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第58回 マツダアテンザワゴン、BMW 2シリーズ、シトロエングランドC4ピカソ
2015.3.27

昨年11月に大幅な商品改善が行われ、SKYACTIV-D搭載車に新世代4WDが新しく設定されたマツダアテンザには、これまで試乗する機会がなかったが、このたび4WDワゴンのMT車で長距離評価する機会が作れたので、今回はその短評と、2月初旬に大磯で行われたJAIAの試乗会で試乗したモデルの中からBMW 2シリーズとシトロエングランドC4ピカソに関するご報告をしたい。アテンザはマイナーチェンジとは思えないほど大きな進化をとげており、マツダのブランド高揚への情熱をひしひしと感じとることが出来た。BMWの2シリーズは、BMWブランドとしての初のFF車だが、価格もそれほど高くなく、各市場でBMWの拡販に貢献するに違いない魅力的なコンパクトカーに仕上がっている。シトロエングランドC4ピカソは日本車やドイツ車とは一味違う「おしゃれで魅力的なミニバン」であり国内メーカーにも是非参考にしてほしい1台だ。

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マツダアテンザワゴン4WD
今回のマイナーチェンジはフルチェンジと言ってもよいレベルだ。まず外観スタイルがフロント周りを中心に精悍さが増すとともに、インパネを含む内装デザインが一新され、統一感と質感が大幅に向上した。それ以上に驚いたのが乗り始めた瞬間から感じとることのできたNVH(振動・騒音・乗り心地)の改善だ。新構造の前後ダンパー、フロントロアアームのブッシュ形状の最適化、シートのクッション性向上などにより乗り心地が大幅に改良され、各部の遮音性能の向上によりロードノイズを含む騒音も低減した。同時に先進安全技術も大幅に進化、更には「新世代4WD」とよぶ四駆バージョンがSKYACTIV-Dのセダン&ワゴンに設定された。一連の改善でアテンザの魅力が大幅に拡大した。

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マイナーチェンジの概要
マイナーチェンジにおける進化は限られるのが常だが、今回のアテンザは違う。フロント周りを中心としたデザイン変更により、鼓動デザイン(力強くも美しい動きのエネルギーをクルマに再現し魂を吹き込むことを目指したデザイン)が進化、インパネとセンターコンソールの造形の変更などにより内装の統一感と質感が大幅に向上した。前後ダンパー、フロントロアアームのブッシュ形状の最適化、シートのクッション性向上などにより乗り心地が改善され、更には各部の遮音性能の向上によりロードノイズを含む騒音も低減した。日本車初の「ハイビームのままで走行しても対向車に眩惑させることのない防眩ハイビームシステム」の採用を含む安全性向上なども見逃せない。またSKYACTIV-D搭載モデルに、前後輪の駆動力配分を常に最適にコントロールすることにより走破性と燃費を両立することが出来る新世代4WDが導入された。これら一連の改善によりアテンザの市場は間違いなく拡大しそうだ。

内外装デザイン
水平基調のフロントグリルフィンと立体的なランプ周辺デザイン、更にはLEDリアコンビネーションランプなどによる鼓動デザインの進化はアテンザの外観の質感と魅力の向上に大きく貢献している。内装デザインの進化はそれ以上で、横方向にすっきりと広がる統一感のある一新されたインパネ周りとそのディテールは、ドライバーはもとより、このクルマに乗る人すべてに心地よい開放感と上質感を提供してくれる。電動パーキングブレーキの採用によりサイドブレーキ操作性が大幅に向上、登坂発進時のホールド機能も追加され、登坂発進も容易になった。ただし注文もある。更新されたNAVIの機能は別として、地図の質感や道路の太さなどの分類が不十分で、NAVIの地図からは「上質感」が感じられないのが残念だ。またステアリングホイール握り部分の触感は悪くないが、ステッチ部分の質感はアウディ・VW系のモデルの方がはるかに上で、是非これらにも早急に取り組んで欲しい。

走りと燃費
SKYACTIV-Dの走り関してはこれまでもいろいろお伝えしてきたが、今回6速MTとの組み合わせに改めて惚れ込んだ。1000rpm以上ならクルーズ可能で、1500rpmあたりから十分なトルクが得られ、その気になれば5000rpm以上までスムーズに回るこのエンジンはクリーンディーゼルの中でも圧巻といえる存在だ。加えて6速MTは、ストロークや作動フィールなどの面で世界的にみてもベストなFF用MTと言っても過言ではなく、このエンジンと変速機の組み合わせによる走りの楽しさには下手なスポーツカーは及ばない。SKYACTIV-Dを搭載したスポーツカーの実現も期待したいところだ。都内の一般道、箱根往復、乙女峠のハードな登坂などを合わせた340kmの満タン法による実測燃費は15.1km/Lとなった。ちなみに高速では20~21km/L、都内では12~13km/Lだった。

