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第80回 マツダRX-7(ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語)の再版によせて (後半その2)
2017.1.27

すでに2回、『マツダRX-7(ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語)』の再刊によせる私の思いをお伝えしてきたが、今回の最終回(後半その2)ではアメリカのREファンの集いSevenStock 、日本のRX-7ファンの集い「りんくう7 DAY」のご紹介と女性写真家麻生さんがカメラでとらえたRX-7の魅力、今後のRE車に対する私の期待、締めくくりとして山本健一氏からのRX-7ファンの皆様へのメッセージをお伝えしたい。

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5. アメリカのSevenStock
洋の東西を問わず、RE車の人気はそれらのモデルを愛してくださるユーザーによって支えられているといっても過言ではなく、まずアメリカのREファンの集いセブンストック(SevenStock)をご紹介したい。SevenStockは第3回までは南カリフォルニアのRX-7ファンの集いで参加台数は40~50台程度だったが、それを主催してきたバーニー・ヘラ氏の熱い思いに動かされて、第4回からは私の古巣北米マツダの研究開発部門と、サービス部門の駐車場を開催の土曜日に全面開放することになった。周辺の複数の会社にも来場者の駐車のためにスペースを提供してもらうともに、地元の警察も交通整理に全面協力してくれ、毎年500台から600台のロータリーエンジン車と、5000人近い人たちが集まる大イベントになった。フロリダ、テキサス、シアトルなどからコンボイを組んでの来場もあった。

それでもスペースが足らなくなったため第9回から第13回までは北米マツダの本社駐車場に変更、私は第4回から第12回までは欠かさず出席した。第14回からは開催場所が走行も可能なフォンタナスピードウェイに変更され2016年が第19回目となったが、引き続きバーニー・ヘラ氏が主催、運営はすべてがボランティアの手で行われている。参加車は歴代RX-7が圧倒的に多いが、SevenStockとはいうもののすべてのRE車が対象なので近年はRX-8の台数も多い。またクルマを愛する人たちの多い北米マツダでは数多くの歴代のRE搭載レースカーを走行可能な状態に保つとともに、この種のイベント時にデモ走行などの面で協力しているのも非常にうれしい。上記の写真は第12回のもので、駐車場に入る前の集合時の写真と北米マツダ本社の駐車場に並べられたRE車群だ。

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6. 日本での「りんくう7 Day」と女性写真家がとらえたRX-7デザインの魅力
国内にも各地でRX-7ファンの集いが行われているが、ここでは大阪りんくう公園で行われてきた「りんくう7 DAY」をご紹介したい。この集いはこれまでその存在は知っていたが2015年の13回目の開催にあたってRX-7用コンピューターを専業とする主催者である「中村屋」社長の中村英孝氏の依頼をうけ初めてイベントに参加した。心からRX-7を愛してくださっている全国各地から来場のオーナーの方々、350台にも及ぶすばらしく整備された愛車群、主催者の情熱などにRX-7の開発にたずさわった者として言葉では表せないほど感動した。2016年は実行委員会によるRX-7ファンミーティングになり貴島孝雄氏と共に出席することが出来た。350台集まるとクルマの身動きもできないので、安全上の配慮から250台程度に抑えての2016年「りんくう7 DAY」だったが、それでも世界的にも稀有なRX-7の集いといって間違いなく、「クルマ文化」の定着へのハードルが高い日本においては、非常に貴重なイベントだ。

世界各地で行われているRE車ファンミーティングが今後も継続されることを祈念するとともに、ロードスターで始まった初代ロードスターリフレッシュプログラムと同様、RX-7リフレッシュプログラムや、パーツフェニックスと中村氏が命名した旧車の部品供給プログラムが実現し、いつまでも安心してRX-7をご愛用いただけるようになることに大きな期待をよせている。クルマ文化の定着と拡大こそ今日本で最も必要とされることの一つであり、その意味からも日本の税制も含めてもっと旧車に優しい社会になってゆくことを心から願っている。

コスモスポーツ、歴代RX-7はいずれも今見ても魅力あふれるデザインで、艶めきとたかまりを感じるが、近年クルマの楽しさに心を惹かれた女性写真家麻生祥代さんと知り合うことが出来た。麻生さんの感性でレンズを通してとらえたRX-7の外観スタイルに改めて感動したので、上記の2016年の「りんくう7 DAY」写真は限られた枚数だがご紹介したい。下記は2015年の「りんくう7 DAY」に関する車評オンラインで、こちらの写真は私の手によるものでその差は申し上げるまでもない。


https://www.mikipress.com/m-base-archive/2015/06/61.html


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7. 今後のREへの期待
2012年6月のRX-8の生産終了からまもなく5年、2002年8月のRX-7の生産終了からはすでに14年が経過するが、「走る歓びの未来を拓く」がメインテーマだった2015年東京モーターショーのマツダブースに「RX-Vision」というRE搭載コンセプトスポーツカーが出品されこのモーターショーで圧倒的な人気を誇るコンセプトカーとなった。「RX-Vision」がいつ、どのような形で導入されるかはわからないが今後のマツダデザインが予見できる大変好感のもてるデザインに加えてREを絶対にやめないという決意表明と思えた。量産型「RX-Vision」がスーパースポーツの一角に色を添えるモデルになるとすれば非常にうれしいが、それだけでREの生産規模を末永く確保することは不可能に近いことは自明であり、それ以外の展開も是非とも模索すべきだと思う。

