢れていたが、最新技術が盛り込まれていたことがわかる。