第36回 江戸時代の間男

 最近、世の中が有名人の不倫ニュースでさわがしいです。江戸時代だったら、夫は姦通の現行犯を捉えて斬り殺しても良い、という恐ろしい決まりがありました。
 「寛保三年極」という昔の法律的な文書には
「一、密通之男女共ニ夫殺シ候ハ、紛レ無キニオイテハ構イ無し」
とありました。「殺し候」ってかなり怖い言葉です。いっぽう、男性は妾を囲ってもおとがめないのに不公平です......。とにかく、当時の不倫は命がけで間男に関する川柳も多く残されてます。『江戸艶笑小咄と川柳』(西尾涼翁著・太平書屋)から引用させていただきます。

「外へ出るふりで亭主は縁の下」
まるで亭主が間男のように隠れています。
「間男と亭主抜き身と抜き身なり」
間男は男性器を露出した状態で、亭主は刀を抜いています。迫真のシーンながらも笑える句です。
「五両で己が首を買う大たわけ」
「間男のからだ一尺が一両」
首を斬られるくらいなら、お金で解決するケースもありました。一両13万円位という説があるので、65万円位でしょうか。素人相手でかなり高くつきました。
それでもやめられないのは
「間男をするに等しき鰒(ふぐ)の味」
と、危険と隣り合わせの快感を味わえたからでしょう。
「間男の不首尾こぼしこぼし逃げ」
と、文句をたれ、体液をまき散らして逃げて行く姿には百年の恋も醒めてしまいそうです。
「為になる間男だからしたと言う」
と、開き直って弁解するやり手の女房もいました。

 現代においても不倫によって社会的な地位を失ったり、炎上して世間に断罪されたりと、制裁が待っています。そんな時、江戸時代の先人のように川柳を詠んだりすれば、何かやらかしても少し気がまぎれそうです。川柳の笑いと脱力感を、バッシング好きの現代人ももう一度取り戻すべきかもしれません。

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参考文献:『江戸艶笑小咄と川柳』(西尾涼翁著・太平書屋版)