1990年代以降の車名には造語が多い。意味のあることばは使い切ったからである。意味のある単語を採用した車名の中には、テーマを持ったものがあって面白い。今回はそのことについて紹介する。
初期の車にヨーロッパでは馬力や課税馬力を車種名(以下車名)とした例が多かったのに対し、アメリカではアルファベットをAから順番に使うメーカーが多かった。この場合、同じ車名が複数存在することになって混乱しそうだが、同一ブランドで同時に複数の車種を持つことは少なかったため、ブランド名だけで事足りていたものと思われる。そうした車名には現在のような役割はほとんどなかったと言っていい。
1920年代半ばから、記号的なものでない車名を採用し始めるメーカーが現れたが、1930年代まではごく少数に限られていた。そのひとつがロールスロイスである。
(1)ロールスロイス(イギリス)
ロールスロイスの現在の市販車種はファントム(Phantom)とゴースト(Ghost)。車名の意味は"幻"と"幽霊"。いかにも最高級車にふさわしい名前だ、という人はまずいないだろう。実はこれらの車名にはいきさつがあるのだ。
ロールスロイス社(以下RR社)が創業した1904年当時の車は振動と騒音がひどく、信頼性も低かった。設計者ヘンリー・ロイスは、持ち前の完璧主義で1906年に40/50HP(これが車名)を完成させた。それは振動が極めて少なく、幽霊のように静かに走る車だった。
翌年、RAC(王立自動車クラブ)主催の「2000マイル(約3200km)スコティッシュ・トライアル」が開催されることになり、RR社は12番目につくられた40/50HPで参加することにした。その車は特別に銀色に塗られ、ファイアウォール(エンジンルームと運転席の間の仕切りパネル)に、この車の愛称「Silver Ghost」と記されたプレートが取り付けられた。
トライアルでは優秀な成績をおさめ、金賞を受賞した。RR社は引き続き、RACの係員を監査官として同乗させて、ノンストップ(燃料給油等やむをえない停車を除く)長距離耐久テストに臨んだ。そして約1万5千マイル(約2万4千km)もの距離を走破し、分解点検を受けた。部品の消耗や修理を必要とした部品は取るに足りないもので、シルバー・ゴーストは当時としては驚異的な信頼性を示した。その結果、イギリスの権威ある自動車専門誌AUTOCARは、ロールスロイスを"Best car in the world"として賞賛した。RR社がこれを宣伝に活用したことはいうまでもない。
【ロールスロイス・シルバーゴースト (1907年・イギリス)】
フランクリンミント製の1/24モデル(当館蔵)。ファイアウォールに"THE SILVER GHOST"と記したプレートが再現されている。本来、シルバーゴーストはこの1台だけの愛称だった。この模型はフランクリンミントのベストセラーになったそうだ。
その後1925年まで生産された40/50HPを、世間はシルバー・ゴーストと呼んだが、RR社はそれを認めていなかった。シルバー・ゴーストは耐久テストに用いられた銀色の1台だけの愛称だったからである。しかし、1925年に40/50HPの後継車ファントムが登場するに及んで、40/50HP全体をシルバー・ゴーストとして認めた。もちろん、ファントムはゴーストに関連のあるものとして選ばれた名前だった。そして、ゴーストに始まったロールスロイスの車名には、静かで実態のないものが使われるようになったのである。
・シルバー・ゴースト(1906-1925、2010-)
・ファントム(1925-1929、1929-1935、1936-1939、1950-1956、1959-1992、2003-)
・レイス(Wraith=生霊 シルバー・レイスを含む)(1938-1939、1946-59)
・シルバー・ドーン(Dawn=夜明け、兆し)(1949-1955)
・シルバー・クラウド(Cloud=雲)(1955-1965)
・シルバー・シャドウ(Shadow=影)(1965-1980)
・シルバー・スピリット(Spirit=精神)(1980-1998)
・シルバー・セラフ(Seraph=天使)(1998-2002)
(2)ランチア(イタリア)
