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第122回 コンシューマーレポート信頼性ランキング
2020.12.27

11月19日にアメリカのコンシューマーレポートが、アメリカで販売されている自動車ブランドの「信頼性に関するランキング」を発表した。早速大手の書店を回りコンシューマーレポートを探したがどこも取り扱っておらず、複数の大きな図書館にもなく、WEB版の情報しか入手することができなかったので、今回はオンラインで入手した情報を整理して皆様にお伝えしたい。

コンシューマーレポートは1936年に創刊された消費者向けの雑誌で、現在の発行部数は雑誌が400万部、WEB版と合わせると730万部ともいわれ、世界的に見ても圧倒的な発行部数だ。モデル毎の信頼性のデータや顧客満足度は読者から入手(今回は33万人)、モデル別、年式別に分析したものだという。コンシューマーレポートはこの種の読者のデータ分析加えて、327エーカーのテストコースも所有し、毎年50台程度の新車を、コンシューマーレポートを名乗らずに販売店から購入、40項目にも及ぶ商品性評価を行っている。広告を一切とらないため、メーカーに対する遠慮をする必要が全くなく、良いものは良い、悪いものは悪いと非常に客観的にレポートすることが最大の特色で、その情報価値とインパクトは専門誌の及ぶところではない。

今回の信頼性ランキングの対象となったのは26ブランドで、その中でマツダが初めて1位を獲得、トヨタが2位、レクサスが3位、ホンダが5位、スバルが8位、日産が13位となった。マツダは2018年に3位、2019年に2位を獲得しているが、1位となったのは今回が初めてで、日本ブランドの信頼性ランキングが総じて非常に高いのは貴重なことだ。欧州車はあまり高い順位に入らず、ポルシェが9位、BMWが12位、アウディが14位、ボルボが18位、ベンツが20位、VWが24位となり、最下位26位がアメリカ車リンカーン、25位がテスラとなった。大きな変革期にある自動車産業の今後を考えるとき、信頼性はますます重要な要素になってゆくことに疑問の余地はなく、コンシューマーレポートの情報にこれまで以上に注目してゆくことが肝要だと思う。


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日本ブランドのランキング

以下は2020年の日本ブランドのランキング(カッコ内は昨年のランキング)と得点、それぞれのブランドの中のトップ3モデルの得点だ。
1位 マツダ(2位)83点  (MX-5: 98、CX-30: 95、CX-3: 87)
2位 トヨタ(3位)74点 (プリウス:93、カローラ:90、プリウスプライム:88)
3位 レクサス(1位)71点 (UX: 95、NX: 91、GX:90)
5位 ホンダ(12位)63点 (HR-V: 90、インサイト: 86、クラリティ: 85)
8位 スバル(7位)57点 (クロストレック=日本名XV: 78、フォレスター: 77、アウトバック: 60)
13位 ニッサン(11位)51点 (ムラーノ: 72、アルティマ: 69、リーフ: 54)

日本ブランドに対するコンシューマーレポートの短評

マツダ
マツダは今年最も信頼性の高いブランドとなったが、その大きな要因は新型車の設計変更が地味で控えめで、多くのモデルがプラットフォームやコンポーネントを共有していることにあるといえよう。全てのマツダ車が平均以上の信頼性を確保できるものと推定する。

トヨタ
トヨタとレクサスが2位と3位に入るとともに、全てのトヨタ車が平均以上となった。人気の高いRAV4は丁度平均値だが、変速機、燃料システム、インフォ―テインメント(NAVI/オーディオ/情報)システムの不具合などに苦しめられている。

レクサス
レクサスの点数はLSセダンが平均値よりかなり悪いことが大きく起因している。LSのエンジン、変速機、燃料システム、エレクトロニクスなどがその要因だ。それ以外のレクサスは素晴らしい信頼性を示している。

ホンダ
パスポートは、変速機、エンジン、駆動系、スクリーンなどの問題に起因して平均値以下となるとともに、オデッセイもインフォ―テインメントシステム、パワースライディングドア―に起因して平均値以下だが、インサイトハイブリッドとクラリティは平均値以上だ。

スバル
スバルは、フォレスターやクロストレックは平均値以上なのに、アセントの信頼性が、ブレーキ、変速機、電力関係、空調システム、ステアリング、サスペンションなどに起因して平均以下となっている。アウトバック、クロストレックなどは情報システムと車体部品問題のなどにより平均値にとどまっている。

ニッサン
ニッサンは、パスファインダーとルージェ・スポーツに足を引っ張られた。この両モデルにはカーエレクトロニックスと変速機の問題があり、ルージェ・スポーツにはそれに加えてサスペンションの問題がある。リーフEVは平均値で、アルティマとムラーノは平均値以上だ。

米国メディアによるマツダに関する記述

USA TODAYは、『マツダは26ブランドの中で最高位を獲得したが、コンシューマーレポートの評価責任者は、"マツダの設計に対する対話的なアプローチがその大きな要因だと述べている。その意味するところは、マツダは、設計変更にあたって、新しいテクノロジーによる予期せぬ不具合をさけるため過度な変革をさけてきたが、一方でスタイリッシュなデザインを保ち、決して退屈なクルマではない。信頼性の話になると、心躍るクルマにするか、信頼性を重視するかの議論になるが、マツダはそれが両立できることを示している。マツダの高いスコアを支えていることの一つに、インフォ―テインメントシステムの刷新に過度な投資をしてこなかったことがあげられ、タッチスクリーンが装備されていない新型モデルもある稀有なメーカーだ。また多くの場合、インフォ―テインメントシステムと変速機の不具合に対するレポートが多く、デュアルクラッチギヤシフターや、電子制御の変速機などもトラブルの要因となっている"と述べている。』と報道している。

同様に、AP通信は、同じくコンシューマーレポートの評価責任者の言葉として『マツダは予算的にも厳しい会社であるがゆえに、多段変速機やインフォ―テインメントシステムへの投資が限られているが、これらの新技術はトラブルに結び付くケースも多く、マツダの場合、多くのモデルにいまだにタッチスクリーンが採用されておらず、9速10速ATに着手しているメーカーが多い中でいまだに6速ATに固執しながら、運転することが楽しいクルマをつくり続けていることも評価に値する。』と紹介しているのも興味深い。

マツダの販売実績は、2019年度にアメリカが27.5万台、欧州が26.4万台、中国が21.2万台、日本が20.2万台と決して多くなく、販売面での課題は非常に大きいが、今回のランキングがアメリカ市場での販売、更にはマツダの開発方針にどのような影響を与えるかは非常に興味深いところだ。

結び

「信頼性」はクルマの購入にあたっての最も大切な指標の一つであり、コンシューマーレポートのように客観的、かつ総合的に信頼性を予測してくれるメディアは世界のどこを見回してもないといっても過言ではない。コンシューマーレポートの信頼性や商品性に関するデータは、自動車メーカーにとって非常に貴重な情報であり、それぞれの内容に関して真摯に取り組むことによりクルマの信頼性、商品性が一段と強化されてゆくことは間違いない。

日本にはコンシューマーレポートに相当するようなメディアがないのが残念だが、1700万人もの会員を擁するJAF(日本自動車連盟)のロードサービスは大いに評価に値するもので、その会員から毎年、信頼性、商品性などに関するデータを収集分析することも可能なはずだ。分析結果は購買者はもちろんメーカーにとっても非常に有効な指標となり、今後の日本のクルマづくりに大きく貢献するものと確信する。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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