2020年3月2日
2020年2月4~6日の3日間にかけて、第40回JAIA輸入車試乗会が開催されました。その様子をお伝えします。(レポート:片山光夫)
恒例のJAIA(日本自動車輸入組合)の試乗会で短時間ながらも試乗することのできた車のインプレッションを報告したい。13社から提供された60種の車を試乗する機会が与えられたが、試乗車は抽選で決められるため必ずしも好みで選べるわけではない。しかし輸入車をほぼ同時に比較できる機会は非常に貴重であり、40年間これを続けてきた日本自動車輸入組合と各インポーターには深く感謝したい。
全体としての印象は、前年に続きSUVの数の多さと、サイズの小型化が目立った。ハイブリッド車は数少なく、電気自動車の出展はテスラ社のみだった。特にアルファロメオまでもがSUVに手を染めたのはやや驚きだった。各車とも6弾から8段までのATを装備しており、変速機の有意差は僅かであった。
パワートレーンもガソリン、ディーゼル、ハイブリッドとそれぞれのターボ化が進んでいたが、今後電気自動車が大多数を占めるようになると現在のドライバーによる官能試験では違いはほとんど感じられなくなるのだろう。それが起きるのもあと数年先なのかもしれない。
1)AUDI TTロードスター45TFSIクワトロ
AUDI TTは十数年前初めて日本に持ち込まれたころ試乗した記憶があり、全体において非常に素直で運転しやすい小型車との印象が際立っていた。当時でもクワトロはFFバージョンに比べややスポーティーな味付けがなされていたと記憶する。今回試乗したモデルは2Lターボ付4WDのロードスターで、変速は6速AT、予想通りやや荒削りのスポーツモデルだった。
デザインはこれまでのおとなしい形状から角張ったものとなったが、全長4,200ミリ、全幅1,830ミリに収まっており、取りまわしの良さは変わらない。下部が直線となった小さめのステアリングホイールもほぼ同じだが、計器類の表示が全面的にCG化されたのは時代の流れである。
走行中のロードノイズは、トップの上げ下ろしと関係なく高めで、特に舗装面の荒れた試乗コースでは固めのサスペンションと相まって現在では数少ないスポーツカーらしさを味わえる車である。今冬一番の寒さの中でトップを畳んでの高速走行は出来なかったが、それがお好みであれば税込約700万円という値段も許容範囲か。
2)プジョー508SW GT Blue HDi
2019年6月に発表された優美なスタイルを持つステーションワゴン(SW)には4気筒1.6Lガソリンターボエンジン版と2Lディーゼルターボ版がある。今回試乗したディーゼル版は排気音が程よく調節され、アイドリング時もディーゼルらしさを全く感じさせなかった。変速は8速のATでフロントマスクも落ち着いたラインに纏まっている。全長4,790ミリ、全幅1,860ミリのサイズも大き過ぎず、充分なスペースが確保されている。
同クラスのBMW320dxDrive Touring(SW)と比べるとパワーもダイレクト感もずっと弱いが、悪路でもバタバタせず走り抜けるのは後席に乗る者にはありがたい。i-cockpitと呼ばれる操作パネルはデジタル化され上下が直線に近く整形された小型ステアリングホイールも操作しやすい。後部座席は広くとられており、家族5人で旅行するに充分である。ややマイナスに感じたのは後ろに向かって絞られたルーフラインで、後席からだと室内がやや狭く感じることだがこれもボディラインのためと許容範囲内だろう。
走行中の騒音は上手く抑えられており、路面の荒れた場所でも全く不快感は無い。段差を乗り越える際も突き上げ感もなく、伝統の猫足サスペンションは健在である。最近はステーションワゴンという車種がSUVに押されて消滅したかの感があるが、プジョー508SWは税、オプション込みで500万円台の輸入ワゴン車としてユニークである。1.6Lガソリンターボ版はこれより約50万円安い値段設定となっている。
3)アウディSQ2
SQ2はターボ付き2Lエンジンを搭載したコンパクトな4WDのSUVで、600万円台の価格を付けたアウディの意欲作である。全長4,220ミリ、全幅1,800ミリと日本に合ったサイズで取り回しは楽だ。変速は7段ATで前面は大きなグリルが健在で、左右に配置された細めのLEDライトが表情を引き締めている。計器パネルの表示は全面的にCG化されており、フロント中央に置かれたナビと重複する画面もある。
アウディに共通する下部がフラットな小径ステアリングホイールも握りやすく、操作性は良い。この小型ボディには十分なパワーがあり、加速、ハンドリング、乗り心地と静粛性共に非常に高いレベルにある。運転支援機能も水準以上の機能が標準装備されており死角は見当たらない。これで税込み600万円を僅かに切る値段設定は非常に競争力があると思われ、同じ価格レベルのプジョー508SWとは激しい競合となろう。
4)Alfa Romeo Stelvio2.2 Turbo Diesel Q4 Sport Package
ジロ・デ・イタリアで有名な峠にちなんで名づけられたアルファ初のSUVは2.2Lのディーゼルターボを搭載した4WDである。ガソリンエンジン版は2Lターボだが、今回は試乗できなかった。この四駆メカニズムは通常走行中は基本的にリヤドライブで、必要に応じて4WDとなる電子式デフを装備する。変速は8段ATで外形デザインはMitoを拡大して丸っこくしたような特徴のあるもので、全長も約4.7mと小さくはない。20センチ前後に設定された最低地上高がSUVの所以だろう。
走らせてみると加速感、ステアリングのダイレクト感はさすがアルファと思わせる。ステアリングのギヤ比は公式発表によれば12:1に設定されており、クラシックスポーツカーの約14:1と比較して小気味よい操舵感である。荒い舗装面でもロードノイズが低く、段差を超える際のダンピングやコーナリング時のロールもよく抑えられており、乗り心地も良い。残念なのはアイドリング時のエンジン音がディーゼルそのもので、やや不満が残る。気になる値段は税込600万円の中ごろに設定されており、アルファファンにとっては気になる車であろう。
5)BMW 118i Play
2019年8月に発表されたBMWの1シリーズはプラットフォームの見直しに伴い、駆動方式もFRからFF方式に変更された。これにより後席の広さとカーゴルームの容積が拡大されたことは言うまでもない。このハッチバックモデルはターボ付き3気筒1.5Lガソリンエンジンを搭載した標準的なFFレイアウトで、変速は7速のAT、BMWの優等生的な車である。
寸法も全長4,335ミリ、全幅1,800ミリと日本に適したサイズで、軽量ボディを軽々と走らせる。若干のアンダーステアは感じるもののまだるっこさは全く無く、静粛性、ダンピングコントロールも秀逸である。この日試乗した他車に比べ際立った特徴が無い分、印象は薄かったが初めてBMWに乗るドライバー向けには非常によくできていると感じた。
通常の運転支援システムを超えたリバースアシストも含む値段設定は税込みで375万円であり、オプションを加えても400万円台で買えるBMWはお買い得であろう。