ランチアの現行車種は、イプシロン (Ypsilon)、ムーザ(Musa)、デルタ (Delta)、フラヴィア(Flavia)、テーマ (Thema)、ヴォイジャー (Voyager) だが、この中のデルタは9年ぶりに2008年に、フラヴィアは36年ぶりに2011年に復活したものだ。デルタはdのギリシア文字で、フラヴィアはローマ街道の名前のひとつだ。
1906年創業のランチアは、まず車名にギリシャ文字を使い始めた。アルファ、ベータ、デルタ、ガンマ、カッパ、ラムダ等々現在までに10文字以上を使用している。この中で、1922年から1931年まで生産されたラムダは、モノコック構造や量産車初の前輪独立懸架の採用などで自動車技術史上に大きな足跡を残している。ギリシャ文字の初めから4番目までのアルファ、ベータ、ガンマ、デルタは数学で用いられる記号の中にあるので、これらを車名として聞いたとき、それはすぐにギリシャ文字を使っていることがわかる。だが、ランチアがもうひとつ車名のテーマ(主題)として持っているローマ街道の名前に気づく人は少ないだろう。といっても5車種しかないが、私にとってはいちばん印象深い1960年代のランチアの名前だから、敢えて知っていいただきたいと思って紹介させてもらう。現行モデルについては割愛。
・アウレリア(Aurelia)(1950-1958)
中型乗用車。設計者は天才的な自動車技術者ヴィットリオ・ヤーノで、ランチア初の戦後型新型車。2ドアクーペモデルにはグランツーリスモを略した「GT」を量産車として世界で初めて付けた。リアアクスルにギアボックス・クラッチ・デファレンシャルが一体化したトランスアクスルレイアウトを採用したことも特徴。
・アッピア(Appia)(1953-1963)
小型乗用車。1922年にラムダに採用してから使い続けてきた、スライディングピラー式前輪独立懸架を採用した最後のモデル。高い工作精度と洗練された簡潔なメカニズムにより、信頼性の高さを誇った。
・フラミニア(Flaminia)(1957-1970)
大型高級乗用車。技術的に最大の特徴は1920年代の傑作車ラムダ以来のスライディングピラー式前輪独立サスペンションを通常のダブルウイッシュボーン式に改めたこと。ブレーキは、最初の約500台を四輪ドラムで生産後、当時まだ珍しい4輪ディスクに変更された。イタリア大統領の公用車などに用いられた
・フラヴィア(Flavia)(1961-1974)
中型乗用車。大衆車アッピアと高級車フラミニア間の中級車として登場。アルミニウム製水平対向4気筒エンジン、4輪ディスクブレーキを持つ前輪駆動(FWD)車という、当時としては極めて先進的な設計を持っていた。日本では、水平対向4気筒エンジンによるFFはスバル1000が有名だが、ランチアはそれより5年早くやっていた。
【ランチア・フラヴィア(1960)】
この外観からは進歩的な中身を想像できない。
・フルヴィア(Fulvia)(1963-1976)
小型乗用車。フィアットの傘下に入る前に設計されたランチアで、メカニズム、工作水準、スタイルはその名にふさわしいものを備えていた。フラヴィア同様のFF車だったが、エンジンは水平対向式ではなく、ラムダ以来伝統の狭角V4をDOHC化したものを採用。フラヴィア同様、リアにもディスクブレーキを装備していた点は他社をはるかにリードしていた。
(3)オペル(ドイツ)
1899年に自動車づくりを始め、1929年以降はゼネラル・モータース(GM)の100%子会社となったオペルの現行車種は、乗用車でアダムからザフィーラまで12車種ほどあるが、1936年に登場したカデットから、1994年に姿を消したセネターまで、主要車種の名前に軍隊の階級名や、公務員の職種名などを用いていた。
・カデット(Kadett)(1936-1940、1962-1991)小型大衆乗用車。カデットは士官候補生を意味。
カデットは1992年以降、イギリスのGM子会社ヴォクソール社がカデットのイギリス版に使っていたアストラに統一され、現在に至る。名前を統一したのは、GMヨーロッパによる、同じ車の車名を統一するという方針が決められたからとされるが、いつまでたっても「士官候補生」のままでいるのは好ましくなかったからではないか、という声も聞かれた。この話に通じることで思い出すのがトヨタ・スターレットだ。スターレットは1973年から1999年まで生産された後、ヴィッツに道を譲った。トヨタのウエブサイトで、スターレット(Starlet)は「小さな星」を意味すると紹介しているが、この単語には「スター(女優)のたまご」という意味もある。トヨタの欧州代理店の中には、「いつまでたってもたまご」という意味の車名は変えた方がいいという意見があった。
