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第68回 新型VW ゴルフトゥーラン
2016.1.27

今回は、1月初めに国内市場に導入された新型VWゴルフトゥーランをご紹介しよう。11年ぶりのフルモデルチェンジで、最新の生産方式MQB(後述)に基づいて開発され、ボディーサイズは若干拡大されたが、重量は20kg減少、新開発の1.4L TSIエンジン(インタークーラー付きターボ)と7速DSGの組み合わせにより、不足のない走りと18.5km/Lのモード燃費を実現している。シートアレンジの工夫も含めて実用性も向上、一段と魅力的なミニバンに成長していることを確認した。

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従来型ゴルフトゥーラン
新型ゴルフトゥーランの説明に入る前に、私が現在も所有する従来型のゴルフトゥーランに一言触れておこう。89年型ポルシェカレラ4からマツダRX-8に乗り換えたのが2006年のはじめ、以来7年間RX-8を愛用してきたが、終の棲家に同居してくれることになった娘一家も含めて4人以上が乗れるクルマが必須となり、選択したのが7人乗りゴルフトゥーランの極上の中古車だった。従来型ゴルフトゥーランに対する家族の評価は非常に高く、一部の問題はあるものの(最近4.5万キロでウォーターポンプから異音が発生交換、同じく4.5万キロあたりから発進後のセカンドギヤのクラッチジャダー(振動)が気になりはじめた。)スポーツカーとの接点が長かった私の視点からも、内外装デザイン、使い勝手、走りと燃費、ステアリング・ハンドリング、Fun to Drive性、サイズ的な扱いやすさなど非常に満足度の高いクルマで、もうしばらく乗り続けたいと考えている。そのような視点からゴルフトゥーランの進化が私の目にどのように映ったか、以下ご報告したい。


新型ゴルフトゥーランの商品概要
今回のゴルフトゥーランは11年ぶりのフルモデルチェンジだ。最新の生産方式MQB(英語での表現はモジュラートランスバースマトリックスという、VWが開発した、ポロからパサートまでセグメントを超えて共通部品を増やして生産効率を上げる生産方式で、最大の特徴は、全てのエンジンを同じ位置に搭載できることにある。)を使用、ボディーサイズは若干大きくなり、3列目のシートを中心に居住性が向上、セカンドシートはこれまでの脱着式に代わり、フラット化が実現した。3列目に大人が座っての長距離ドライブはちょっときついが、短距離なら全く問題なく、1列目、2列目に大人5人が十分に座ることが出来る上に、大きすぎず、日常生活での使用が非常に便利なコンパクトミニバンだ。ボディーサイズのアップにも関わらず、車両重量は20kg軽量化されている。

デザインは、これまでのものもシンプルで好感のもてるものだったが、新型ではよりスポーティーでパワフルな外観スタイル、上質でドライバー志向の内装デザインになった。新開発の1.4L TSIエンジン(インタークーラー付きターボ)と7速DSGの組み合わせにより、不足のない走りと18.5km/Lのモード燃費を実現している。安全装備や運転支援システムも充実、TSI Trendlineというベースモデル(車両本体価格 \2,847,000)も新たに設定された。

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内外装デザイン
彫の深いキャラクターラインの入ったサイドシルエット、そのキャラクターラインとテールランプの一体感、水平基調のラインで構成されたフロントフェイスなどにより、外観デザインが一新された。内装はダッシュボードがドライバー志向になるとともに、各部にクロームのアクセントが追加され質感が向上している。一新された内外装デザインは大半の人にはプラス効果をもたらすものと思われるが、一方で従来モデルのシンプルで落ち着いた外観デザインと、クロームを使用しない内装デザインに好感を持つ人も少なくないと思われるので、従来型のユーザーが新型のデザインをどのように評価されるかは興味深いところだ。

