1967 Ferrari 330 GTC Special
【275シリーズ】
「250 SWB」「GTO」の後継として登場したのが1964年パリ・サロンでデビューした「275GTB」だ。このシリーズは「275GTB/C」「275GTB/4」と変化して、1968年後半「365GTB/4」にバトンタッチする。フロントエンジンはここまでで、この後はミッドシップとなり「365GTB/4 BB」、「512BB」、「テスタロッサ」、[512TR]、「F512M」と続く事になる。
(01)< 275GTB >
(写真01-1abc)1964 Ferrari 275 GTB Berlinetta (2011-10 ジャパン・クラシック・オートモビル/日本橋)
「275GTB」には①2カム・ショートノーズ、②2カム・ロングノーズ、③4カム・ロングノーズの3つのバリエーションがある。写真の車は最初期のショートノーズ仕様で、「ボンネット中央にパワーバルジがない」「サイドウインドーの上の雨樋が短い」「トランクのヒンジが外から見えない」などの特徴がみられる。
(写真01-2ab) 1966 Ferrari 275GTB Berlinetta (1978-01 4th TACS/東京プリンスホテル)
写真の車は約40年前にイベントで撮影したもので、当時はまだまだフェラーリは珍しくカラーで撮影した最初のフェラーリだったと思う。同時にモノクロで撮った写真が沢山残っている。
(写真01-3ab)1965 Ferrari 275GTB Berlinetta (1989-11 5thモンテミリア/神戸)
1985年から5回にわたって開かれた関西地区の大イベントが、神戸のポートアイランド市民広場に集合し、六甲の山々を駆け巡る「モンテ・ミリア」だった。勿論本家イタリアの「ミッレ・ミリア」に倣ったもので、会場は赤い車で一杯だった。
(写真01-4ab)1965 Ferrari 275GTB Competition Berlinetta (2004-08 ペブルビーチ)
この車は一見初期の「275GTB」の様だが、レース用に造られた全く別物だ。3台造られたレーシングモデルの2号車(シャシーNo.6885GT)のこの車の外観上の大きな特徴は、ラジエターグリル両脇にLM風の補助ライトが付き、スモールランプも膨らみを持って張り出している。またリアフェンダーには市販車には見られない3本のルーバーが切られている。
ボディはアルミで軽量化をはかり、エンジンに関しても同じ仕様ながらブロックにも軽い特殊合金を、カムカバーを始め付属品はマグネシュームの鋳造品が使われた。ホモロゲーションを獲得するため見た目は市販車と大きく変わらないよう仕上げたが、今一歩のところで計画は実現しなかった。それは計量で公称重量よりも200kg 前後軽いことが判り、誤差3%のリミットを大きく超えたためで、折角軽量化を図ったにも拘らずバラストを積んで重量を増やして公認された。このイエローの塗装はベルギーのエキュリー・フランコルシャンのエントリーで「ルマン24時間レース」に参加した際のカラーで、本番ではオーバーヒートに悩まされ、フロントにゼッケン番号に届くほど大きな穴を急遽切り抜いて対応し何とか総合3位(GTクラス優勝)でフィニッシュした。
(写真01-5ab)1966 Ferrari 275GTB Berlinetta (1999-08 コンコルソ・イタリアーノ)
シングル・カムの「275GTB」のバリエーションの一つ「ロング・ノーズ」タイプがこの車だ。「ボンネットが長い」と一言でいっても、比較対象が無ければ判定できないが、見分ける特徴は窓の上の雨樋の長さで、後ろのベンチレーションの穴まで届いていれば「ロングノーズ」だ。
(02)<275GTS>
1966年「275GTB」と同時に発売された「275GTS」は、1963年で発売が終わった「250GTスパイダー・カリフォルニア」の後継として登場した。機構的には姉妹車「275GTB」と大差ないが、性格的にはレースなどの過激な走りよりも、優雅なオープン・ドライブを楽しむ車として位置付けされ、出力も低めな260hpに抑えられている。
(写真02-1a)1965 Ferrari 275GTS Spider (1998-08 コンコルソ・イタリアーノ)
ずらりと並んだフェラーリの群れ。2台目の黄色はベルギーの「ナショナル・レーシング・カラー」で、フェラーリとしては割合に多く見られるカラーだ。
(写真02-2ab)1965 Ferrari 275GTS Spider (1995-08 コンコルソ・イタリアーノ)
「275GTB」のデザインは「ピニンファリナ」で、造ったのは「スカリエッティ」だったが、「275GTS」は両方とも「ピニンファリナ」が行った。デザインは後年の「330」に通じるエッジの付いた顔付となった。
(写真02-3abc) 1965 Ferrari 275 GTS Spider (2004-08 ラグナセカ/カリフォルニア)
フェラーリにはこれ迄には型式を示すバッジ類が付いていないのが当たり前だったが、この車には後ろのトランクに「275」のバッジが付いている。イタリアで撮った写真にはついていないので「アメリカ仕様」かもしれない。
(03)<275BTB/4>