【オペル・カデット(1979)】
時代の潮流に乗ってFF2ボックスとなったオペルの、VWゴルフ・フォードエスコート対抗車。
・アドミラル(Admiral)(1937-1939、1964-1977) 大型高級車。アドミラルは提督の意味。
1930年代後半に伸びていた、ホルヒやメルセデスベンツ、マイバッハ等の3.5リッター級高級車対抗として投入されたかに見えたが、それらよりは安かった。2代目は、1964年に登場した4代めカピテーンの上級モデルとして登場した。
・カピテーン(Kapitän)(1938-1970) 大型乗用車。カピテーンは英語のCaptainで船長・艦長の意味。
1964年のモデルチェンジで、アドミラルを上級グレードとして、さらにその上に最高級車としてディプロマートを設けた。すなわち、プラットフォームを共用する3姉妹車が構成された。
・ディプロマート(Diplomat)(1964-1977) 大型最高級車。ディプロマートは外交官の意味。
1964年のカピテーンのモデルチェンジで誕生した3姉妹車のひとつで最高級モデル。実質的には、GM本国アメリカのシボレー・シェヴェルのオペル版で、V8 4.6リッターエンジンを搭載していた。
・コモドーレ(Commodore)(1967-1982) 中型乗用車。コモドーレは准将(大佐と少将の間)の意味。
オペルには、1953年から1986年まで生産した中型乗用車のレコルト(Record、4気筒エンジン)があったが、1967年にレコルトに6気筒エンジンを搭載してつくられたのがコモドーレだ。
・セネター(Senator)(1977-1994) 中型高級乗用車。セネターとは上院議員のこと。
最上級車ディプロマートの後継車として開発され、BMW・5シリーズ、メルセデスベンツW123(コンパクトクラス)およびミディアムクラス、アウディ100/200などをライバルとした。1977年に登場した初代レコルトのプラットフォームを流用してつくられた。
(4)ロータス(イギリス)
ロータスはスポーツカーの有名ブランドだが、その現行車種(ロードモデル)は、エリーゼ(Elise)、エキシージ(Exige)、エヴォーラ(Evora)で、いずれの車名もEで始まる。これがロータス車の車名の特徴だ。オペルまでは、全部の車名が特定のテーマによってつけられているわけではなかったが、ロータスの場合は徹底していて、Eで始まる車名を使い始めてからは、コンセプトカーを含めてすべての車名がEを頭文字としている。
それは1956年から1958年まで270台ほど生産されたレーシングカーのロータス・イレブンに始まる。イレブンは、ルマン24時間レースをはじめとして、数々のレースで輝かしい戦績(1100ccクラス)を残し、ロータスのかつてない成功作となった。イレブン以前のマシーンには開発順番の番号を与えてモデル名としていたが、11ではElevenと表記された。その理由は明らかにされていないが、11の表記はローマ数字のⅡや、アルファベットのIをふたつ並べたものにも見えて、アラビア数字の11と読んでもらえない恐れがあったからではないかと推測する人がいる。とにかく、イレブンはロータスにとって縁起のいいモデルとなった。
レーシングカービジネスでスタートしたロータスだが、1957年にロードモデルビジネスにも乗り出した。最初の市販車となったのは、フェンダーを外せばオープンホィールのレーシングカーに早変わりするセブンと、FRP製フルモノコッククーペボディを持つエリートだった。セブンは開発順番の番号そのままの命名だったが、クーペは違った。ロータス創業者のコーリン・チャップマンとヘイゼル夫人は、成功作イレブンと頭韻を踏む単語の中からエリートを選んだ。これ以降ロータスの新型車にはEの頭文字を持つ単語が採用されてきている。
・エリート(Elite)(1957-1963、1974-1982) 意味は精鋭、エリート。
オールFRP製のモノコックボディを持つロータス初の市販クーぺモデル。空力特性にすぐれる美しいスタイリング、軽量なボディ、1200ccながら高出力のエンジンによる高い動力性能と卓越した操縦性を特徴とし、レースにおいてもルマン24時間ほか多くのレースで大活躍した。2代目は初代とは全く異なる、ロータス初のフル4シータースポーツカーとして、ワゴンタイプのボディをまとって登場した。