そのような中で私にとってニッサンが最近導入したノートe-Powerは"目から鱗"のようなものとなった。マツダがシングルREを活用したデミオEVの試作車をつくったことはご存知の方も多いと思うし私も試乗の機会を持つことが出来、シングルREのコンパクトさと一定回転で回すことによる振動のなさには感銘した。しかしこのコンセプトカーはカリフォルニアのZEV(ゼロエミッション)を前提としていたためバッテリー容量は大きく、ガソリンタンク容量は10Lにも満たない非常に小さいものだった。

ここでニッサンのノートe-Powerを簡単にご説明しておくと、リーフに搭載しているモーターをそのままノートに搭載、リーフの1/20の容量のリチュームイオン電池を前席の下に格納、フロントに1.2L3気筒のエンジンを搭載するのだが、エンジンによる車両の駆動は行わず発電機としてのみ活用している。リーフより250kg程度は軽い車体にリーフと同じ出力のモーターを搭載しているのだから加速性能の良さはスポーツカーも真っ青なレベルで、電池サイズが小さいことのコストメリットも大きいためだろう、価格も非常に魅力的だ。モード燃費は34km/L(ベースモデルは37.2 )とハイブリッド車に近く、ガソリンタンク容量は35Lなので、給油なしに長距離の走行が可能な上に、EVのように充電の必要が全くないのもいい。カリフォルニアのZEVに当てはまらないことは明らかだが多くの市場でハイブリッド車の変形としてウェルカムされることは間違いなく、私も遠からず広範囲な条件下での総合評価を行って改めてご報告したい。
マツダに期待したいのは、1.2L3気筒エンジンなどよりはるかにコンパクトで軽量なシングルREを発電機として使ったノートe-Power のようなEVの実現で、デミオクラスのコンパクトカーは勿論、ロードスターのプラットフォームを活用したEVスポーツカーへの挑戦も十分に可能だと思うからだ。

8. マツダRX-7-ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語の再版によせて
RE車発売50周年を記念して『マツダRX-7(ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語)』が再版されることになったのは個人的にも非常にうれしい。なぜならばRE車が誕生して50年という長い歴史の中で、歴代のRX-7が果たした役割は大きく、本書の出版にあたっては時代背景、開発目標、開発経緯などを歴代RX-7の開発に携わったキーパーソンに執筆いただくことが出来たものであり、RX-7&REファンはもちろんのこと、スポーツカーファン、更にはこれからのクルマづくりに関わられる方々などにとっても意義のある内容になっていると思うからだ。それ以外にも以下のようなRE車に関連した書籍が出版されているので、ご関心のある方には是非下記書籍もご覧いただくことをお勧めしたい。遠からず次世代REの開発が成功し、新しい「飽くなき挑戦」に対する書籍が出版されるようになるものと確信している。

・『マツダチーム ルマン初優勝の記録』(ロータリーエンジンによる戦い1979-1991)
 GP企画センター編 桂木洋二、船本準一、三浦正人著 (三樹書房刊)

・『ロータリ―エンジン車』(マツダを中心としたロータリーエンジン搭載モデルの系譜)
 当摩節夫著 (三樹書房刊) 

・『マツダ・ロータリーエンジンの歴史』
 GP企画センター編 (グランプリ出版発行) 

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山本健一氏からのメッセージ
『マツダRX-7(ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語)の再刊によせて』を締めくくるにあたり、最近山本健一氏をお訪ねする機会に恵まれたので、「飽くなき挑戦」のサインに加えて、これまでRE車にお乗りいただいた、あるいは現在もお乗りいただいている方々への以下のメッセージをいただくことが出来たので、コスモスポーツを前にしたお写真とともに皆様にご紹介しておきたい。
『私がREの開発責任者として日々努力していた時には、RE搭載車が普及し皆様に楽しんでいただけることを夢見ていました。様々なことがありましたがこれまでRE車にお乗りいただいてきたお客様、そして現在もお乗りいただいている皆様を本当に有難いと思っており、お乗りのクルマを引き続き愛していただければこれに越した喜びはありません。』
(写真の山本健一氏の左側の方は、当日コスモスポーツを持参して下さったコスモスポーツカークラブ会長の星野仙治氏)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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車評 軽自動車編
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