11、
「傾城江戸方格」というシリーズ物の一枚で、いろは順で、ひらがながふられているらしい。「う」は水道橋になっている。水道橋は、小石川御門の東、本郷から稲荷小路(三崎町)へ渡す神田川に架かった橋で、少し下流に神田上水の
合わせ鏡で、襟足に手をやり、白粉化粧の出来具合を見ているのは、新吉原江戸町二丁目にあった丁子屋の遊女唐歌で、足元にあるのが、白粉の「美艶仙女香」である。たぶん、白粉で襟足を燕の尾のように整えたところであろうか。首を長く見せるのも美人の条件の一つである。
また、松竹梅が描かれた鏡台は蒔絵であろうか、化粧道具の牡丹刷毛、白粉の容器が見えている。ただ、鏡台に架かっている柄鏡は、普通、同じ模様の柄鏡が付いていると思うが、ここでは、黒地に桜が描かれ、唐歌が左手で持っている柄鏡と合わせ鏡になっているのだろう。
着ている着物は中着であろうか、黒地に
12、
女性の半身像を描いた揃物で10図あるといわれている。「町藝」とは芸者のことであろう。大きな潰し島田髷に鼈甲製の櫛。長い棒のように見えるのは
因みに、簪は基本的には、挿す場所が決まっていない。
この芸者、右手に巻いた懐紙で化粧直しをしているのであろうか。左手には懐紙を巻いた懐紙入れが見えている。着物は大小の
そして、二枚重ねの
考えみると、鏡も見ずに、慣れた手つきで化粧直しと思ったが、本格的なものではなく、そっと白粉を押える程度であろう。水で溶いた白粉を下手に直すと、白粉が
右を向いて、何かをじっと見ているのは気になるが、仲間と話に夢中になっている、そんな一瞬かもしれない。
上にある、扇形のこま絵には、桜の紋の入った着物と帯であろう、きちんと畳んである。当人のものか分らないが、なにかきっぱりとした芸者のように感じるのは、私一人であろうか。
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