【ロータス・エリート(1957-1963)】
エリートは、Eを頭文字にする車名の最初のモデル。完成車より安く買って、完成するまでの過程を楽しめる組立キットでも売られた。トヨタ博物館には寄贈してもらったエリートがあり、11月30日(土)、明治神宮外苑絵画館前で開くクラシックカーフェスタで走行披露する予定。
・エラン(Elan)(1962-1975、1989-1995) 意味は気力、鋭気、活力。
エリートのFRPモノコックボディは生産性が低く、強度的な弱点があったこと、また販売上オープンモデルを必要としたことなどから、エリートの後継車として、バックボーンフレームを持つオープンボディのモデルが開発され、エランと名づけられた。
・ヨーロッパ(Europa)(1966-1975、2006-2010) ギリシャ神話で、ゼウスに愛されたフェニキアの王女。
スーパーカーブームを巻き起こした『サーキットの狼』で、主人公風吹裕矢の愛車として有名なミッドシップエンジンのスポーツカーである。ミッドシップエンジン車はレーシングカーや超高性能スポーツカーにしかなかったが、ヨーロッパはそれを採用して庶民にも手の届くスポーツカーとして開発された。エンジンは量産車ルノー16用の1.5リッターエンジンが採用され、当初はフランス向け左ハンドル車のみで、イギリス国内では売られなかった。
・エクラ(Eclat)(1975-1982) 意味は大成功、名声。
2代目エリートをベースにしたファストバックスタイルの2+2クーペ。
・エクセル(Excel)(1982-1992) 優れるという意味。
エクラの後継車。当初は、エクラ・エクセルとして発売されたが、1983年からエクセルが正式名称となった。当時、提携関係にあったトヨタの部品を採用し、5速マニュアルトランスミッションや足回り部品の一部にトヨタ製を採用して、コストダウンと信頼性向上が図られた。
・エスプリ(Esprit)(1976-2004) 意味は精神、機知。
基本デザインを変えずに改良を重ねて28年間に1万台以上が生産され、海中では潜水艦に変身するボンドカーとしても話題になったため、一般の人にとっていちばん知られているロータス車ではなかろうか。ライトウェイトスポーツカー主体だったロータス社が、本格的にスーパースポーツカーの分野に乗り出した最初のモデルである。ボディデザインは、当時意気盛んだったジウジアーロが担当した。
・エリーゼ(Elise)(1996- )当時ロータス株主であったブガッティ会長ロマーノ・アルティオーリの孫娘の名前Elisa(エリーザ)に由来。
ミッドシップエンジンのロードスタータイプ小型スポーツカーで、かつてロータスが得意としたライトウェイトスポーツの再来といえる。航空技術を取り入れた接着式のバスタブタイプのアルミ製フレームに、FRP製ボディを載せた構造により、車両重量は約700kgと極めて軽い。改良を重ねて、現在はフェイズⅢに発展している。
・エキシージ(Exige)(2000- ) 車名の意味は不明。
ワンメイクレース用に開発されたエリーゼのレース仕様車をベースに、ロードモデルのクーペとしたものである。2004年以降のMK-2にはトヨタ製1.8Lエンジンが搭載された。
・エヴォーラ(Evora)(2009- ) ポルトガルの歴史ある町エヴォラ(Évora)に由来。
エリーゼ以来13年ぶりとなる完全新設計の2または2+2シーターのミッドシップエンジンスポーツカーで、エリーゼよりひとまわり大きなボディを持つ。
以上は市販モデルだが、モーターショーに出展されたコンセプトカーにもEで始まる車名が採用された。
・エトナ(Etna)(1984) エトナ山(シシリー島の活火山)から。
・エモーション(Emotion)(1991) 感動。
・エンジョイ(Enjoy)(2003) 楽しむ。
(5)フォルクスワーゲン(ドイツ)
フォルクスワーゲン乗用車の現行車種は、アップからフェートンまで15車種もある。タイプ1ビートルの後に登場した車種には、風や海流からとった名前が採用されたものがある。
・パサート(Passat)(1973- ) ドイツ語で貿易風を意味。