「マセラティ」や「ランボルギーニ」など競合メーカーが次々と高性能車でフェラーリを脅かすのに対抗して1966年のパリ・ショーにデビューしたのが「275GTB/4」だ。追加された「4」はカムシャフトの数で、「DOHC」(ツイン・カム)だがV型エンジンのためカムシャフトが4本あるからだ。ツイン・カムはフェラーリの市販GTとしては初めて採用された。
(写真03-1a~e)1965 Ferrari 275GTB/4 Berlinetta (2010-07 フェスティバル・オブ・スピード/イギリス)
ボンネットは勿論「ロングノーズ」で、控えめのパワーバルジ(とは言えない程の)なだらかなスロープを持つふくらみは以前のモデルとは異なる。もう一つの特徴はリア・トランクのヒンジが外付けになった事だ。
(写真03-2a~d)1966 Ferrari 275 GTB/4 Berlinetta (2010-07 コンクール・デレガンス/お台場潮風公園)
日本国内で開催されたイベントで捉えた非常に良いコンディションの「275GTB/4」だ。この車が履いているホイールはオリジナルの「カンパニヨーロ」のアルミホイールと思われる。この車はレース仕様らしく大型の給油キャップが付いている。
(写真03-3abc) 1967 Ferrari 275GTB/4 Berlinetta (1995-08 コンコルソ・イタリアーノ)
赤い車だらけの「コンコルソ・イタリアーノ」の中では、同じイタリア車ながらこの色はかえって目立つ存在だ。後ろ姿に見えるナンバープレートは「67GTB4」と誠に分かり易い身分証明だ。「ボラーニ」のワイヤホイールはオリジナルのオプションとして用意されたものだ。
(写真03-4a~d) 1967 Ferrari 275GTB/4 Berlinetta (1978-01 4thTACS/東京プリンスホテル)
1978年と言えば今から40年以上前のことで,僕のカメラはモノクロが主流だった。この時はカラーフィルムを2本持って行ったので、各車色見本を1枚だけという時代は過ぎて、この車については4枚撮っている。(勿論モノクロではもっと撮っている。)横から撮った写真には奥に「ショートノーズ」が写っているので、この車が「ロングノーズ」ということがよく判る・
(04)<275GTS/4 NARTスパイダー>
「スパイダー・カリフォルニア」の時と同じように、カリフォルニアでフェラーリのデーラーを営む「ルイジ・キネッティ」の要請で誕生したモデルで、機構的にはベースとなったベルリネッタと変わらず、ボディも屋根部分を除いて全く同じに見える。全部で10台が造られた。
(写真04-1ab)1967 Ferrari 275GTS/4S NARTスパイダー (1995-08ペブルビーチ)
10台造られたうち9台がアメリカに渡ったといわれるこの車は、明るいカリフォルニアの陽光の下でオープンで走る姿が一番似合うだろう。赤いフェラーリばかり見慣れた目には、シルバーの塗装も悪くない。
(写真04-2a~e)1967 Ferrari 275GTS/4S NARTスパイダー(1989-11 5thモンテ・ミリア/神戸)
神戸の市民広場に並んだ3台のフェラーリは正面左から「250GT ボアノ」、「275GTB」「275GTS/4 NART」」だ。10台しか造られなかったと言われる貴重な車だが、バブル華やかな一時代には、貴重な車が随分と国内に足跡を残した。
【330シリーズ】
「250GT 2+2」の流れをくむ「330シリーズ」は、1963年の「330LMB」、「330アメリカ」を経て1964年の「330GT 2+2」、1966年の「330GTC/330GTS」とロードカーとしてのキャラクターを持っていた。
(05a)<330LMB>
1962年ルマンで優勝した4リッターのレース用エンジンを熟成し、それを搭載した車が「330LMB」だ。これが「330シリーズ」のスタートとなった。
(写真05-0abc)1963 Ferrari 330LMB Berlinetta (2004-08 ラグナセカ/カリフォルニア)
この車を前から見れば一見「250GTO」に見える。それもその筈で「250GTベルリネッタ・ルッソ」に「GTO」のノーズを付けて、「400SA」系のエンジンを載せたのがこの車だ。
(05b))<330アメリカ>
(写真05-1abc)1960 Ferrari 250GTE 2+2 400SA(2009-03 東京コンクールデレガンス/六本木ヒルズ)
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この車は案内板によると1960年に造られており、「250 2+2」のプロトタイプともいうべき車のようだが、1963年誕生する「330アメリカ」にとっても原点と言える。外見は「250GT」
と同じ車に、「400SA」の4リッターエンジンを積んで「330アメリカ」となったからだ。
面白いのは「400スーパーアメリカ(SA)」では「400」は総排気量に因んだものだが、同じ排気量でも「GTシリーズ」では1気筒当たりの「330」(330x12=3960)と変わることだ。
(06)<330GT 2+2>
