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第62回 日産ヘリテージコレクション
2015.7.27

今回は、三樹書房・グランプリ出版が中核とり去る7月18日に実現した、「日産ヘリテージコレクション見学会と、学生さん達との意見交換会」に関する簡単なご報告をしたい。まずこのイベントに対する全面的にご理解とご協力をいただいた、日産OBで、日産の歴史を後世に伝える活動に尽力しておられる清水榮一氏と、日産関係者、学生さん達との意見交換会を取りまとめてくれた、いすゞ自動車上野義一氏、更には東海大学の神野巨基氏、望月春希氏のご協力に心から感謝したい。日産座間事業所の一角にあるヘリテージコレクションは、日産がクルマの生産を開始した当初から近代にいたるまでのダットサン、日産、さらにはプリンスの歴代のクルマがずらりと並ぶもので、今では保管台数が400台を超える(展示車両は約300台)、国宝級と言っても良いコレクションだ。

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日産ヘリテージコレクション

「日産ヘリテージコレクション」にあるクルマの収集は、1933年ダットサン12型フェートンをきっかけに、1954に始まったという。以来収集車両が着実に増加、1930年代の各種ダットサンにはじまり、近年までの日産、ダットサン、プリンス車が、座間事業所の一部に、所せましと並べられている。今では保有台数は400台を超え、そのうちの300台強が展示されているが、非常に多くの量産モデルが、愛好されてきたユーザーから寄贈されたもので、展示車のうち7割が自走可能というのも素晴らしい。

私は今回で4回目の見学になるが、回を重ねるごとに展示車両が一段ときれいに整備されていることに感銘した。個別の説明は省くが、以下の写真をご覧いただければ、その規模と概要がご理解いただけるものと思う。一般の方々の見学も、日にち、人数に制約はあるが、インターネットを通じて行うことが可能で、ご関心ある向きには是非とも見学をお勧めしたい。

私の古巣のマツダでは、固定資産税がネックとなり、今までに多くの貴重なレースカーを手放してきたのとは対照的に、「日産ヘリテージコレクション」には、1950年代のオーストラリアラリー参戦車にはじまる各種ラリーカー、かつてモータースポーツ史上を飾ったCカー、更には近年のGT選手権参加車両など、実の多くのレースカーが保管されているのも圧巻だ。

日産ヘリテージコレクションへの提案

このようにコレクションは素晴らしいのだが、事業所内部にあることや、消防法にも起因してか、いつでも自由に見学できる訳ではなく、事前にインターネットを通じて申し込むことが必要で、見学できる人数も限られる。土曜、日曜にはオープンされていないのも残念だ。更に、交通の利便性も良好とはいえない。みなとみらいの一角にでもミュージアムを建設し、休日も含めて一般公開出来れば、観光客はもちろんのこと、修学旅行の訪問先としても大変好ましいところとなり、小、中学生時代からクルマへの関心を養うことのできる貴重な施設となり、更には大幅な増加が予測される海外からの観光客にも興味深い訪問先となるだろう。

みなとみらいが難しければ、座間事業所、もしくは日産の追浜工場敷地内にでも、一般のミュージアム同様、休日の公開も可能な、独立した建物を建設し、それぞれの時代の生活シーンの展示、日産の技術史、モータースポーツ史、日産デザインの変遷などのコーナーを設置し、講演会や、修学旅行生、海外からの来訪者などに対するレクチャーも行うことが出来れば、日本のクルマづくりの歴史を語る上での大変貴重なものになると思う。ミュージアムの一角には各種モデルカーや複製パンフレットを販売するコーナー、軽食やコーヒーなどが楽しめるところなども是非ほしいところだ。

トヨタ博物館は、1900年以前のクルマから自社製品に限らず、非常に多くのクルマを170台近く収集、展示し、小、中学生をはじめ多くの子供たちのクルマやモノづくりへの関心を高めるための各種プログラムを用意していることの意義は大きく、「さすがはトヨタ」といえる博物館だ。また私がこれまでに見たポルシェミュージアム、BMWミュージアムも素晴らしが、それらとは一味違った日産ならではの展示と、プログラムを準備することは十分に可能だと確信する。

加えて是非実現して欲しいのは、横浜の日産本社ショールーム内への「ヘリテージ」コーナーの設定だ。常時10台程度の歴史車をテーマごとに交代で展示、講演会などを開くことが出来れば、日産本社の2階を突き抜けているみなとみらいへの一般通路からエスカレーターで降りて日産本社のショールームを訪れる人の数は間違いなく増加するだろうし、それはまた日産ブランドの強化にとっても意義深いものになると確信する。

意見交換会

見学会後に行われた講演会では、清水榮一氏による「愛しのダットサン:産声と成長」、RJC会員で、元プリンス自動車で活躍された当摩節夫氏による「プリンスの誕生と開発エピソード」という講演の後に、いすずのエンジニア、上野義一氏による「日本のクルマを見つめ直すプロジェクトの紹介」、東海大学学生、神野巨基氏の「今後の自動車文化の展望」、同じく東海大学学生、望月春希の「自動車文化、自動車を後世に」というショートプレゼンテーションが行われた。

この3名の方々の論旨は、上野氏の「若者、市民の代表として、若者のクルマ離れ、モータースポーツ文化の定着、税制問題等に対する政策提言の出来る体制をつくりたい」、神野氏の「クルマ好きの人だけが享受できるクルマ文化から女性の価値観も含めてこれまでとは異なった視点からのクルマ文化の創造が必要」、望月氏の「新旧を問わず好きなクルマに乗れる社会の創造と、子供たちがクルマを楽しめる環境づくりが大切」というものだ。

その後、RJC会員も交えて、1. クルマ離れ、2. クルマ文化の定着に向けて、3.税制、4. カーデザインに関するの意見交換会を行った。今回は十分な時間がとれなかったが、貴重な意見交換会となったので、RJCとしても、今後このような意見交換を是非継続、拡大してゆければと考えている。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

関連書籍
ポルシェ911 空冷・ナローボディーの時代 1963-1973
車評 軽自動車編
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