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居住性、実用性
ホイールベースが110mm延長され、全長が130mm、全幅が35mm広くなり、全高は0~30mm 低くなった。3列目のレッグスペースが54mm拡大、セカンドシートが前方にスライドする「イージーエントリー機能」の採用により3列目シートへの乗り降りが大幅に改善された。また3列目シートがヘッドレストを外さなくてもフラット化が可能となった。上級2グレードにオプション設定でき、ワンタッチで座面がもちあがる後席一体型チャイルドシートも、子供の安全面からも好ましい機能で、価格も決して高くない。2列目の脱着機能が廃止された代わりにフラット化が可能になり、非常に広いラッゲジスペースが得られる。4人乗車で、スキーを車内に搭載したスキー旅行が容易なのもうれしい。上級2グレードでは助手席のフラット化も可能で、サーフボードなども積載出来る。日本のクルマにはスキーや、スノーボードを含む遊びへの配慮が足りないモデルが多い中で、これらの機能は大きな魅力だ。

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走る、曲がる、止まる
今回の試乗は横浜ベイサイドマリーナベースの短時間なものだったので、実用燃費も含めた長時間な試乗をマツダプレマシーなどと同時に行えればと思う。新開発のアルミブロック1.4L TSIエンジンは、1,500-3,500rpmの間で最大トルク250Nmを発揮するインタークーラー付きターボで(最高出力は、150ps(110kW)/5,000-6,000rpm)低速からの不足のない走りに加え、18.5km/LのJC08モード燃費を実現(従来型は15.0km/L)、実用燃費もかなり改善されているはずだ。(ちなみに、私のクルマの年間平均燃費は11km/L弱)

また従来型Golf Touranで非常に満足しているステアリング・ハンドリングは、新型では一段とリニアで気持ちの良いものになっている。フロントはマクファーソン、リアは4リンクの4輪独立懸架となっていることも貢献しているのだろう。乗り心地の新旧比較も行いたかったので、16インチタイヤ装着のTSI Comfortlineを試乗車に選択したが、新車ということもあってか、新型の方が路面からの突き上げがやや大きいように感じた。

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先進安全技術
新型ゴルフトゥーランでうれしいのは先進安全技術や運転支援システムの充実だ。従来型モデルにおいても、6つのエアバックを含むアクティブ、パッシブセーフティーはかなり充実していたが、新型ではエアバックが9つになるとともに、「全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール」、「レーンキープアシスト」、「ドライバー疲労検知システム」、「プロアクティブ乗員保護」、「プリクラッシュブレーキシステム」、「ポストコリジョンブレーキシステム」、「アクティブボンネット」、そして前述の「後席一体型チャイルドシート」などが、一部グレード限定はあるものの、幅広く採用されている。

新型ゴルフトゥーランを一言でいえば
新型ゴルフトゥーランを一言でいえば、大きすぎず、小さすぎず、ジャストサイズのコンパクトミニバンだ。スライドドアでないことがマイナス要素となる人もいらっしゃるとは思うが、内外装デザイン、走りと燃費、使い勝手などを総合して、目下国産車の中には匹敵するモデルはないと言っても言い過ぎではない。各種の安全技術も大きな魅力で、価格もリーズナブルだ。国産車だとマツダプレマシーが最も近いカテゴリーで、運転することの楽しいミニバンだが、デザインには魅力を感じなかった。間もなくモデルチェンジといううわさもあり、もしそうなれば、是非相対比較を行ってみたい。

試乗車グレード TSI Comfortline
・全長 4,535 mm
・全幅 1,830 mm
・全高 1,660 mm
・ホイールベース 2,785 mm
・車両重量 1,540 kg
・エンジン 直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ(4バルブ)
・排気量 1,394 cc
・圧縮比 10.0
・最高出力 150ps(110kW)/5,000-6,000rpm
・最大トルク 25.5kgm(250N・m)/1,500-3,500rpm
・変速機 自動7段(DSG)
・タイヤ 205/60R16
・タンク容量 60 L
・JC08モード燃費 18.5 km/L
・試乗車車両本体価格 3,170,000円(消費税込)
 (参考:TSI Trendline \2,847,000、TSI Highline: \3,769,000)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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