1963年を起点とする私のマツダにおける38年間は、初期のロータリエンジン開発、輸出を開始した米国に駐在しての市場不具合対応、帰国後8年間の海外広報活動、開発部門への復帰とRX-7(FC、FD)の育成と開発、ルマン24時間レースへの挑戦を含むモータースポーツ活動、北米R&D、広報領域の統括など、いずれも大変忘れがたいものとなったが、定年退職に際し著名な自動車評論家の方のお勧めにより選択したのが「モータージャーナリスト」の道と、三樹書房、グランプリ出版とのつながりだった。
三樹書房とは、「マツダ・ユーノスロードスター開発物語」、「RX-7ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語」、更には三樹書房商品評価チーム(6名)を構成、評価コースを設定しての「車評50」、「車評軽自動車」などの出版にかかわるとともに、2008年から毎月更新・連載してきた「車評オンライン」はおかげさまで多くの方々に読んでいただけるようになり、(多いときで5,000人/月)、私としても日本のクルマのあるべき姿をささやかにではあるが訴えることができたと自負してきた。
しかしながら年齢を重ねるにつれて体調に不具合が生じ、5年前には走行中に発症した脳梗塞による視野狭窄のため、路肩に駐車中の軽バンに接触、幸い人が車内におらず人身事故にはならなかったが、昨年夏に脳梗塞が再発して入院、22年1月にはその要因となった頸動脈の中に堆積したプラークの摘出手術を行い、何とか平常な日常生活に復帰しつつあるものの、担当医師からクルマの運転は断念するように勧められた。
14歳からバイクにのめりこみ、大学時代には仲間との鹿児島往復、マツダ入社後はローカルラリー、ジムカーナ、レーシングカートなどを楽しみ、運転することが何よりも好きだった私としては、免許証の返納は断腸の思いだった。しかしクルマを愛する自分が、間違っても人身事故を起こすことがあってはならないと考え、医師の提言通り、運転免許の返上と、それにともない「車評オンライン」の連載終了を決断したものである。
愛読者の皆さまにこれまでの経過をお伝えするとともに、長い間「車評オンライン」を読んでくださった方々には心からの感謝の気持ちをお伝えしたい。そして三樹書房にはこれまでの「車評オンライン」に今後も簡単にアクセスできるシステム構築をお願いする所存である。
今後、「車評オンライン」とは異なる何らかの論評を実現できないか、三樹書房、グランプリ出版と話し合ってみたいと考えており、もしそれが実現した折には三樹書房ウエブサイトのニュースコーナーなどで皆さまにお知らせできればと願っている。
2022年5月吉日 小早川隆治