ビートルに代わる車種として模索された中で1973年に生まれたモデルで、アウディ80の姉妹車。デザインはジウジアーロ。FFやハッチバックの採用がVWとしては真新しかった。
【フォルクスワーゲン・パサート(1973)】
ゴルフより一足早く登場した新世代VWの第一弾。スタイリングはジウジアーロ。ゴルフにも採用されるバトレスタイプリアピラーが2ドア車で確認できる。
・ゴルフ(Golf)(1974- ) ドイツ語でメキシコ湾流を意味。メキシコ湾流には貿易風も関わるため、風と全く無関係の言葉ではない。
実質的なビートルの後継車。あまりにも有名な車であるため説明は省略。
・シロッコ(Scirocco)(1974-1992、2008- ) 北アフリカの砂漠地帯から地中海地方に吹き込む、粉塵を含んだ熱風の総称
ビートルベースのスポーティモデルとしてカルマンギアクーペがあったが、その後継車としてゴルフをベースにつくられたのがシロッコ。ただ、ゴルフに先行して登場した。デザインはゴルフのデザイナー、ジウジアーロ。
・ジェッタ(Jettta)(1979- ) ジェット気流に由来。
ゴルフに独立したトランクを設けてスリーボックススタイルのセダンとしたのがジェッタで、3代目(1992)以降は仕向け地によってヴェントやボーラなどの車名も使用されている。
・ヴェント(Vento)(1992-1998) 名前の由来はポルトガルからイタリアに吹く風。
・ボーラ(Bora)(1999-2006) アドリア海沿岸やギリシャ、ロシア、トルコの一部で冬に断続的に吹く北風ボーラに由来。
ボーラはアジア地域と欧州における車名であり、北米ではヴェント、ボーラともにジェッタを名乗っていた。
(6)フォード(アメリカ)
フォードについては多少無理があるかもしれないがご容赦を。フォードで紹介するのは馬と牛にちなんだ車名。フォードがアメリカのベビーブーマー(日本の団塊の世代)をターゲットに開発したマスタングは大ヒットした。マスタングとはアメリカに生息する野生馬で、車より先に、第二次大戦で戦闘機のマスタング(日本ではムスタングと紹介された)が活躍し、一躍その名を世界にとどろかせた。フォード車には馬と牛に関係する車名があるので紹介する。
・マスタング(Mustang)(1964- ) 意味は野生馬。
フォード初のコンパクトカー、ファルコンのプラットフォームを流用したスポーティーカー。
【フォード・マスタング(1964)】
低廉なスポーティカーのマスタングはベビーブーマー世代に大歓迎され、ポニーカーブームを巻き起こした。アメリカでこの種の車がポニーカーと呼ばれるようになったのはマスタングに由来する。コンパクトなマスタング(野生馬)⇒ ポニー(小形の馬)というわけだ。実は、アメリカ初のポニーカーはマスタングより2週間早く登場したプリマス・バラクーダだったが、カマス(魚)よりポニーが人気者になってしまったのだ。なお、日本ではスペシャルティカーというカテゴリー名がつけられたが、これは日本でしか通用しない。
・ブロンコ(Bronco)(1966-1996) 意味は北米西部平原産の(半)野生の馬。
コンパクトなSUVで、ジープCJ/チェロキーに対抗して造られが、SUVが乗用車代わりに使われるようになったため、エスケープやエクスプローラーに引き継がれた。
・マヴェリック(Maverick)(1969-1977) (所有者の)焼き印のない牛。
1960年に登場したフォードのコンパクトカー、ファルコンの後継車。
・ピント(Pinto)(1971-1980) 白黒のまだら模様の馬。
フォルクスワーゲンや日本製小型車に対抗するために開発されたサブコンパクトカー。
・トーラス(Taurus)(1985- ) 牡牛座。
フォードの基幹車種LTDの後継車として開発されたモデルで、先進的なデザインと充実した装備、日本車やドイツ車には無いベンチシートやホワイトリボンタイアを用意するなど、アメリカ人向けの企画が功を奏し、アメリカやカナダで記録的なセールスとなった。
以上のほかに、闘牛に関連した車名の多いランボルギーニもありますが、歴史が新しく、ご存じの方が多いと思われるため省略させていただきます。
本稿は「テーマ編」としましたが、次回ちがう切り口での車名を扱うわけではありません。以前、トヨタ博物館紀要に「数字編」と「アルファベット編」をまとめましたので、ご興味をお持ちの方はお問い合わせください。