4リッターのエンジンを載せた本格的な2+2は1964年初めに発表された。ホイールベースは「250GT2+2」より10cm延長され後部座席にも余裕ができた。初期型では当時デザインを担当したのがアメリカ人だった所為か、流行りの「4灯式」が採用されたが不評で、後期型では通常の「2灯式」となった。
(写真06-1abc)1964 Ferrari 330GT 2+2 Coupe (1986-11 2ndモンテミリア/神戸)
この車を最初見たときは、この「チャイニーズ・アイ」と呼ばれる釣り目のヘッドライトには少なからず違和感を持った。勿論このタイプの車は今迄に何台も見ていた筈だが、フェラーリのイメージとはぴったりしないと感じたのだ。だからこの写真を撮った時はあまり「やったー!」という高揚感は無かった。何故だろう。それはあまりにもアメリカ風だったからかもしれない。
(写真06-2abc)1964 Ferrari 330GT 2+2 Coupe (1998-08 カーメル市内/カリフォルニア)
同じ四ツ目のフェラーリだが、アメリカで見た時は、悪い印象ではなかった。周りの景色や、明るい赤い車だったからだろうか。場所はカーメル市内で、背景は革製品の有名ブランド「コーチ」の店だ。(ここで家内にお土産を買った)
(写真06-3ab)1966 Ferrari 330GT 2+2 Coupe (1996-08ラグナセカ/カリフォルニア)
2年続いた「四ツ目」はあまり評判が良くなかったと見え、1966年早々に普通の「二つ目」に変わった。やっぱりこの方がフェラーリらしいか、と思うのは僕の私見だが。
(07)<330GTC>
「2+2」から始まった「330」シリーズは、1966年になると「2人乗り」の軽快さを売りにしたクーペ「330GTC」を発表した。キャビンの大きめな「ベルリネッタ」ではなく「クーペ」を選んだのは、「2+2」との違いを強調したかったのだろうか。大ヒットとなったこのモデルは約600台が生産された・
(写真07-1a~d) 1966 Ferrari330 GTC Coupe (2001-05 ミッレ・ミリア/ブレシア)
「330GTC」は「400スーパーアメリカ」の高級車イメージにあやかる様に「つぼまった」楕円のグリルを持ってデビューした。イメージとは不思議なもので、「400」と「330」だと「400」の方が大きいと思うが、両方とも排気量は「4リッター」で同じだ。撮影場所はミッレミリアの車検場からスタート地点へ向かう途中で、この日は町中のいたるところに素敵な車がゴロゴロしている。
(写真07-2ab)1966 Ferrari 330GTC Coupe (1999-08 コンコルソ・イタリアーノ)
2台並んだ黄色と赤の「330BTC」は、8月のカリフォルニアで開かれる「コンコルソ・イタリアーノ」で撮影したものだ。このイベントはアメリカ中のイタリア車が全部集まったかと思うほどにイタリア車で溢れている。会場のアナウンスはイタリア語で、ステージのアトラクションはカンツォーネと、アメリカに住むイタリア系の人たちにとっては素晴らしい1日だろう。
(写真07-3-ab) 1967 Ferrari 330GTC Pininnfarina Special (2004-08 ペブルビーチ)
ピニンファリナの手で4台だけ造られたのが「スペチアーレ」と名付けられたこのモデルだ。前半分は一寸伸ばされてヘッドライトにカバーが付きスーパーアメリカとそっくりだ。
後ろ半分は伝説の名車1954「375MMバーグマン・クーペ」のモチーフがそっくり取り込まれている。
*女優バーグマンのために当時の夫だったロッセリーニ監督が特注したスペシャルで、縦のリアウインドウと両サイドに流れるようなフィンは、後年いろいろな車に使われる独特なデザインだ。
(写真07-4abc)1967 Ferrari 330GTC Michlotti Special (2010-07 フェスティバル・オブ・スピード/イギリス)
ミケロッティも「330GTC」をベースにスペシャルを造った。顔付きは「フェラーリ・ディーノ」のフィアット版「ディーノ2000」とよく似ている。後姿はキャビンが小さい分、トランクの占める面積が広いがエッジで引き締めている。
(08)<330GTS>
「275GTS」の後継車となる「330GTS」は、「275」の時と違って「330GTC」そのものをオープンにしただけで、別物ではなかった。
(写真08-1abc)1967 Ferrari 330GTS Spider (1995-08 モンタレー市内オークション会場)
「330GTS」は見ての通り「GTC」とは屋根がないだけで、全く同じだ。330シリーズには全てトランクに「330」のバッジが付いている。撮影した場所はモンタレー市内のコンベンション・ホールで、毎年8月にはこの周辺でクラシックカーのイベントが幾つも開かれる。集った宿泊客を目当てに夕方からオークションが始まり、素晴らしいクラシックカーたちが次々とステージに登場するのだ。
(写真08-2abc) 1966 Ferrari 330GTS Spider (1995-08 ,2004-08/イタリアーノ、カーメル市内)
最後は全く同じ「330GTS」の色変わりを3台お目にかけて今回終了とさせて頂く。
― 今回「365シリーズ」まで予定していましたが一杯になってしまい次回に回しました ―