ハンドリングと乗り心地
アテンザのハンドリングはマイナーチェンジ以前から優れていたが、いかんせん乗り心地、中でも低速時の乗り心地には大いに不満があった(第37回参照)。そこを今回のマイナーチェンジでは見事に払しょく、あらゆる速度領域で実に気持ちの良い走りが可能となった。しかも装着されていたタイヤは225/45R19だ。箱根乙女峠でのハンドリングもクイックすぎず、リニアで、存分に楽しむことが出来た。ただし19インチタイヤに関しては一こと言っておきたい。サーキット走行は別として、アテンザで19インチタイヤの性能を公道上でフル活用するシーンは限りなくゼロに近いことは疑問の余地がなく、一方で摩耗後のタイヤ交換やスタッドレスタイヤの装着コストなどのユーザーの経済的負担を考えると、このモデルではマックス18インチが適切ではないか? 大きすぎるタイヤの選択に改めて警鐘を鳴らしたい。

試乗車グレード アテンザワゴン4WD XD Lパッケージ
・全長 4,805 mm
・全幅 1,840mm
・全高 1,480mm
・ホイールベース 2,750mm
・車両重量 1,590kg
・エンジン 直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ
・排気量 2,188cc
・最高出力 175ps(129kW)/4,500rpm
・最大トルク 42.8kgm(420N・m)/2,000rpm
・駆動方式/変速機 オンディマンド4WD/6MT
・タイヤ 225/45R19
・燃料消費率 JC08モード燃費 20.4km/L
・試乗車車両本体価格 4,023,000円(消費税込)


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BMW 2シリーズ
BMWは、長きにわたってFRレイアウトのクルマを作り続けており、今回のFF 化には疑問をもつ方もあろうが、世界市場で販売を拡大してゆくためには小型車のFF化は避けられないはずだ。全長、全幅、WB(ホイールベース)などはスバルXVやゴルフⅦ に近く、日本仕様は全高を1550mmにおさえている。外観スタイルは実用ハッチバックモデルとしては大変魅力的で、内装デザインも造形、質感共に秀逸だ。室内居住性に不足はなく、後席はスライド&リクライニングも可能で荷室も広い。エンジンは2.0L 4気筒ターボもあるが、今回試乗したのはミニにも搭載されている1.5L 3気筒ターボだ。1,250rpmから最大トルクが得られ走りに不足はないが、3気筒ゆえ市街地や低速領域での振動は若干気になる。変速機は1.5Lが6AT、2.0Lは8ATだ。総じて2シリーズアクティブツアラーは大変魅力的なファミリーカーに仕上がっている。


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商品概要
BMWグループとしては2001年以来ミニでFFモデルを提供、一方ではBMW=FRという図式をキープしてきた。しかし世界市場での更なる販売拡大を考えるとファミリーむけ実用車も無視できないのは当然で、ミニで培ってきた技術、コンポーネントを活用しつつ、FFのファミリーカーとして誕生したのが2シリーズだ。2シリーズといえばFRのクーペもあり、1シリーズは依然としてFRだが、長期的にみると2シリーズ以下はFF化の道をたどってもおかしくない。今回導入されたFFのアクティブツアラーは全長、全幅、WBがスバルXV、VWゴルフⅦに近く、日本仕様の全高は立体駐車場への対応が可能な1550mmにおさえられており、日本市場をかなり意識したモデルであることは明らかだ。エンジンは3気筒1.5Lと4気筒2.0Lのいずれもターボ仕様で、価格は税込みで332万円から494万円だ。

内外装デザインと居住性
外観スタイルに対する評価は分かれるかもしれないが、一目でBMWとわかるフロントのキドニーグリル、実用車でありながらスポーティーなプロポーションとサイド&リアビューなどが私にとってはなかなか魅力的だ。それ以上にひきつけてくれるのがBMW然とした内装デザインで、インパネ周り、メーターデザインも大変好感がもてる。ベージュ内装の質感は同クラスの競合車を大きく引き離している。リアシートが130mmスライドしシートバックがリクライニング可能なこと、後席の前方視界が良好なこと、5人乗車でも十分な荷物が収容でき、4名乗車でもスキーなどの長尺物が積載可能であることなど、室内居住性や使いやすさもファミリーカーとしてまったく不足ない。

走りと燃費
今回の短時間評価では十分な評価が出来ていないが、1.5Lの走りとしては1,250rpmから最高トルクの出ることもあり不足は感じなかった。一方で3気筒ゆえの振動は高速主体の欧州では問題ないとしても、市街地を含む低速走行が主体の日本市場ではやや気になるところだ。実測燃費は計測できていないがJC08モード燃費が16.8km/Lなので、かなり良好な実測燃費が期待できそうだ。

