江戸時代は性愛文化が発展した時代で、もはやエロ時代と言ってもいいくらいです。性欲が減退気味の現代人は、江戸時代から学べるものがたくさんありそうです。
以前から江戸時代の春画などには興味を持っていましたが、今回はじめて庶民の古川柳の存在を知りました。庶民文化の研究では第一人者でいらっしゃる渡辺信一郎先生の著書「江戸の艶本(えほん)と艶句(ばれく)を愉しむ」(別名:蕣露庵主人名義)には、春画以上に刺激的な句がたくさん収められています。
まずソフトな方からご紹介しますと......
「いい女見たい所が一つあり」
ストレートすぎる男子の欲求。江戸時代は女性器への興味や関心がかなり高かったようです。モザイクや墨で覆い隠され、穢れたもののように取り扱われている現代よりも、よほど恭しく扱われていたような印象です。
「赤貝が口を開いて嫁逃げる」
「柏餅似たとは下女がふざけなり」
こちらも女性器にまつわる句です。卑猥な赤貝に思わずその場から逃げる純情な奥さんと、柏餅に似ているとふざける下女のが対照的です。下女とか下男という単語には一抹の興奮を覚えます。
「白魚の力帆柱引き起こし」
白魚が女性の手で、帆柱は男性器のメタファーですが、とても文学的な表現で、磯の香が漂ってくるようです。
「蛸と麩を出してもとなす出来合茶屋」
女性の名器は「蛸」、男性の名器は「麩」と、当時表現されていたようです。食材のチョイスが風流です。
ちなみに、男性器には「麩」以外にも「雁」「反」「傘」「赤銅」といった分類が10種類ほどあります。現代の分類よりも細かくて、男性器への愛やリスペクトが伝わってきます。女性器も、「新開」「毛深開」「土器開」「茄子開」「酒開」「火燵開」「湯開」など18種類にも分類されていて、その観察力とデータ収集力には畏れ入るばかりです。
その他にも、「泡壷」「探春」「舐陰」「吐淫」などといった、官能的な性ボキャブラリーが豊富で勉強になります。ちなみに江戸時代の女性が絶頂に達する時の叫びは「いくわないくわな」「おしますおします」だったそうで......今聞くとちょっと笑いを誘いそうです。
江戸時代の娯楽といえば思い付くのは、将棋、囲碁、歌舞伎、相撲、落語、博打etc......。今よりも出かける場所が少なく、家にこもって性の探求をするようになった自然な流れは想像できます。人間の根本的な欲求である性行為。夜が充実していた江戸時代はきっと現代よりも幸福度が高かったことでしょう。
江戸時代の川柳を収録した「女の一生」という渡辺信一郎先生の著書をもとに、これから女性の人生について、幸せについて考察していきたいです。