ハンドリング、乗り心地など
ハンドリングはオンセンターフィールも良く、そこから小舵角を与えた場合の動きもリニアで気持ち良い。スポーツモードでは気になった低速時のごつごつ感も、コンフォートモードにするとロールは大きくなるが乗り心地はほとんど気にならず、総じてそれなりのレベルにある。ただしロードノイズがかなり気になり、このあたりにはまだ改善の余地が残されていると思う。

試乗車グレード BMW 218i Active Tourer
・全長 4,350mm
・全幅 1,800mm
・全高 1,550mm
・ホイールベース 2,670mm
・車両重量 1,460kg
・エンジン 直列3気筒DOHCターボ
・排気量 1,498cc
・エンジン最高出力 136ps(100kW)/4,400
・エンジン最大トルク 22.4kgm(220N・m)/1,250-4,300rpm
・駆動方式/変速機 6速AT
・タイヤ 205/55/R17
・燃料消費率 JC08モード燃費 16.8km/L
・試乗車車両本体価格 3,810,000円(消費税込)

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シトロエングランドC4ピカソ
毎年2月に行われる輸入車組合主催の試乗会では、フレッシュな刺激を与えてくれるモデルに必ず遭遇するが、シトロエングランドC4ピカソはその中の1台だ。日本車ともドイツ車とも違うフランス風の「個性的でおしゃれ」な内外装デザインをまとった魅力的な7人乗りミニバンで、全長、全幅、全高は導入されたばかりの新型ゴルフトゥーランに非常に近い。室内空間は3列目もほぼ不足はなく、パノラミックフロントウィンドウとグラスルーフは、後席の人にも通常のクルマでは楽しめない前方、上方の景色を提供してくれる。エンジンは1.6Lツインスクロールターボ付き4気筒で、6速ATと組み合わされるが、走りに全く不足はない。価格もなかなか魅力的だ。

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商品概要
日本製のミニバンは「人とものを乗せる移動道具」というコンセプトで開発されることが多いためか、ドイツ製ミニバンも「実用性」に重点をおくためか、いずれも「おしゃれさ」をあまり感じないが、フランスの芸術家パブロ・ピカソの名前を冠したシトロエングランドC4ピカソは違う。まず外観スタイルが個性的で洗練されている。また内装はインパネデザインもモダンで質感豊かなものとなっている上に、居住性への配慮から全7席を独立したシートとしている。超軽量の新開発プラットフォームに搭載される1.6Lのツインスクロールターボエンジンにはアイシン製6速ATが組み合わされている。

内外装デザインと居住性
Aピラーからリアエンドまで伸びる"C"型のグレーのルーフライン、彫の深い個性的なサイドビュー、LEDを活用したフロント&リアランプなどにより、スタイリッシュな外観スタイルが実現している。内装ではフルディジタルのメーターパネルを採用したインパネデザインがモダンで質感豊かなものとなっており、タッチ感も良好だ。シトロエンならではのスーパーパノラミックフロントウィンドウと、グラスルーフを有効に活用して、後席の乗員にも通常のクルマでは楽しめない前方、上方の景色を提供してくれるのは日本車にもドイツ車にもない魅力だ。3列目シートへの乗降性への配慮や、ヘッドレストを外さないでフラットフロアが実現するのもうれしい。

性能、走り感
1.6Lのツインスクロールターボエンジンは1,400rpmから24.5kgmの最高トルクの得られるもので、"スポーツモード"はないが、1,550kgの車体を全く不足なく引っ張ってくれる。アイシン製新世代6速ATも非常にスムーズだ。燃費はJC08モード燃費が14.6km/Lなのでとりたてて良いとは言えないが、肝心なのは実燃費なので、新型VWトゥーラン導入後には是非比較評価を行い、実測燃費も計測してみたい。

ハンドリング、乗り心地など
グランドC4ピカソとC4ピカソに共通するのが超軽量のプラットフォームだが、ハンドリングはセンターフィールがよく、そこからのレスポンスもリニアで気持ち良い。乗り心地も良好だ。もう少し時間をかけて試乗する機会がもてればもう一歩踏み込んだ評価をしたいと思っている。

試乗車グレード シトロエングランドC4 ピカソ セダクション
・全長 4,600 mm
・全幅 1,825mm
・全高 1,670mm
・ホイールベース 2,840mm
・車両重量 1,550kg
・エンジン 直列4気筒DOHCターボ
・排気量 1,598cc
・最高出力 165ps(121kW)/6,000rpm
・最大トルク 24.5kgm(240N・m)/1,400-3,500rpm
・変速機 6AT
・タイヤ 205/60R16
・燃料消費率 JC08モード燃費 14.6km/L
・試乗車車両本体価格 3,539,000円(消費税)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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